論文出版:糖尿病患者における厳格な血糖・血圧管理の効果が、居住形態によって異なることが明らかに(医学生 清原)

清原貫太 医学部学生、井上浩輔 白眉センター/医学研究科准教授、近藤尚己 医学研究科教授、石見拓 同教授らの研究グループは、大規模ランダム化比較試験のデータを用いて、糖尿病患者における厳格な血糖・血圧管理の治療効果が居住形態によって異なることを明らかにしました。本研究結果では、他者と暮らす患者は、標準治療を行った場合と比較して厳格な血糖・血圧管理を行った場合のCVD発症リスクが0.65倍であった一方で、独居患者では、厳格な治療と標準治療の間でCVD発症リスクに違いが認められませんでした。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

【論文情報】
Kiyohara K., Kondo N., Iwami T., Yano Y., Nishiyama A., Node K., et al. Heterogeneous Effects of Intensive Glycemic and Blood Pressure Control on Cardiovascular Events Among Diabetes Patients by Living Arrangements. J Am Heart Assoc. 2024 Jul 2; 13(13): e033860

DOI:https://doi.org/10.1161/JAHA.123.033860

 

論文出版:所得と腎機能低下の関連 ―急な腎機能低下や人工透析の格差が1.7倍(博士課程 石村)

博士課程の石村らは、所得と腎機能低下に関する論文を発表しました。
全国健康保険協会の被保険者のデータ(約560万人分)を分析した結果、月収が最も低いグループ(平均月収136,451円)は最も高いグループ(平均月収825,236円)と比べて、急な腎機能低下や腎代替療法(透析・腎移植)開始のリスクが1.7倍高いことが明らかになりました。
本研究は、米国医師会が刊行する医療政策分野のトップジャーナルである「JAMA Health Forum」に掲載されました。

論文:Ishimura N, Inoue K, Maruyama S, Nakamura S, Kondo N. Income Level and Impaired Kidney Function Among Working Adults in Japan. JAMA Health Forum. 2024;5(3):e235445.
DOIリンク:https://doi.org/10.1001/jamahealthforum.2023.5445

プレスリリースはこちらから。

こちらの内容は、2024年4月9日毎日新聞で紹介されました。

論文出版:高齢者、女性、火災事故、自然災害、交通事故、加害、自傷、病院の問い合わせ回数が4回以上、コロナ禍時の軽症の救急搬送患者では、 救急隊が救急現場で30分以上の活動を要した(助教 上野恵子)

救急車が救急現場で長く活動時間を要することは、世界的にも救急医療体制上の大きな問題となっています。上野恵子助教は広島大学との共同研究で、広島県東広島市消防本部の救急搬送・救急要請データベース7年間のデータを利用し、軽症(医療機関を受診後帰宅可能)の救急搬送患者において、高齢者、女性、火災事故、自然災害、交通事故、加害、自傷、病院の問い合わせ回数が4回以上、コロナ禍時の患者では救急隊が救急現場で30分以上の活動を要したことを明らかにしました。地域の救急医療体制を改善するためには、救急隊員のパフォーマンス、連携組織(警察、消防)の存在、病院の患者受け入れ体制、救急病院と精神病院との連携など介入可能と考えられる要因に対してどのように対処するか再考する必要があります。

書籍情報:Ueno, K., Teramoto, C., Nishioka, D. et al. Factors associated with prolonged on-scene time in ambulance transportation among patients with minor diseases or injuries in Japan: a population-based observational study. BMC Emerg Med 24, 10 (2024).

リンク:https://doi.org/10.1186/s12873-023-00927-2

論文出版:循環器病に関連する健康の社会的決定要因 (SDOH) 評価ツールのレビュー

循環器病に関連する健康の社会的決定要因(SDOH:Social Determinant of Health)のスクリーニング/アセスメントツールに関する総説論文を発表しました。
聖路加国際病院循環器内科、聖路加国際大学学術情報部のメンバーとの共同研究の成果です。

本論文では、既報の循環器病に関連する SDOH の評価ツールがどのように展開されているのか、また、SDOH の各項目の循環器病の転帰との関連性を明らかにしています。
本研究成果は、2023 年 12 月 11 日に、一般社団法人日本循環器学会が発行する国際学術誌「Circulation Journal」に掲載されました。
プレスリリースはこちら

【書誌情報】
雑誌名:Circulation Journal
タイトル:Scoping Review of Screening and Assessment Tools for Social Determinants of Health in the
Field of Cardiovascular Disease
DOI: 10.1253/circj.CJ-23-0443
URL: https://doi.org/10.1253/circj.CJ-23-0443

