スポーツグループの参加者の特徴は? ~女性で1.4倍、趣味の会参加者で5倍多い~

国際科学誌PLoS Oneより論文が出版されました。山梨大学の山北満哉さんと書いた論文です。

オリンピックに向け、スポーツの振興が各方面で進められています。これまでにスポーツグループに参加することが要介護のリスクを低下させることは示されていますが、スポーツグループへの参加を促進するための要因はわかっていません。そこで本研究は、65 歳以上の高齢者78,002名を対象として、スポーツグループの参加にどのような要因が関連するかを検討しました。その結果、男性、低学歴者、低所得者、就業者、農林・漁業職者等でスポーツグループへの参加が少なく、周囲の精神的サポートがある人、近所付き合いが豊かな人、趣味の会や老人クラブに参加している人で多いということがわかりました。

スポーツの会への参加を進めている自治体や各種団体の役に立てばと思います。

プレスリリースページ:http://www.jages.net/#!/cl20 (番号 065-15-10)

ハーバード大学ビシュワナシュ教授講演会のお知らせ

ヘルスコミュニケーション研究の大家であるハーバード大学のビシュワナシュ教授をお招きして、講演会を開催します。健康情報へのアクセス格差やコミュニケーション格差の解消により健康格差を縮小させることをねらいとした多くの介入研究のご経験をお持ちです。貴重なお話を聞ける良い機会です。奮ってご参加ください。簡易な逐次通訳があります。

参加登録はこちら: https://docs.google.com/…/1MlSl553QnBII-vcLoCpPqk5…/viewform

講演会チラシはこちら: http://square.umin.ac.jp/igakukai/02toppage/2679.pdf

ビシュワナシュ教授略歴: 1990年ミネソタ大学から博士号取得.オハイオ州立大学,米国国立癌研究所(National Cancer Institute, NCI)などを経て現職.Journal of Health Communication, Journal of Cancer Education, Health Education Research and Mass Media などの学術誌上に多数の論文を発表するほか,Health Behavior and Health Education: Theory, Research, and Practice (2008年)のような公衆衛生・ヘルスコミニケーション分野の代表的な教科書の編者としても知られる。

共同通信社の47ニュース報道「高齢者の孤食にうつの危険 独居男性は2・7倍」

共同通信社の47ニュースやyahoo!ニュース等で研究成果が報道されました。本教室の特任研究員、谷友香子を筆頭著者とする研究成果です。http://www.47news.jp/CN/201510/CN2015102701001907.html

独りで食事をすることが多い「孤食」の高齢者は、一緒に食事をする人がいる高齢者に比べてうつになりやすいとの研究結果を、東京大の谷友香子研究員(栄養疫学)らの研究チームが27日までに発表した。独り暮らしの場合、女性の孤食はうつの可能性が1・4倍、男性は2・7倍にもなった。谷さんは「友人や近隣の人を巻き込んで食事することを勧めたり、地域で会食サービスを行ったりすることが、予防に有効ではないか」と話している。研究には、2010年の時点で気分が落ち込むなどのうつ傾向がなく、要介護認定を受けていない全国の65歳以上の約3万7千人が協力した。

詳しい解説は以下のプレスリリースをダウンロードしてください。

ひとり暮らしの男性はひとりで食事をしていると2.7倍うつになりやすい
要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者のうち、2010年にうつ症状のない37,193名を3年間追跡した結果、孤食(ひとりで食事をとること)の人ほどうつ症状を発症していることがわかりました。孤食となるかどうかは世帯状況に影響を受けるため、同居(誰かと暮らしている)か独居(ひとり暮らし)かの違いを考慮して検討した結果、独居男性では孤食だと共食(誰かと一緒に食事をとること)に比べて2.7倍うつを発症しやすい可能性があることがわかりました。一方女性では、同居でも独居でも孤食であると1.4倍うつを発症しやすいという結果が得られました。高齢者のうつ予防には孤食ではなく共食を進める施策の必要性が示唆されました。

