【論文出版】社会的孤立と死亡の関連、高齢・低学歴・男性で生存日数が平均より最大205日短縮:コホート研究(博士課程 ロム・ルナー)

当研究室博士課程のロム・ルナ―さん、教授 近藤 尚己らの研究グループが The Lancet Regional Health – Western Pacific から論文を出版しました。

本論文では、JAGES(日本老年学的評価研究)の約2万人の高齢者(2013〜2022年)を対象に平均9.4年間の追跡調査を行い、因果的機械学習(causal survival forest)を用いて社会的孤立と全死因死亡との関連の個人差を推定しました。その結果、社会的孤立は平均で生存日数が69.5日短いことと関連し(RMST差; 95%CI −111〜−28.4日)、影響が最も大きい下位20%のグループでは平均205日もの短縮が見られました(95%CI −321〜−87.8日)。とりわけ影響が強かったのは、高齢の男性、学歴の低い人々であり、「低学歴かつ中〜高所得層」という組み合わせで特に顕著な関連が認められ、この傾向は女性でより強く現れました。さらにシミュレーションでは、社会的孤立が解消された場合、教育や所得による生存格差が縮小し、低学歴の高齢者における社会的孤立に関連する年間約1万1千人の死亡が予防できる可能性が示されました。これらの結果は、社会的孤立への介入が集団の平均的な健康改善にとどまらず、健康格差の緩和においても重要な意義を持つことを示しています。

掲載日:2025年10月3日、The Lancet Regional Health – Western Pacific(Elsevier 発行)

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【論文出版】日本人63,497名のGWASで社会的孤立に関わる遺伝子座を東アジアで初めて同定:ゲノムワイド関連解析(近藤教授)

東北大学の大瀬戸 尚先生、京都大学健康増進・行動学分野の井上 浩輔教授・当研究室の近藤 尚己教授らの研究グループが Translational Psychiatry から論文を出版しました。

家族や友人との実際のやり取りの頻度や人数を質問票で数値化し、その情報と数百万か所に及ぶ遺伝情報を統計的に照らし合わせるゲノムワイド関連解析を行うことで、社会的孤立との関連を網羅的に探索しました。その結果、社会的孤立と関連する遺伝的特徴が見いだされ、脳や神経の働きと関係することが知られている遺伝子の関与が示唆されました。一方で、社会的孤立にみられる個人差の大部分は遺伝以外の要因によって説明できることもわかりました。遺伝の寄与の度合いは小さいものの環境要因だけでなく、生物学的な個人差の関与があることが明らかとなりました。「孤立しやすさ」の理解の促進が期待されます。

本研究成果は、2026年2月17日に、国際学術誌「Translational Psychiatry」に掲載されました。

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【論文出版】妊娠中・産後早期にオンライン健康医療相談が利用できることで 産後12ヶ月の長期産後うつリスクが3分の2に低下(客員研究員 荒川裕貴)

横浜市立大学医学部公衆衛生学教室の荒川裕貴助教(京都大学客員研究員)、京都大学大学院医学研究科社会疫学教室の近藤尚己教授、健康増進・行動学分野の井上浩輔教授らの研究グループは、妊娠中から産後早期まで自身のスマートフォンを用いて不安や疑問を産婦人科医・小児科医・助産師に相談できる、オンライン健康医療相談サービスを無料で利用できる環境にあった女性は、そうでない女性に比べて産後12ヶ月時点でうつ症状を有するリスクが約3分の2程度であったことを明らかにしました。

