研究紹介

倉廩実則知礼節 衣食足則知栄辱

「衣食足りて礼節を知る」は、主任教授の近藤が大切にしている言葉です。人々の健康は、学歴や所得、職業、人とのつながりといった社会的な状況の影響を受けます。また、国や地域の政策や文化、景気動向や所得格差といった社会環境の影響も受けます。日々空腹にあえいでいては、周囲の人々とともに、自分らしく生きることは難しいでしょう。誰の助けも得られず孤独に生活していてもやはり難しいでしょう。
公衆衛生は、人々の健康な生活をまもるための仕組みづくりを目指しています。当研究室では、疫学の研究手法を基盤として、社会と健康との関係を紐解き、そこから生じる健康格差を制御し、健康で公正な社会づくりを目指す取り組みを行っています。社会学・経済学・行動科学・政策科学・政治哲学等、関連諸科学と密に連携をとりながら、人々の健康と福祉の達成を目指しています。

現在の主なプロジェクト

日本老年学的評価研究(JAGES)

全国約60自治体20万人、海外2か国が参加する高齢者の健康の社会的決定要因に関する国際共同研究です。

「社会的処方」「共生社会づくり」の研究

「せっかく治療した患者さんを病気にした元の環境に戻さない。」そのために、医療と地域福祉とが密に連携して、共生社会づくりに参画できる『社会的処方」の仕組みづくりを目指しています。関連して、医療現場で活用する患者の生活課題をスクリーニングする調査票の開発、生活保護利用者の健康管理支援システムの開発、無料定額医療制度の利用経験のある方の追跡研究、地域社会の新たな支援モデル(「どこでもドア」モデル)の構築などを行っています。

企業・政府等との共同による新しいヘルスプロモーションサービスの開発

人の感性に寄り添い「人々が自然と健康になれる社会サービス」を展開し、健康格差の少ない社会づくりを目指しています。去年の自分と戦う職域健診「健診戦」(博報堂)・オンライン妊娠・子育相談(Kids Public)・健康アプリデータを用いた健康経営の効果検証(リンクアンドコミュニケーション・ルネサンスなど)など、多数のプロジェクトが進行中です。

因果推論・機械学習の応用

社会疫学において、因果関係を紐解く・注意深く考えることは重要です。また、近年の情報技術の発展に伴い様々なコンテキスト(予測モデル構築、因果効果の推定、効果の異質性評価、など)で機械学習の応用も可能になっています。本研究室では、日米のデータに発展的な因果推論・機械学習を応用することで、世界に先駆けたエビデンスの創出を行っています。

アートによる、誰もが「自分らしく」を実現できる共生社会の創造

福祉・医療・テクノロジーを融合したアートコミュニケーションによって、誰もが「自分らしく」を実現できる共生社会を目指します。本研究室は、東京藝術大学が中核となり41機関が連携した大規模共同研究開発事業(JST共創の場事業)「共生社会をつくるアートコミュニケーション共創拠点」のエビデンス構築部門(研究開発課題5)を統括しています。

プラネタリー・ヘルス学の創成

人間だけ健康になっても仕方ない。地球・生き物・ひと―「三方よし」のシステム構築のための基礎研究を進めています(東京大学未来ビジョン研究センターとの連携)