ダウンロード: https://www.dropbox.com/s/ygfhoqp82ddv5w0/061-15-06%E3%81%B2%E3%81%A8%E3%82%8A%E6%9A%AE%E3%82%89%E3%81%97%E3%81%AE%E7%94%B7%E6%80%A7%E3%81%AF%E3%81%B2%E3%81%A8%E3%82%8A%E3%81%A7%E9%A3%9F%E4%BA%8B%E3%82%92%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%81%A82.7%E5%80%8D%E3%81%86%E3%81%A4%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8A%E3%82%84%E3%81%99%E3%81%84.pdf?dl=0

TBSニュースで報道されました「肥満男性の死亡リスク・低所得で高」

このほど論文として発表した研究結果がTBSの夕方のニュース「Nスタ」で紹介されました。

男性の肥満による死亡リスクは低所得者で約2倍高くなる
~肥満傾向にある男性では所得の格差により,死亡リスクに差があり,低所得者で約2倍高いことが明らかになりました~

65歳以上の健常者14,930名を対象とした4年間の追跡調査によって、肥満傾向にある男性では所得の格差により死亡リスクに差があり、低所得者で約2倍高いことが明らかになりました。体格指数Body Mass Index(BMI)を用いて検討した結果、全体的には痩せにおいて死亡リスクが高いことが示されました。しかし、BMIが25以上の肥満傾向にある男性では、高所得者の死亡リスクはBMIが23.0~24.9の人々に比べて0.94倍であったのに対して低所得者では1.96倍と、所得による違いがみられました。このような違いは、痩せの人々や女性においてはみられませんでした。痩せへの低栄養対策などとともに所得などの社会経済的状態も考慮した施策の必要性が示唆されました。

出版された論文は以下です。予防医学に関する国際専門誌「Preventive medicine」に掲載されました。

Nakade, Takagi, et al. Influence of socioeconomic status on the association between body mass index and cause-specific mortality among older Japanese adults: The AGES Cohort Study.

http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0091743515001747

また、プレスリリースは以下からダウンロードできます。
https://www.dropbox.com/s/uepwy3cbzwmj4ia/058-15-03%E7%94%B7%E6%80%A7%E3%81%AE%E8%82%A5%E6%BA%80%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E6%AD%BB%E4%BA%A1%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%82%AF%E4%BD%8E%E6%89%80%E5%BE%97%E8%80%85%E3%81%A7%E7%B4%842%E5%80%8D%E9%AB%98%E3%81%84.pdf?dl=0

日本Health Promoting Hospitals Networkが発足

病院は病気になった患者さんを治療する場所ですが、近年、病院や医療機関から積極的に地域に出ていって、病気になる前の健康づくりを進めよう、というう動きが高まっています。

このほど、病院でそのようなヘルスプロモーションの活動を推進する35医療機関が連携して、世界保健機関の国際ヘルスプロモーション病院(Health Promoting Hospitals, HPH)ネットワークのメンバーとして、 日本HPHネットワークが発足し、10月17日、都内で結成式が行われました。

同ネットワークには、運営委員件顧問として参画することになりました。  

NHKニュース「ふだん笑わない高齢者ほど「健康状態悪い」」

東京大学医学部生林さんと書いた論文がNHKで紹介されました。

笑わない人では健康感が悪い人が1.5倍以上多い

笑いが健康に良いことは、がん、うつ病、心臓病、糖尿病、骨粗鬆症などで報告されています。しかし、社会参加状況や社会経済状況によって笑いの頻度や質がどう違うのか、また死亡率とも関連する健康感との関連の研究はされてきませんでした。

今回、65歳以上の高齢者20,400人を対象に、社会参加状況や社会経済状況などの影響を考慮して、笑いの頻度・場面と自己評価した健康感との関係を分析しました。

その結果、社会参加が少なく、社会経済状況が悪い人ほど笑いの頻度や質が低く、その影響を考慮しても、笑う頻度が最も少ない群では、自己評価した健康感が低いグループに当てはまる割合が、ほぼ毎日笑う群に比べて女性で約1.78倍、男性で1.54倍高いことが分かりました。この結果は、社会参加状況や社会経済状況に関わらず、笑いが高齢者において全般的・精神的な健康を向上させるのに有用である可能性を示唆するものです。

