論文出版:地域のジェンダー規範が保守的と感じる人は、うつ症状・自殺念慮・自殺未遂歴が約2倍多い(共同研究者 金森)

京都大学人と社会の未来研究院 金森万里子と当研究室近藤尚己教授らの研究グループは、「男/女のくせに、●●してはいけない/しなさい」といった、地域のジェンダー規範の認知が高齢者のメンタルヘルスにどのような影響を及ぼすか明らかにしました。

住んでいる地域のジェンダー規範が保守的だと感じている男性では、1.9倍うつ症状を抱く人が多く、2.0倍自殺念慮(死にたい気持ち)を抱いており、2.2倍自殺未遂歴がありました。女性でも同様に、うつ症状が1.8倍、自殺念慮が2.1倍、自殺未遂歴が2.6倍多い結果でした。

地域社会において、男らしさや女らしさの多様性を認めない雰囲気を感じている人は、困ったときに助けを求めたくても求められず、その結果メンタルヘルスに悪影響を及ぼしている可能性が示唆されました。

本研究成果は、老年学および心理学分野のトップジャーナルである国際学術誌「International Psychogeriatrics」にて、2023年11月6日にオンライン早期公開されました。

 

論文:Mariko Kanamori, Andrew Stickley, Kosuke Takemura, Yumiko Kobayashi, Mayumi Oka, Toshiyuki Ojima, Katsunori Kondo, Naoki Kondo. Community gender norms, mental health and suicide ideation and attempts among older Japanese adults: a cross-sectional study. International Psychogeriatrics, 1-11.

 

DOI: https://doi.org/10.1017/S104161022300087X

 

プレスリリースは以下のリンクからご覧ください。

https://www.jages.net/library/pressrelease/?action=cabinet_action_main_download&block_id=5028&room_id=549&cabinet_id=304&file_id=14087&upload_id=18589

 

論文出版:妊娠の意思があった既婚女性の約20%がコロナ禍に妊娠を延期、ウェルビーイングの低下と強い関連(筑波大学准教授:松島)

筑波大学松島みどり准教授と当研究室近藤尚己教授らの研究グループの論文が、BMC Public Healthにアクセプトされました。本論文は、日本におけるCOVID-19パンデミックと妊娠先延ばし、そのような選択をした女性とウェルビーイングの低下との関連を明らかにしました。

その結果、妊娠意向を持っていた18歳から50歳の既婚女性768人の約20%が、コロナ禍により妊娠を延期していました。さらに、妊娠延期の決定と、重度の心理的苦痛やコロナ禍以降に発生した孤独感、自殺念慮が強く関連していることが分かりました。このことは、コロナ禍のような危機時における社会の対応によって女性のウェルビーイングの低下への懸念を示すものであり、社会全体として何らかの精神的ケアの仕組みを整える必要があると考えられます。

論文: Matsushima, M., Yamada, H., Kondo, N. et al. Married women’s decision to delay childbearing, and loneliness, severe psychological distress, and suicidal ideation under crisis: online survey data analysis from 2020 to 2021. BMC Public Health 23, 1642 (2023).

DOI:  10.1186/s12889-023-16476-z

プレスリリース(リンク先は筑波大学HP): p20230920140000.pdf (tsukuba.ac.jp)

論文出版:コロナ禍における健康格差に対する8か国の対応:医療と公衆衛生はどう連携したか?(教授 近藤、研究員 西岡)

新型コロナパンデミックへの対応に際しては、医療アクセスに大きな格差が生じたことが指摘されています。その状況は国によって大きなばらつきがありました。そこで、世界8か国のプライマリケアや公衆衛生の研究者らが参集して、各国での対応状況を調べました。特に格差の是正のために重視されている医療部門(診療所や病院)と、公衆衛生部門(保健所や自治体保健センターなど)との連携の実態を明らかにしました。

その結果、平時からの両部門の連携の仕組みづくりが重要であること、その際に、対象となる人々の健康の社会的決定要因(貧困・孤立など)を踏まえたしくみを構築することの重要性が確認されました。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37653472/

論文出版:生活保護受給者へのテーラーメイドな健康づくり支援に向けた新手法を開発(助教 上野)

健康は生活の礎です。そのため、生活保護の受給者など、福祉的支援を受けている方の健康を守ることは特に重要です。日本では、令和3年より生活保護受給者向けの「被保護者健康管理支援事業」の実施が福祉事務所へと義務化されました。そのような健康づくり支援を効率的かつ効果的に行うために、この度、マーケティングの手法を応用した新しいテーラーメイドな支援手法を開発しました。

