論文出版:社会参加している高齢者は、人生最後まで自立した生活を送る可能性が高い(共同研究者 上野)

東京都健康長寿医療センター研究所 上野貴之研究員と、当研究室近藤尚己教授らの研究グループは、死亡した高齢者の死亡前3年間の身体機能の変化パターンを「人生の最後まで自立を維持する」「急激に悪化」「徐々に悪化」「中等度維持」「重度維持」の5パターンであることを以前明らかにしました。本研究では、2010年時点で月に1回以上社会参加している高齢者が、社会参加していない高齢者に比べて、「人生最後まで自立を維持するパターン」を辿りやすいことを明らかとしました。
本研究の結果は、健康寿命の延伸や高齢者のQOL向上に向けた重要な示唆を与えるものであり、今後の高齢者政策における社会参加の推進の必要性を強調することができます。

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【論文情報】
Ueno T, Saito J, Murayama H, Saito M, Haseda M, Kondo K, Kondo N. Social participation and functional disability trajectories in the last three years of life: The Japan Gerontological Evaluation Study. Arch Gerontol Geriatr. 2024 Jun;121:105361.

DOI: 10.1016/j.archger.2024.105361

論文出版:生活保護を利用する高齢者のサブグループごとの日常生活上のニーズが明らかに(助教 上野)

日本でも健康格差が社会問題となっています。健康格差を減少させるためには、個人レベルから社会レベルの介入への転換が必要です。2021年より全国の福祉事務所で生活保護利用者への健康管理支援事業が必須事業となりました。上野恵子助教らは、生活保護利用者の中でも特に健康・生活上の支援を必要としている高齢者に焦点を当て、生活保護を利用する高齢者のサブグループの日常生活上のニーズを明らかにしました。

2021年に2自治体の福祉事務所のケースワーカー4人にインタビュー調査を実施しました。以前実施した量的研究で得られた生活保護を利用する高齢者の男女別の5つのサブグループの結果をケースワーカーに提示して、それぞれのサブグループが抱える日常生活上のニーズを聞き取りました。インタビューの結果、生活保護を利用する高齢者のサブグループには、次の5つの日常生活上のニーズがあることが明らかとなりました:①住居のニーズ、②金銭的ニーズ、③福祉サービス利用のニーズ、④医療ニーズ、⑤日常生活上のニーズなし。この結果から、生活保護を利用する高齢者のサブグループごとに適切な支援の介入が必要であることが分かりました。今後、他分野の専門職(保健師、社会福祉士など)にもインタビュー調査を行い、生活保護を利用する高齢者のサブグループの日常生活上のニーズをさらに理解することが望まれます。

書籍情報:Ueno K, Nishioka D, Saito J, Kino S, Kondo N. Understanding the daily life needs of older public assistance recipient subgroups in Japan: A qualitative study.Glob Health Med. 2024. doi: 10.35772/ghm.2024.01029