教授の近藤が構成員を務める内閣府「孤独・孤立対策の在り方に関する有識者会議」で取りまとめた意見書が政府の「孤独・孤立対策推進会議」(
近藤が上記「有識者会議」へ提出した意見書はこちらです(以下抜粋)。
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【保険者とかかりつけ医等の協働による加入者の予防健康づくりに関する補助事業の成果普及に向けた提案】
1. 同補助事業の存在を保険者協議会だけでなく、その関係者︓各保険者・自治体やサービス提供機関等、そして一般国民にも周知すること
2. 事業の契約や会計作業の簡易化を図ること
3. モデル事業で構築された各取組の事後評価や、地域介入研究による定量的・定性的評価研究を進めること
4. 社会的処方の認知や理解を高めること、そしてモデル事業の成果の普及を進めるための啓発や教育、研修の活動を行うこと。関係諸団体(臨床系・福祉系の各種学会)医師会・歯科医師会・薬剤師会・看護協会等の職能団体など)とともに行うことが望ましい。医療においてはプライマリケア ・循環器 ・糖尿病 等に係る学会が関連する活動を進めており、そういった団体との連携が期待される。日本医師会や各地の医師会での活動も見られており、医師会による「かかりつけ医」普及の議論、産業医の在り方に関する議論等とともに推進することが有効であろう 。
【社会的処方の推進に向けた政策提案】
1.慢性疾患管理に係わるかかりつけ医への推奨:社会的処方や健康の社会的決定要因(Social Determinants of Health: SDH)の概念を踏まえ、医療機関において慢性疾患や歯科疾患の患者に対して、SDH の情報を収集し、リンクワーカー等相談員につなげる対応を促すための制度的な工夫を進めること。例えば、既存の診療報酬制度において、生活習慣病管理料の療養計画書様式(参考資料参照)の工夫ができる。上記モデル事業で活用された SDH 関連の問診項目を参考にして、評価項目を充実させたり、運用のガイダンスを提示するなどである。
2.社会的処方を推進する各種ツールの普及モデル事業で活用が進められた以下の各ツールについて、さらなる実用性や標準化の検討を進め、普及を図り、効果を評価すること。
3.医療機関から地域の活動へとつなげる相談員(リンクワーカー)機能の強化:地域包括支援センターや子ども家庭センター等において、医療機関からの患者の照会の仕組みを導入する、そのための人材育成や人材の強化を行うなど。
4.社会資源情報の収集と活用推進:患者や住民の孤独や孤立、社会生活の充実に資する社会資源情報を、生活圏域単位で把握し、活用する枠組みや情報ツールの普及。
5.特定保健指導の場における患者の社会的課題への対応へ保険者インセンティブ:保険者インセンティブ交付金指標へ社会的処方に関連する活動項目を入れるなど(モデル事業においては、栃木県の特定保健指導の場での実装モデルが参考になる)。
6.ICT やスマートフォンを活用した推進:患者の SDH の情報や健診のデータなどを本人のパーソナルヘルスレコード(PHR)として持ち歩き各所で活用できる枠組みを推進すること。デジタル田園都市構想等と連携して、それらのリソースを活用する事例がみられている(兵庫県養父市のモデル事業の取組:AI リンクワーカーアプリの活用)。
7.介護の総合事業への実装:総合事業の実施の際に、上記のような医療機関における患者の社会背景の情報収集の取組等と連動させて活用していくこと。また、導入のハードルを下げるための支援や人材育成、制度運用への伴走型支援の仕組みづくりを進めること
8.介護保険制度への SDH 概念の実装:要介護認定審査の際の生活機能の評価項目や主治医意見書の作成時に、社会生活機能(孤立や孤独、地域活動への参加可能性等)のアセスメント項目を追加するなど
9.地域包括支援センター・ことも家庭センター等を軸とした社会資源の開拓や人材育成の推進:社会的処方の取組には、幅広く多様な地域における社会参加の場(広義の通いの場)が作られていくこと、そういった社会資源を充実させていくことが必要。
10. 成果連動型の公共事業の枠組みの活用:民間事業者(NPO などを含む)による受皿を増やすために、内閣府や経済産業省が奨励している成果連動型民間委託契約方式(PFS:Pay For Success)(ソーシャルインパクトボンド:SIB を含む)を活用した社会的処方の取組支援を強化すること。堺市、東大阪市、豊田市、静岡市などで実際の取り組みが進んでおり、一層の拡大に向けた国や都道府県による支援が期待される。
11.産業保健における社会的処方の推進:従業員や事業所単位のストレスチェックなどの指標や孤独孤立に関する従業員向けの聞き取り情報等をもとに、産業医や産業保健師等が社会的処方へと接続できるようにする。日本医師会が行っているかかりつけ医機能研修でも推奨されている。労働者が医療機関を訪れる「未病」の段階での孤立・孤独予防に資するしくみが形成できる。定年退職後の地域での孤立が高齢者のウェルビーイングに負の影響をもたらすことが疫学研究から把握されており、退職前からの対応は重要。
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「孤独・孤立対策推進会議」への意見所への主な反映部分はこちら:
○ (4ページ)様々な悩みを抱えた複雑なケースが増加する中で、多様なつながりのタッチポイント(場)をつくっていくことや、福祉分野と教育あるいは労働の連携といった分野を超えた多様な機関による連携が重要になる。こうした中、現行の重点計画にも掲げられているとおり、保険者とかかりつけ医が地域包括支援センターや社会福祉協議会職員を含む地域社会を紹介し、保険加入者の予防健康づくりと社会面の課題を解決するための取組を進める、いわゆる「社会的処方」の推進が期待される。併せて、産業医等の産業保健スタッフによる職域での孤独・孤立対策の推進も重要である。こうした、専門職の連携を含め、保健・医療・介護・福祉・教育等分野横断的な対応が求められるといえる。「分野横断的な対応」とは、見方を変えると、「制度間の連携の強化」にほかならない。また、重層的支援体制整備事業を含む包括的な支援体制の整備や生活困窮者自立支援制度など、特に孤独・孤立対策と密接に関連する施策を一体的に実施することを含め、連携を更に強化し、相乗効果を図っていくべきである。さらには、福祉分野を中心とした「個別支援」に留まらず、より広いまちづくりの観点から、地域における様々な主体が目標を共有しながら孤独・孤立対策を進めることが大事である。
○(5ページ) 孤独・孤立対策の推進に当たっては、国内における取組だけでなく、WHOにおける社会的つながりに関する委員会の動向とも連動を図るなど、国際連携を更に深化させていくことも重要である。