ニュース:京大SPH2023年度High Impact Factor Journal PapersのTOPトップ5に選出(准教授: 井上、助教: 佐藤)

井上浩輔准教授と佐藤豪竜助教が2021年から2023年にかけて投稿した論文は、高いインパクトファクターのジャーナルに掲載され、京都大学SPHの教員トップ5に選ばれました。
当研究室から二人の教員が選出されたことは素晴らしい実績であり、二人の貢献は本研究室や研究科を超えて、日本の社会疫学・公衆衛生学のさらなる発展を先導することが期待されます。

選考方法や他の受賞者などの詳細は、下記の京都大学SPHのHPからご確認ください。
2023年度ハイ・インパクト・ペーパーズ決定! | 京都大学 大学院医学研究科 社会健康医学系専攻 (kyoto-u.ac.jp)

論文出版:所得と腎機能低下の関連 ―急な腎機能低下や人工透析の格差が1.7倍(博士課程 石村)

博士課程の石村らは、所得と腎機能低下に関する論文を発表しました。
全国健康保険協会の被保険者のデータ(約560万人分)を分析した結果、月収が最も低いグループ(平均月収136,451円)は最も高いグループ(平均月収825,236円)と比べて、急な腎機能低下や腎代替療法(透析・腎移植)開始のリスクが1.7倍高いことが明らかになりました。
本研究は、米国医師会が刊行する医療政策分野のトップジャーナルである「JAMA Health Forum」に掲載されました。

論文:Ishimura N, Inoue K, Maruyama S, Nakamura S, Kondo N. Income Level and Impaired Kidney Function Among Working Adults in Japan. JAMA Health Forum. 2024;5(3):e235445.
DOIリンク:https://doi.org/10.1001/jamahealthforum.2023.5445

プレスリリースはこちらから。

こちらの内容は、2024年4月9日毎日新聞で紹介されました。

論文出版:国連が提唱する、健やかに年を重ねるための「機能的能力」の評価指標を開発・妥当性を確認(博士課程 西尾)

博士課程の西尾は、国際連合が提唱するヘルシーエイジングの概念の妥当性に関する論文を発表しました。

国際連合は、2021年〜2030年の10年間を「Decade of Healthy Ageing(ヘルシーエイジングの10年間)」に設定し、Healthy Ageingの進展を示す指標としてFunctional Ability(機能的能力:個人の身体的・精神的能力とそれを活かすことができる環境の組み合わせ)のモニタリングを各国に促しています。しかし、Functional Abilityの測定方法や、その概念的妥当性はほとんど検討されておらず、モニタリングの実施は困難でした。
本研究は、日本に住む65歳以上の高齢者約35,000人のデータを用いて、Functional Abilityの測定方法を開発し、その概念の妥当性を検討しました。
本研究結果は、日本の高齢者のデータによってFunctional Abilityの概念が裏付けられたことを示しています。Healthy Ageingの世界的な普及とモニタリングの推進のためには、他国のデータを用いてFunctional Abilityの概念を検証する更なる研究が必要とされています。
本研究は、Oxford University Pressが刊行する「Age and ageing」に掲載されました。
プレスリリースはこちら

【書誌情報】
Nishio M, Haseda M, Inoue K, Saito M, Kondo N. Measuring functional ability in Healthy Ageing: testing its validity using Japanese nationwide longitudinal data. Age Ageing. 2024 Jan 2;53(1):afad224. doi: 10.1093/ageing/afad224. PMID: 38275093; PMCID: PMC10811647.
URL: Measuring functional ability in Healthy Ageing: testing its validity using Japanese nationwide longitudinal data – PubMed (nih.gov)

論文出版:地域のジェンダー規範が保守的と感じる人は、うつ症状・自殺念慮・自殺未遂歴が約2倍多い(共同研究者 金森)

京都大学人と社会の未来研究院 金森万里子と当研究室近藤尚己教授らの研究グループは、「男/女のくせに、●●してはいけない/しなさい」といった、地域のジェンダー規範の認知が高齢者のメンタルヘルスにどのような影響を及ぼすか明らかにしました。