全文は次のリンクへ:
https://www.dropbox.com/s/c1lq3jqz7ene735/060-15-05_%E7%AC%91%E3%82%8F%E3%81%AA%E3%81%84%E4%BA%BA%E3%81%A7%E3%81%AF%E5%81%A5%E5%BA%B7%E6%84%9F%E3%81%8C%E6%82%AA%E3%81%84%E4%BA%BA%E3%81%8C1.5%E5%80%8D%E4%BB%A5%E4%B8%8A%E5%A4%9A%E3%81%84.pdf?dl=0

本年度の「特任研究員」を募集します

東京大学大学院医学系研究科

公共健康医学専攻 健康教育・社会学分野

特任研究員 募集要項

 

身分:         特任研究員(短時間勤務有期雇用教職員)

採用人数:      1

採用予定日:    手続き終了次第

契約期間:      採用日より2016年331日 継続なし

勤務地:        東京都文京区本郷7-3-1 医学部3号館3階 

健康教育・社会学分野/保健社会行動学分野研究室

勤務内容:      社会疫学やその関連領域に関する研究の遂行。主に、当教室が扱うデータを利用し、その解析結果に基づき論文執筆をしてもらいます。また、本教室が行っている研究の業務(追跡対象者や協力機関との連絡・調整など)の一部を担ってもらいます。

資格・条件:    博士学位、ないし取得の見込みがあるもの。疫学関連の統計処理(SAS, STATA, R等)技能を持ち、社会疫学やその関連領域においてデータを用いた実証研究を行った経験があり、かつ筆頭著者の英文原著論文がある者。

就業時間:      3日以上5日以下(16 時間以上)で相談応需

休日:                 土日祝日、なお研究の遂行状況によっては休日出勤・代替休暇の取得を御願いすることもある

給与;          年齢・経験・技能に応じ、時給1,614円~2,124

通勤手当:      支給要件を満たした場合、実費相当額を支給(上限あり)

社会保険など:  社会保険、雇用保険(法令の定めるところにより加入)

応募方法:      電子メールか郵送。履歴書(写真添付)・業績一覧とこれまでに執筆した論稿・論文のうち代表的なものについてひとつ別刷り(メールでの応募の場合PDFなど)をkondolab[at]m.u-tokyo.ac.jpまでメールするか、これらを同封し下記へ郵送のこと。
履歴書の形式は問いません。
参考:東京大学統一様式:ダウンロード
http://www.u-tokyo.ac.jp/per01/r01_j.html

申し込み先:   113-0033 東京都文京区本郷7-3-1

(郵送時)    東京大学医学部3号館3階 健康教育・社会学分野 近藤尚己あて

問い合わせ:   kondolab[at]m.u-tokyo.ac.jp

応募締め切り:  20159月末日、書類による一次選考のうえ、合格者に対し面接を実施します(面接の際の交通費は支給しません)。該当者が見つかり次第締め切ります。

その他:        応募の秘密は厳守し、取得した個人情報は採用選考の目的以外には使用しません。また応募書類は返却いたしませんが、返却を希望される場合には返信用封筒を同封してください。

 

インタビュー記事掲載「環境づくりで人々を健康にする」CoFFee Doctors

僭越ながら、医療者むけの情報サイトで、インタビューしていただきました。

http://coffeedoctors.jp/doctors/2510/

「健康づくり」を個人の責任のみに求める時代は終わりました。健康の啓発活動ばかりをやっていては、健康になれる人だけがどんどん健康になり、健康格差を広げる結果となります。これからの健康づくりをどうすべきか、といった内容です。

最近一緒に仕事をさせていただいている岩手県陸前高田市、熊本県御船町、東京都足立区などでの経験を交えつつ。

医療機関やプライマリケアの施設が中心となった公衆衛生活動への期待についても一言添えさせていただきました。

データを示して人々の「健康」を後押しする
人々のつながりづくりと環境づくりで健康格差を解消
公衆衛生と臨床現場の知恵とスキルを合わせる

よかったらご笑覧ください!ご批判など歓迎です。

論文リリース(無料):リーマンショックで貧困世帯・所得減少した世帯の子どもが肥満に

学術誌International Journal of Obesity (Nature Publishing)から、論文を出版しました。無料で閲覧可能です。

経済危機が訪れると、貧困層や特定の職業につく世帯など、特定の人々の健康状態が悪化し、健康格差が拡大することが知られています。近年懸念されている「子どもの肥満」に注目して、2008年後半に深刻となった「リーマンショック」が子どもの発育に与えた影響を検討してみました。