 マーケティングでは、サービスの対象者をその特性により分類(セグメンテーション)し、優先すべき対象者を特定して、その特徴に合わせたサービスをデザインします。これを応用して、今回、65歳以上の生活保護受給者の属性情報データを用いて、ソフトクラスタリングという機械学習の手法により、5つの特徴的なセグメントを抽出しました。次いで、福祉事務所のケースワーカーへのインタビュー調査により、抽出したセグメントが実在する生活保護受給者とどの程度類似しているかを検討しました。その結果、複数のセグメントが、ケースワーカーが実在すると感じられるものでした。また、ケースワーカーが今まであまり意識しなかった特徴を持つセグメントも抽出できました。

 この結果に基づき、現在各セグメントに適した支援プランの提示を行うテーラーメイド型の健康づくり支援システムの開発を進めています。

本研究成果は、「International Journal for Equity in Health」に掲載されました。

論文: Ueno, K., Nishioka, D., Saito, J. et al. Identifying meaningful subpopulation segments among older public assistance recipients: a mixed methods study to develop tailor-made health and welfare interventions. Int J Equity Health 22, 146 (2023).

https://doi.org/10.1186/s12939-023-01959-7

論文出版:コロナ禍で5歳児に約4か月の発達の遅れ(助教 佐藤)

助教の佐藤は、コロナ禍と乳幼児の発達に関する論文を発表しました。

分析の結果、5歳時点でコロナ禍を経験した群は、そうでない群と比べて平均4.39か月の発達の遅れが確認されました。一方、3歳時点では明確な発達の遅れはみられず、むしろ発達が進んでいる領域もありました。また、コロナ禍で、3歳、5歳ともに発達の個人差・施設差が拡大していることも明らかになりました。

本研究は、米国医学会が刊行する小児科分野のトップジャーナルである「JAMA Pediatrics」に掲載されました。

論文:Sato, K., Fukai, T., Fujisawa, K. K., Nakamuro, M. Association Between the COVID-19 Pandemic and Early Childhood Development. JAMA Pediatrics. 2023 July 10.

DOI: 10.1001/jamapediatrics.2023.2096.
プレスリリースは、以下のリンクからご覧ください。

また、本研究結果は、様々なメディアに取り上げられました。

ほか多数

論文出版:引退すると心疾患リスクが2.2%ポイント、身体不活動のリスクが3.0%ポイント減 -35か国約10万人の追跡調査-(助教 佐藤)

助教 佐藤は、因果推論の手法を用いて「健康な人ほど就労継続しやすい」というバイアスを取り除き、引退と心疾患リスクに関する論文を発表しました。

現在、各国で年金の支給開始年齢の引上げや高齢者の就労継続支援が行われていますが、本研究結果は、引退の遅れは必ずしも健康には良くないことを示唆します。
働く高齢者が増える中で、運動などの健康づくりがますます重要になると考えられます。
本研究成果は、疫学分野のトップジャーナルである「International Journal of Epidemiology」に掲載されました。

論文:Sato K, Noguchi H, Inoue K, Kawachi I, Kondo N. Retirement and cardiovascular disease: a longitudinal study in 35 countries. Int J Epidemiol. 2023 May 8:dyad058.

DOI: https://doi.org/10.1093/ije/dyad058

プレスリリースは以下のリンクよりご覧ください。
リンク:社会疫学分野 佐藤豪竜助教らの引退と心疾患リスクに関する論文がInternational Journal of Epidemiology誌に掲載されました | 京都大学 大学院医学研究科 社会健康医学系専攻 (kyoto-u.ac.jp)

また、本研究結果は様々なメディアに取り上げられました。

・読売新聞:ストレスから解放・運動時間増、仕事引退したら心疾患リスク減…現役続けるなら対策必要 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)
・毎日新聞:退職で心疾患リスク減 京大など10万人調査を分析 | 毎日新聞 (mainichi.jp)
・朝日新聞:引退後も「働いた方が健康に良い」定説に疑問の研究者、統計調べ覆す:朝日新聞デジタル (asahi.com)
・共同通信:退職者は心臓病リスク減 35カ国で10万人調査、京大|47NEWS(よんななニュース)
・関西テレビ:引退すると『心疾患リスクが2.2%減少』 京大などのチームが発表「“働き続けること”は必ずしも健康に良くない」こと示唆 35カ国10万人を追跡調査 各国年金支給“開始年齢引き上げ”も調査契機(関西テレビ) – Yahoo!ニュース
・読売テレビ

論文出版:COVID-19発生後、青少年の身体活動の社会経済格差が2.5倍に(助教 喜屋武)

喜屋武特定助教(研究当時、神戸大学大学院人間発達環境学研究科)、琉球大学医学部保健学科疫学・健康教育学分野の高倉実教授は、COVID-19流行前と流行中とで、青少年に推奨される身体活動水準の達成状況に社会経済格差の拡大が、朝食摂取状況に格差の縮小が認められることを世界で初めて明らかにしました。
この研究成果は、Journal of Physical Activity & Healthで公開されています。