住んでいる地域のジェンダー規範が保守的だと感じている男性では、1.9倍うつ症状を抱く人が多く、2.0倍自殺念慮(死にたい気持ち)を抱いており、2.2倍自殺未遂歴がありました。女性でも同様に、うつ症状が1.8倍、自殺念慮が2.1倍、自殺未遂歴が2.6倍多い結果でした。

地域社会において、男らしさや女らしさの多様性を認めない雰囲気を感じている人は、困ったときに助けを求めたくても求められず、その結果メンタルヘルスに悪影響を及ぼしている可能性が示唆されました。

本研究成果は、老年学および心理学分野のトップジャーナルである国際学術誌「International Psychogeriatrics」にて、2023年11月6日にオンライン早期公開されました。

 

論文:Mariko Kanamori, Andrew Stickley, Kosuke Takemura, Yumiko Kobayashi, Mayumi Oka, Toshiyuki Ojima, Katsunori Kondo, Naoki Kondo. Community gender norms, mental health and suicide ideation and attempts among older Japanese adults: a cross-sectional study. International Psychogeriatrics, 1-11.

 

DOI: https://doi.org/10.1017/S104161022300087X

 

プレスリリースは以下のリンクからご覧ください。

https://www.jages.net/library/pressrelease/?action=cabinet_action_main_download&block_id=5028&room_id=549&cabinet_id=304&file_id=14087&upload_id=18589

 

論文出版:妊娠中・産後にオンライン健康医療相談が利用できることで産後うつリスクが3分の2に低下(博士課程 荒川)

荒川裕貴 東京大学博士課程学生(京都大学特別研究学生)と近藤尚己教授らの研究チームが、オンライン健康医療相談サービスによる産後うつ予防の研究論文を発表しました。

本研究は横浜市在住の妊婦を対象に実施され、スマートフォンを用いて子育て中の不安や疑問を産婦人科医・小児科医・助産師に相談できる、オンライン健康医療相談サービスを無料で利用できる環境にあった女性は、そうでない女性に比べて産後うつのリスクが約3分の2程度に抑えられたことが明らかになりました。この結果は、ヘルスケアへの物理的・心理的なアクセス障壁を取り除くことが、産前産後の女性のメンタルヘルスの向上に重要である可能性を示しています。

本研究成果は、BMCシリーズのフラグシップジャーナルである「BMC Medicine」に掲載されました。

プレスリリース:妊娠中・産後にオンライン健康医療相談が利用できることで産後うつリスクが3分の2に低下 | 京都大学 (kyoto-u.ac.jp)

書誌情報:Arakawa, Y, Haseda M, Inoue, K, et al. Effectiveness of mHealth consultation services for preventing postpartum depressive symptoms: a randomized clinical trial. BMC Medicine 21, 221(2023).

DOI: https://doi.org/10.1186/s12916-023-02918-3

ニュース:孤独・孤立対策推進法案が成立しました

5月31日、参議院本会議において、孤独・孤立対策推進法案が可決されました。
※参議院本会議の様子はこちら 11分50秒ぐらいから孤独・孤立対策推進法案の採決です。

また、5月30日は参議院内閣委員会において討論が行われておりました。
※5月30日の参議院内閣委員会の様子はこちら 質疑、反対討論、採決、附帯決議がありました。

教授の近藤は令和3年度より内閣府「孤独・孤立対策の重点計画に関する有識者会議」の委員として本法案のもととなる計画策定に関わってきました。
内閣府孤独・孤立対策 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kodoku_koritsu_taisaku/index.html

「社会的孤立は重要な健康の社会的決定要因であり、健康格差の少ない社会づくりに向けては、対策が不可欠です。国を挙げた省庁横断の取り組み、国民や産官学等多様な担い手が連携して進める共同の取り組みが、法的根拠を持って推進されることになります。多くの成果が生まれることを期待しています。」(近藤尚己)