その結果、リーマンショック以前より、所得が一般よりも低い貧困世帯の子どもたちが、リーマンショック後に有意に太り、過体重となるリスクが上がったことがわかりました。リーマン前の平均の世帯所得別に4段階に分けると、最も所得が高い群に比べて、最も低い群の男児では、過体重となるリスクが1.12倍、女児では1.35倍高いという結果でした。さらに、リーマン前の所得水準にかかわらず、リーマン後に所得が減少した世帯(30%減少、20%減少、10%減少など、複数で評価)でも、同様に体重が過剰となる子どもが多いことがわかりました。
一見、貧困なら、食べるものが足りなくて痩せるのでは?と思うかもしれませんが、現代の日本において、「食べ物が足りない」という状況はあまりおこりません。むしろ、望ましい食生活や運動習慣を維持できなくなること、ストレスなどで、生活習慣が乱れることなどが問題となります。もともと貧困だった世帯の子どもや、貧困でなくとも、所得が大きく減少して、社会的なストレスを抱えた世帯の子どもの生活習慣が乱れ、体重が増えてしまった、ということが考えられます。

論文はこちら: URL: http://www.nature.com/ijo/journal/vaop/ncurrent/full/ijo201590a.html

The global economic crisis, household income and pre-adolescent overweight and underweight: a nationwide birth cohort study in Japan

Ueda P, Kondo N, Fujiwara T.

Background:

We hypothesized that children from lower income households and in households experiencing a negative income change in connection to the global economic crisis in 2008 would be at increased risk of adverse weight status during the subsequent years of economic downturn.

Methods:

Data were obtained from a nationwide longitudinal survey comprising all children born during 2 weeks of 2001. For 16,403 boys and 15,206 girls, information about anthropometric measurements and household characteristics was collected from 2001 to 2011 on multiple occasions. Interactions between the crisis onset (September 2008) and household income group, as well as the crisis onset and a >30% negative income change in connection to the crisis, were assessed with respect to risk of childhood over- and underweight.

Results:

Adjusted for household and parental characteristics, boys and girls in the lower household income quartiles had a larger increase in risk of overweight after the crisis onset relative to their peers in the highest income group. (Odds ratio (95% confidence interval) for interaction term in boys=1.12 (1.02–1.24); girls=1.35 (1.23–1.49) comparing the lowest with the highest income group.) Among girls, an interaction between the crisis onset and a >30% negative change in household income with respect to risk of overweight was observed (odds ratio for interaction term=1.23 (1.09–1.38)). Girls from the highest income group had an increased risk of underweight after the crisis onset compared with girls from the lowest income group.

Conclusions:

Boys and girls from lower household income groups and girls from households experiencing a negative income change in connection to the global economic crisis in 2008, may be at increased risk of overweight. Vulnerability to economic uncertainty could increase risk of overweight in preadolescence.

書籍(共著)発刊:「復興期における視点:ソーシャルキャピタルと社会格差」in 大規模災害時医療(長純一・永井康徳編)」)

「復興期における視点:ソーシャルキャピタルと社会格差」

東日本大震災の被災地での地域の健康に関するデータ分析の活動を基にまとめた拙稿が下記書籍として発刊しました。

主に地域医療に携わる医師向けの専門書です。

大規模災害時医療 スーパー総合医

専門編集:長 純一(石巻市立病院開成仮診療所)/永井康徳(医療法人ゆうの森)
B5 上製
300頁 写真・図・表:200点
定価:10260円(本体9500円+税)
ISBN:978-4-521-73904-5
発売日:2015/07

http://www.nakayamashoten.co.jp/cgi-bin/menu.cgi?ISBN=978-4-521-73904-5