詳細は以下のリンクよりご覧ください。

日本の研究.com
https://research-er.jp/articles/view/122000

琉球大学web

青少年における健康行動の社会経済格差はCOVID-19によって変容している

論文
DOI:10.1123/jpah.2022-0489

論文出版:高血圧診療における個別化医療戦略「高ベネフィット・アプローチ」を提唱(特定准教授 井上)

特定准教授の井上と、スタンフォード大学のSusan Athey 教授、 カリフォルニア大学ロサンゼルス校の津川友介 准教授らの研究グループは、最先端の機械学習モデルを応用することで、高血圧診療における次世代の個別化医療戦略「高ベネフィット・アプローチ」の有用性を提唱しました。

本研究は、個人の治療効果に着目した新たなコンセプトを確立し、その有用性を示したことで、機械学習を応用した次世代の個別化医療の礎になると期待されます。

Kosuke Inoue, Susan Athey, Yusuke Tsugawa (2023). Machine-learning-based high-benefit approach versus conventional high-risk approach in blood pressure management. International Journal of Epidemiology.

DOI: https://doi.org/10.1093/ije/dyad037

プレスリリース、詳細は以下のリンクよりご覧ください

プレスリリース:https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2023-04-05

京都大学SPH News:http://sph.med.kyoto-u.ac.jp/news/7016/

本結果は、朝日新聞デジタルに取り上げられました。

病気の予防「効果高い人」狙って AI活用の新手法、京大などが提言

 

論文出版:1週間の歩行パターンと死亡リスクの関連を明らかに-週2回しっかり歩くことで健康は維持できるか?-(特定准教授 井上)

特定准教授の井上と津川友介 カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)准教授らの研究グループは、米国の国民健康栄養調査データを用いて、週に1日または2日だけでも1日あたり8,000歩の歩数を達成することで健康に良い影響が得られることを明らかにしました。

本研究では、加速度計で測定された歩数の情報を用いて、1日に8,000歩以上歩いた日数が0日、1~2日、3~7日であった場合の死亡リスクを検討し、週に1日または2日でも8,000歩以上歩いている人は、週に3日以上定期的に歩行している人とほぼ同等の死亡リスク減少を認めました。

本研究結果から、週に1~2日程度でも目標歩数を達成することが健康に十分良い影響をもたらす可能性が示唆されました。

Kosuke Inoue, Yusuke Tsugawa, Elizabeth Rose Mayeda, Beate Ritz (2023). Association of Daily Step Patterns With Mortality in US Adults. JAMA Network Open, 6(3):e235174.

DOI: https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2023.5174

プレスリリース、詳細は以下のリンクからご覧ください。

プレスリリース:https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2023-03-30

京都大学SPH News:http://sph.med.kyoto-u.ac.jp/news/6979/

本結果は、様々なメディアに取り上げられました。

週1、2回のウオーキングでも「死亡率が低下する傾向」京大など発表(毎日新聞)

週末にまとめてウォーキングでも死亡率減 毎日歩く人とそう変わらず(朝日新聞)

週に何歩歩くと健康に??京都大学研究グループが新発表(Yahoo News)

論文出版:原発性アルドステロン症の発症に関わる遺伝子を同定(助教 井上)

助教の井上と、大阪大学大学院医学系研究科の内藤龍彦 助教(研究当時/現:マウントサイナイ医科大学博士研究員)、岡田随象 教授(遺伝統計学/理化学研究所生命医科学研究センター システム遺伝学チーム チームリーダー/東京大学大学院医学系研究科 遺伝情報学 教授)、広島大学大学院医系科学研究科の沖健司 講師(分子内科学)らの研究グループが、原発性アルドステロン症のゲノムワイド関連解析を実施し、その結果がCirculationに掲載されました。

Tatsuhiko Naito, Kosuke Inoue, Kyuto Sonehara, Ryuta Baba, Takaya Kodama, Yu Otagaki, Akira Okada, Kiyotaka Itcho, Kazuhiro Kobuke, Shinji Kishimoto, Kenichi Yamamoto, BioBank Japan, Takayuki Morisaki, Yukihito Higashi, Nobuyuki Hinata, Koji Arihiro, Noboru Hattori, Yukinori Okada, Kenji Oki .Genetic Risk of Primary Aldosteronism and Its Contribution to Hypertension: A Cross-Ancestry Meta-Analysis of Genome-Wide Association Study.Circulation,21 February 2023

DOI:10.1161/CIRCULATIONAHA.122.062349

詳細はこちら

プレスリリースはこちら