論文出版:地域のジェンダー規範が保守的と感じる人は、うつ症状・自殺念慮・自殺未遂歴が約2倍多い(共同研究者 金森)

京都大学人と社会の未来研究院 金森万里子と当研究室近藤尚己教授らの研究グループは、「男/女のくせに、●●してはいけない/しなさい」といった、地域のジェンダー規範の認知が高齢者のメンタルヘルスにどのような影響を及ぼすか明らかにしました。

住んでいる地域のジェンダー規範が保守的だと感じている男性では、1.9倍うつ症状を抱く人が多く、2.0倍自殺念慮(死にたい気持ち)を抱いており、2.2倍自殺未遂歴がありました。女性でも同様に、うつ症状が1.8倍、自殺念慮が2.1倍、自殺未遂歴が2.6倍多い結果でした。

地域社会において、男らしさや女らしさの多様性を認めない雰囲気を感じている人は、困ったときに助けを求めたくても求められず、その結果メンタルヘルスに悪影響を及ぼしている可能性が示唆されました。

本研究成果は、老年学および心理学分野のトップジャーナルである国際学術誌「International Psychogeriatrics」にて、2023年11月6日にオンライン早期公開されました。

 

論文:Mariko Kanamori, Andrew Stickley, Kosuke Takemura, Yumiko Kobayashi, Mayumi Oka, Toshiyuki Ojima, Katsunori Kondo, Naoki Kondo. Community gender norms, mental health and suicide ideation and attempts among older Japanese adults: a cross-sectional study. International Psychogeriatrics, 1-11.

 

DOI: https://doi.org/10.1017/S104161022300087X

 

プレスリリースは以下のリンクからご覧ください。

https://www.jages.net/library/pressrelease/?action=cabinet_action_main_download&block_id=5028&room_id=549&cabinet_id=304&file_id=14087&upload_id=18589

 

論文出版:妊娠の意思があった既婚女性の約20%がコロナ禍に妊娠を延期、ウェルビーイングの低下と強い関連(筑波大学准教授:松島)

筑波大学松島みどり准教授と当研究室近藤尚己教授らの研究グループの論文が、BMC Public Healthにアクセプトされました。本論文は、日本におけるCOVID-19パンデミックと妊娠先延ばし、そのような選択をした女性とウェルビーイングの低下との関連を明らかにしました。

その結果、妊娠意向を持っていた18歳から50歳の既婚女性768人の約20%が、コロナ禍により妊娠を延期していました。さらに、妊娠延期の決定と、重度の心理的苦痛やコロナ禍以降に発生した孤独感、自殺念慮が強く関連していることが分かりました。このことは、コロナ禍のような危機時における社会の対応によって女性のウェルビーイングの低下への懸念を示すものであり、社会全体として何らかの精神的ケアの仕組みを整える必要があると考えられます。

論文: Matsushima, M., Yamada, H., Kondo, N. et al. Married women’s decision to delay childbearing, and loneliness, severe psychological distress, and suicidal ideation under crisis: online survey data analysis from 2020 to 2021. BMC Public Health 23, 1642 (2023).

DOI:  10.1186/s12889-023-16476-z

プレスリリース(リンク先は筑波大学HP): p20230920140000.pdf (tsukuba.ac.jp)

論文出版:コロナ禍における健康格差に対する8か国の対応:医療と公衆衛生はどう連携したか?(教授 近藤、研究員 西岡)

新型コロナパンデミックへの対応に際しては、医療アクセスに大きな格差が生じたことが指摘されています。その状況は国によって大きなばらつきがありました。そこで、世界8か国のプライマリケアや公衆衛生の研究者らが参集して、各国での対応状況を調べました。特に格差の是正のために重視されている医療部門(診療所や病院)と、公衆衛生部門(保健所や自治体保健センターなど)との連携の実態を明らかにしました。

その結果、平時からの両部門の連携の仕組みづくりが重要であること、その際に、対象となる人々の健康の社会的決定要因(貧困・孤立など)を踏まえたしくみを構築することの重要性が確認されました。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37653472/

論文出版:生活保護受給者へのテーラーメイドな健康づくり支援に向けた新手法を開発(助教 上野)

健康は生活の礎です。そのため、生活保護の受給者など、福祉的支援を受けている方の健康を守ることは特に重要です。日本では、令和3年より生活保護受給者向けの「被保護者健康管理支援事業」の実施が福祉事務所へと義務化されました。そのような健康づくり支援を効率的かつ効果的に行うために、この度、マーケティングの手法を応用した新しいテーラーメイドな支援手法を開発しました。

