日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study,JAGES)の20年間の取り組みと成果,その教訓がWHOから出版されました。
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要約はこちらです。
研究不正が疑われる論文を審査する際に活用するチェックリストを作成したという論文をRetraction Watchに出版しました(タイトル:How to investigate allegations of research misconduct: A checklist)。
一般財団法人公正研究推進協会(APRIN)の委員として作成に参加しました。
作成したチェックリストはこちら(英語)
ビタミン強化食品など、いわゆる機能性食品は世界中で普及しています。しかしなぜ人々は機能性食品を買うのでしょうか?健康のためと思って買うのでしょうか?おそらく実際は「機能性食品を買う自分がカッコイイ」「つい買ってしまう」「友達が買っているから」といった様々な理由が考えられるのではないでしょうか。
日本と同様、機能性食品の市場が拡大しているリトアニアに住む900人へのインターネット調査により、顕示的消費傾向(カッコよく見せるために買う傾向が強い)人や、社会や周囲の考え方や規範の影響を受けやすい人は、機能性食品を高く評価していました。一方で自制心のある人は機能性食品を低く評価していました。
実際、機能性食品業界でのマーケティングや健康増進において、政策立案者やマーケティング担当者は、顕示的消費など消費者の社会的な動機にも働きかけているようです。過剰に機能性食品を買ってしまったり、適切に摂取するように促すためにも、消費者の行動の背景にある心理を解明することは役立つと思われます。
この研究はリトアニアのJustina Gineikiene氏の研究チームとの共同執筆論文です。国際学術誌 Appetite に掲載されました。
書誌情報:Barauskaite, D., Gineikiene, J., Auruskeviciene, V., Fennis, B. M., Yamaguchi, M., & Kondo, N. (2018). Eating healthy to impress: How conspicuous consumption, perceived self-control motivation, and descriptive normative influence determine functional food choices. Appetite.
https://doi.org/10.1016/j.appet.2018.08.015
価値観は幸福感と考関係すると考えられますが、価値観は政治的な思惑等々により、国によって異なります。
今回、韓国の研究チームと共同で、その国際比較を行いました。韓国、日本、中国の中高生それぞれ約2000人を対象とした国際的研究である、思春期価値観調査(2008年)のデータを分析しました。
価値観に関する36問の質問を5つの価値観に分類したところ、両親の学歴や世帯構成、信仰などとは独立して、どの国でも、博愛・善行(benevolence)と利他主義(altruism)が幸福度と関連しました。一方、家父長制的な規範(patriarchy)は中国の学生では幸福度が高いことと関連しましたが、日本の学生ではその逆の結果でした。韓国では成功を追い求めること(success pursuit)と幸福度が低いことが関連していました。
いずれの国においても、博愛や利他性が幸福度と関連したことは特筆すべき結果です。
研究はソウル大学校のチュワン・オー教授のチームとの共同執筆論文です。国際学術誌 Journal of Youth Studiesに掲載されました。
書誌情報: Heo, J., Lin, S. F., Kondo, N., Hwang, J., Lee, J. K., & Oh, J. (2018). Values and happiness among Asian adolescents: a cross-national study. Journal of Youth Studies, 1-16.
https://doi.org/10.1080/13676261.2018.1513640
スウェーデンの全国民の追跡データを用いた分析の結果、1990年から2007年までの間に、低所得者ほど自殺が多いという格差が拡大傾向にあり、特に女性においてこの関連がみられることが明らかになりました。1994年に起きたスカンジナビア諸国の経済危機やその後の社会保障施策の見直し等、危機対応政策の関連を示唆する傾向がみられました。
スウェーデンは就労における性差が世界で最も少ない国の一つです。しかし、その多くは公的機関で働いています。私企業と比べ、公的機関では社会保障施策の見直し等による所得や労働条件の変更の影響が直接現れることが知られており、これが今回の研究結果に関係していた可能性があります。
本研究はスウェーデン・オレブロ大学の日吉 綾子氏、ストックホルム大学・健康の公平性研究センター所長のミッケ・ロスティラ氏との共同執筆論文です。英国の国際学術誌 Journal of Epidemiology and Community Healthに掲載されました。
なお、所得による自殺率の格差は 格差勾配指数と格差相対指数 という指標を用いました。
参考文献: 近藤尚己. “地域診断のための健康格差指標の検討とその活用.” 医療と社会 24.1 (2014): 47-55.