この研究では、研究グループが以前に行った横浜市在住の妊婦734人を対象としたランダム化比較試験の参加者をフォローアップし、産後12ヶ月のうつ症状をアウトカムとして介入群と対照群のリスクを比較しました。回答者515名のうち、産後12ヶ月時点の産後うつ高リスク者の割合は、オンライン健康医療相談サービスを利用できるグループが14.2%(36人/253人)であり、利用できないグループの21.0%(55人/262人)に対して産後うつ症状を有するリスクが相対リスクで0.68(95%信頼区間: 0.46-0.99)であったことがわかりました。また、介入群は産後3ヶ月と12ヶ月の2時点でうつ症状が持続する者の割合が特に少なく、産後3ヶ月での孤独感の低下が産後12ヶ月までの介入効果の約20%を媒介することが明らかになりました。

本研究から、妊娠中から産後早期にオンライン健康医療相談サービスによるサポートを提供することで、周産期の女性の不安や孤独の解消を通じて、産後12ヶ月という長い期間に渡って持続的に産後うつリスクを減らすことができる可能性が示唆されました。

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【論文出版】幼少期の肯定的体験により成人後の孤独感の大きな低下(32ポイント)(横断研究)

筑波大学人文社会系 松島みどり教授、京都大学大学院医学研究科 近藤尚己 教授らの研究グループは、幼少期の肯定的な経験が、大人になってからの孤独感や社会参加にどのようにつながるのかを調べました。背景には、日本で孤独が大きな社会問題になっていることがあります。研究では、2023年に全国で行われた大規模調査「Japan COVID-19 and Society Internet Survey(JACSIS)」の18〜64歳の日本人2万2213名のデータを用い、家庭内と地域社会における肯定的体験(PCEs)が成人期の社会的ウェルビーイングにどのように関連するかを分析しました。結果、学校での居場所感や地域行事の楽しさなど「コミュニティに根ざした肯定的体験(CPCEs)」は、孤独感の低減と社会参加の促進に一貫した効果を示し、逆境体験(ACEs)を抱える人々においても保護的に働くことが確認されました。一方、家庭内の肯定的体験(FPCEs)は効果が限定的で、ACEが少ない層では孤独感を高める可能性も示されました。

本成果は、2026年12月20日に国際学術誌「Journal of Affective Disorders」にオンライン掲載されました
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【論文出版】プライマリ・ケア診療報酬制度におけるSDHの扱い(ナラティブレビュー)(博士課程 櫻井)

当研究室博士課程の櫻井広子さん、近藤尚己教授、西岡大輔特定准教授らの研究グループが、Japan Medical Association Journal(JMA Journal)に論文を出版しました。

本論文では、プライマリ・ケアに関連する診療報酬制度において、経済的困窮や孤立といった健康の社会的決定要因(SDH)への対応がどのように制度上組み込まれているかをナラティブレビューで分析し、全8項目中、比較的新しい2項目でSDHに関連する文言が明示されている一方、他の多くでは生活背景の評価が不十分である現状を明らかにしています。

本研究成果は、2026年1月15日に、日本医師会(Japan Medical Association)が発行する国際学術誌「JMA Journal」に掲載されました。

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【論文出版】高齢者の「自分らしく生きる力」の測定枠組みを提案(客員研究員 西尾)

大阪医科薬科大学の西尾麻里沙(当研究室 客員研究員)、伊藤ゆり教授、当研究室の近藤尚己教授、世界保健機関(WHO)のJotheeswaran A Thiyagarajanらによる国際共同研究の成果が、Age and Ageing誌に掲載されました。

本論考ではWHOが提唱する「機能的能力(functional ability)」の測定方法を国際的に標準化するための課題と展望を整理し、各国間の比較可能性を高める測定枠組みの提案を行いました。具体的には、WHOの5つのドメインをベースにした概念の整理、既存調査への組み込み、そしてAI・機械学習を用いた個別化評価の可能性を示しています。

本論文は2025年11月に英国老年医学会(British Geriatrics Society)が発行する国際学術誌「Age and Ageing」に掲載されました。

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【論文出版】コロナ禍後も拡大した健康行動の格差を明らかに(全国横断調査)(特任准教授 喜屋武)

