論文出版:上司からの公平な扱いや配慮が欠ける職場ほど、女性管理職や専門職が抑うつ傾向で喫煙をしている:喫煙割合が6.5%増

本教室の大学院生の小林由美子さんの論文が国際雑誌 PLoS ONEに掲載されました

働き方改革に向けて、職場でのハラスメント対策等が課題となっています。

職場での処遇や評価における公平さや適正さについて、組織の公正性という概念があります。組織公正性は、企業戦略や日常業務に至る様々な場面での決定プロセスに関わる公正性(手続き的公正性)上司と部下の関係性や接し方に関わる公正性(相互作用的公正性)に分類され、前者は従業員の意見が反映されているか、決定に一貫性があるか、後者は上司が部下を尊重しているか、理解を示してくれるか等という状況を表します。組織の公正性が低いと、そこで働く者の心身の健康に悪影響を及ぼす可能性が指摘されています。

今回、日本の民間企業12事業場に勤める労働者9,773名を対象に、組織公正性と、抑うつ症状との関連、およびストレス関連行動としての喫煙、飲酒との関連を分析しました。特に、女性の活躍が叫ばれる昨今、まだ人数の少ない女性の管理職や専門職の孤立の問題が指摘されていましたので、男女別・職種別の影響を分析しました。その結果、どちらの公正性でもそれが低い場合に、職種や性別によらず、抑うつの割合が多くなることが明らかになりました(表)。さらに、相互作用的公正性が低い場合には、特に女性で、管理職・専門職の喫煙の割合が多くなることが明らかになりました(棒グラフ)。

このことから、労働者のこころの健康の維持には組織公正性を保つことが重要であるとともに、今後さらに高度な管理機能・専門技能を持つ女性の活躍を推進する上では、特に職場内の人間関係に関わる公正性が重要であることが示唆されました。

プレスリリースはこちらです

Kobayashi Y, Kondo N (2019) Organizational justice, psychological
distress, and stress-related behaviors by occupational class in female
Japanese employees. PLoS ONE 14(4): e0214393.
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0214393