書誌情報: Hiyoshi A, Kondo N, Rostila M Increasing income-based inequality in suicide mortality among working-age women and men, Sweden, 1990–2007:
is there a point of trend change? J Epidemiol Community Health Published Online First: 18 July 2018. doi: 10.1136/jech-2018-210696f
プレスリリースはこちらです。
65歳以上の高齢者、約2万人を対象とした研究で、社会的サポートと受診控えの関連について調べました。
その結果、病気になったときに世話をしてくれる人がいると、病院の受診控えが減る傾向にあることがわかりました。所得の低い人たちにおいては、特に65歳から69歳の女性と、70歳以上の男性においてこの傾向が顕著でした。
高齢者の受診控えを減らすためには、財政的なサポートだけでなく社会的なサポートも必要であることが示唆されました。
本研究は名古屋市立大学の樋口倫代氏らとの共同執筆論文です。国際学術誌 Asia Pacific Journal of Public Healthに掲載されました。
分析には日本老年学的評価研究(JAGES)のデータを用いました。
プレスリリースはこちらです。
書誌情報:
Michiyo Higuchi, Kayo Suzuki, Toyo Ashida, Naoki Kondo, and Katsunori
Kondo. “Social Support and Access to Health Care Among Older People in
Japan: Japan Gerontological Evaluation Study (JAGES).” Asia Pacific
Journal of Public Health (2018)
https://doi.org/10.1177/1010539518786516
客員研究員の山口麻衣を筆頭とした論文が公衆衛生学の国際学会誌 European Journal of Public Healthに掲載されました。
首都圏の4都市に住む小学生719人を対象に、家庭の社会経済状況と子どもの野菜・果物摂取量の関連を分析しました。その結果、家庭の社会経済状況によって野菜摂取量と果物摂取量に違いがあることが明らかになりました。
しかし、学校給食からの野菜・果物摂取量には差が見られませんでした。このことから、児童全員を対象とした日本の学校給食制度が、家庭の社会経済状況の違いによる野菜・果物摂取量格差を縮小する可能性が示唆されました。
Mai Yamaguchi, Naoki Kondo, Hideki Hashimoto. Universal school lunch programme closes a socioeconomic gap in fruit and vegetable intakes among school children in Japan. European Journal of Public Health, 2018 Mar 26.
doi: 10.1093/eurpub/cky041.
特任研究員の齋藤順子を筆頭とした論文が疫学の国際学会誌 Journal of Epidemiologyに掲載されました。
高齢者の閉じこもりは、将来の寝たきりや死亡リスクの増加につながるとされ、現行の介護予防施策でもその重要性が認識されています。
本研究では要介護認定を受けた高齢者のその後の要介護度の変化パターンを抽出し、各パターンと閉じこもりとの関連を調べました。
その結果、男女ともに3つのパターンが抽出されました。要介護度が徐々に悪化するパターンを基準とした場合、閉じこもりがちな生活を送っている男性は、調査開始時の手段的日常生活動作(IADL)や主観的健康観などの影響を調整した後でも、そうでない男性に比べて2.14倍、中等度の要介護状態が続くパターンに所属しやすいことが分かりました。女性においてはそうした関連はみられませんでした。
男性高齢者においては、閉じこもりを予防することが、要介護状態になった後により程度の軽い経過をたどることにつながるかもしれません。
本研究ではJAGES(日本老年学的評価研究)のデータを分析しました。
2011年の東日本大震災後の小学生児童の体重の変化データを分析したところ、仮設住宅で生活している子どもたちはそうでないこともたちに比べて体重が増加しやすく、肥満傾向となるリスクが高いことがわかりました。
仮設住宅の周辺に遊び場がない、通学が徒歩でなくバスになった、一緒に遊ぶ仲間がいないなどの環境の変化が影響している可能性が考えられました。
この結果は、小児科医療の国際学術誌Periatrics Internationalに掲載されました。
本研究は岩手県立大船渡病院の森山秀徳医師(小児科医)たちとの共同研究です。