社会疫学分野連携教員の喜屋武享特任准教授(琉球大学准教授)らの研究グループが、Environmental Health and Preventive Medicine誌に論文を出版しました。本論文では、2019年・2021年・2022年の全国代表データを用いた3時点横断研究を通じて、日本の思春期(中高生)における身体活動、スクリーンタイム、睡眠、朝食摂取、排便頻度などの健康行動に関する社会経済的格差の変化を明らかにしています。主体結果は次のとおりです。
  • 身体活動:低所得層での実施不足が流行中に顕著化し、流行後も持続。
  • 朝食摂取:流行中に格差がほぼ消失したが、流行後には格差が再燃。
喜屋武は「こうした社会経済格差の変化を継続的にモニタリングし、得られた知見をエビデンスとして政策決定に反映させていくことが重要。」とコメントしています。本研究成果は、2025年9月に、国際学術誌「Environmental Health and Preventive Medicine」に掲載されました。
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【論文出版】 公衆衛生学からみた孤立・孤独対策の新しい展望(非常勤研究員上野、教授近藤)

当研究室の上野恵子非常勤研究員(執筆当時助教)と近藤尚己教授による論文「健康格差対策の現在とこれから」が「心理学論評」により出版されました。
詳細はこちらをご覧ください。
書籍情報 上野恵子、近藤尚己.健康格差対策の現在とこれから.心理学論評.2025; 68(1): 74-85.

【論文出版】生活保護世帯の子どもの入院実態とリスク因子が明らかに―経済的な支援だけでは子どもの健康が保障されない可能性― (准教授 西岡)

西岡大輔 医学研究科特定准教授らの研究グループは、日本国内の6自治体(市)における生活保護利用世帯の子どもの生活保護基本台帳データおよび医療扶助レセプトデータを活用し、生活保護利用世帯の子どものプロファイル(基本情報)を作成しました。さらに、子どもの入院の実態と健康を損なうリス因子に関する分析を行いました。

分析の結果、生活保護利用世帯の子どものうち4.6%が1年間に入院を経験し、中でも特に乳幼児(0歳児、1−4歳児)、ひとり親世帯、ひとり親世帯でなくとも親が就労している世帯、出生時点で生活保護を利用中の世帯の子どもに入院を経験しやすい傾向があることや、自治体間で入院発生率に差が見られることが分かりました。

これらの結果は、生活保護制度による生活および医療への経済的な支援だけでは子どもの健康リスクを十分に軽減できないことや、特に健康を損なうリスクが集積しやすい世帯があることを示唆しており、貧困世帯の子どもの健康を守り育むための今後の政策形成に重要なエビデンスを提供するものです。

本研究成果は、2025年6月10日に、国際学術誌「Pediatrics International」にオンライン掲載されました。
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【論文紹介】図書館の本が多い街ほど健康長寿の傾向 ~蔵書が人口当たり1冊増えると要介護リスク4%減に相当~(非常勤講師 佐藤)

大谷紗惠子さん(京都大学医学部 / 卒業)、慶應義塾大学の佐藤豪竜先生(総合政策学部 専任講師、当研究室 非常勤講師)、京都大学の近藤尚己教授らの研究グループが、国際学術誌「SSM – Population Health」から論文を出版しました。

これまでの研究で、個人の読書習慣が死亡率や認知症リスクの低下と関連することがわかっています。しかし、読書の機会を提供し、住民が集う場所としての図書館と健康の関係性は明らかにされていません。このため、本研究は73,138名の高齢者を約7年間追跡し、各自治体の図書館の蔵書数と要介護リスクの関連を調べました。分析の結果、図書館の蔵書が人口当たり1冊増えると、その地域の高齢者の要介護リスクが4%減少することに相当する相関関係が確認されました。この結果は、図書館やその蔵書の充実といった文化財への公共投資が、健康長寿のまちづくりに有効である可能性を示唆するものであり、さらなる研究が期待されます。

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