 マーケティングでは、サービスの対象者をその特性により分類(セグメンテーション)し、優先すべき対象者を特定して、その特徴に合わせたサービスをデザインします。これを応用して、今回、65歳以上の生活保護受給者の属性情報データを用いて、ソフトクラスタリングという機械学習の手法により、5つの特徴的なセグメントを抽出しました。次いで、福祉事務所のケースワーカーへのインタビュー調査により、抽出したセグメントが実在する生活保護受給者とどの程度類似しているかを検討しました。その結果、複数のセグメントが、ケースワーカーが実在すると感じられるものでした。また、ケースワーカーが今まであまり意識しなかった特徴を持つセグメントも抽出できました。

 この結果に基づき、現在各セグメントに適した支援プランの提示を行うテーラーメイド型の健康づくり支援システムの開発を進めています。

本研究成果は、「International Journal for Equity in Health」に掲載されました。

論文: Ueno, K., Nishioka, D., Saito, J. et al. Identifying meaningful subpopulation segments among older public assistance recipients: a mixed methods study to develop tailor-made health and welfare interventions. Int J Equity Health 22, 146 (2023).

https://doi.org/10.1186/s12939-023-01959-7

論文出版:コロナ禍で5歳児に約4か月の発達の遅れ(助教 佐藤)

助教の佐藤は、コロナ禍と乳幼児の発達に関する論文を発表しました。

分析の結果、5歳時点でコロナ禍を経験した群は、そうでない群と比べて平均4.39か月の発達の遅れが確認されました。一方、3歳時点では明確な発達の遅れはみられず、むしろ発達が進んでいる領域もありました。また、コロナ禍で、3歳、5歳ともに発達の個人差・施設差が拡大していることも明らかになりました。

本研究は、米国医学会が刊行する小児科分野のトップジャーナルである「JAMA Pediatrics」に掲載されました。

論文:Sato, K., Fukai, T., Fujisawa, K. K., Nakamuro, M. Association Between the COVID-19 Pandemic and Early Childhood Development. JAMA Pediatrics. 2023 July 10.

DOI: 10.1001/jamapediatrics.2023.2096.
プレスリリースは、以下のリンクからご覧ください。

また、本研究結果は、様々なメディアに取り上げられました。

ほか多数

論文出版:引退すると心疾患リスクが2.2%ポイント、身体不活動のリスクが3.0%ポイント減 -35か国約10万人の追跡調査-(助教 佐藤)

助教 佐藤は、因果推論の手法を用いて「健康な人ほど就労継続しやすい」というバイアスを取り除き、引退と心疾患リスクに関する論文を発表しました。

現在、各国で年金の支給開始年齢の引上げや高齢者の就労継続支援が行われていますが、本研究結果は、引退の遅れは必ずしも健康には良くないことを示唆します。
働く高齢者が増える中で、運動などの健康づくりがますます重要になると考えられます。
本研究成果は、疫学分野のトップジャーナルである「International Journal of Epidemiology」に掲載されました。

論文:Sato K, Noguchi H, Inoue K, Kawachi I, Kondo N. Retirement and cardiovascular disease: a longitudinal study in 35 countries. Int J Epidemiol. 2023 May 8:dyad058.

DOI: https://doi.org/10.1093/ije/dyad058

プレスリリースは以下のリンクよりご覧ください。
リンク:社会疫学分野 佐藤豪竜助教らの引退と心疾患リスクに関する論文がInternational Journal of Epidemiology誌に掲載されました | 京都大学 大学院医学研究科 社会健康医学系専攻 (kyoto-u.ac.jp)

また、本研究結果は様々なメディアに取り上げられました。

・読売新聞:ストレスから解放・運動時間増、仕事引退したら心疾患リスク減…現役続けるなら対策必要 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)
・毎日新聞:退職で心疾患リスク減 京大など10万人調査を分析 | 毎日新聞 (mainichi.jp)
・朝日新聞:引退後も「働いた方が健康に良い」定説に疑問の研究者、統計調べ覆す:朝日新聞デジタル (asahi.com)
・共同通信:退職者は心臓病リスク減 35カ国で10万人調査、京大|47NEWS(よんななニュース)
・関西テレビ:引退すると『心疾患リスクが2.2%減少』 京大などのチームが発表「“働き続けること”は必ずしも健康に良くない」こと示唆 35カ国10万人を追跡調査 各国年金支給“開始年齢引き上げ”も調査契機(関西テレビ) – Yahoo!ニュース
・読売テレビ