論文出版:少額の割引キャンペーンで健康メニューの注文増加

平成28年度の食育月間の事業として、東京都足立区が同区内26の飲食店と協力し、各飲食店において野菜増量メニューを購入した人に50円引きをするキャンペーンを1週間実施しました。
このたび、その結果や考察をまとめた論文が、International Journal of Behavioural Nutrition and Physical Activityに掲載されました

糖尿病などの慢性疾患の予防には、日々の食事や運動の改善が必要です。そのためには、個人の努力だけでなく、健康的な行動をとりやすいように社会環境を整備することが求められます。

東京都足立区は、「住んでいるだけで自ずと健康になれるまち」を掲げて区内の社会環境の整備に力を入れており、糖尿病対策として、区内飲食店・小売店との連携により野菜が多く含まれるなどのメニュー(以下、野菜増量メニュー)を提供する「あだちベジタベライフ協力店」事業を実施しています。
区は「普段は敬遠しがちな人にも野菜増量メニューのおいしさを知ってもらう」ことを目的として、平成28年6月の食育月間中に、賛同を得た同区内26の飲食店において、野菜増量メニューを購入した人に50円キャッシュバックをするという一週間のキャンペーンを行いました。

本研究室では、期間前・期間中の来店者や協力店舗のオーナーへアンケート調査を行いこのキャンペーンの効果の評価をしました。その結果、キャンペーン前の1週間に比べて、キャンペーンを実施した期間では、1日当たりの野菜増量メニュー注文者の割合が1.5倍、飲食店の1日当たりの売り上げが1.77倍に増加しました(図1)。さらに、来店者の属性ごとに検討してみたところ、普段の外食時の平均昼食代(所得の代用変数として活用)が最も低い人や非正規雇用の人々で、注文者割合が他の人々に比べて特に増加したことがわかりました(図2)。

対象者の属性により効果に違いがみられたことから、このような健康づくりの活動を評価する際は対象者の属性別の効果を評価することが大切です。

プレスリリースはこちらです

図1 キャンペーン前を1とした場合のキャンペーン中の注文者割合および売り上げの比率。バーは95%信頼区間。曜日、気温、湿度、天候、店舗の違いの影響は統計的に取り除いた。

図2 普段の外食時の平均昼食代別にみた野菜増量メニュー注文者の割合。バーは95%信頼区間。性別、年齢をはじめとする個人の属性および店舗の違いの影響は取り除いてある。
* 参照値に対してp < 0.05

Wataru Nagatomo, Junko Saito and Naoki Kondo(2019)Effectiveness of a low-value financial-incentive program for increasing vegetable-rich restaurant meal selection and reducing socioeconomic inequality: A cluster crossover trial. International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity. International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity 16:81
https://doi.org/10.1186/s12966-019-0830-5