1月18日に出版された論文のプレスリリースを掲載します。
理性でなく感性に訴えることで健康格差是正につながる可能性:健康チェックサービス受診割合が15%-36%増
JAGES研究の追跡データを用いた分析から、周りの人と比べて自分の所得の順序が低い人は、そうでない人に比べてうつになりやすいことが明らかになりました。この関係は、本人の実際の所得とは無関係でした。つまり、経済的にゆとりがあっても、他人の所得との比較でうつになる可能性があります。
論文はこちら。
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Krisztina Gero, Katsunori Kondo, Naoki Kondo, Kokoro Shirai, Ichiro Kawachi
Associations of relative deprivation and income rank with depressive symptoms among older adults in Japan
Social Science and Medicine https://doi.org/10.1016/j.socscimed.2017.07.028
英国の総合医学誌「ランセット」より、以下の論文を出版しました。
東京大学の渋谷健司教授を責任著者として、多くの国内外の研究者とともにまとめたものです。都道府県別の疾病の分布の状況が一目でわかります。
千葉大学の辻大士さん(特任助教)が中心になりまとめてくれました。各メディアで報道されています。
研究班プレスリリース:「要支援・要介護リスク評価尺度」の開発 10問で要支援・要介護リスクを点数化
NHKより「近い将来、高齢者がどの程度、介護や支援が必要な状態になるリスクがあるかを予測する10項目のチェックリストを国立長寿医療研究センターなどの研究グループが開発しました。
チェックリストを開発したのは国立長寿医療研究センター老年学評価研究部の近藤克則部長などの研究グループです。
研究グループは平成23年に65歳以上の高齢者7万2000人余りを対象に行われた日常生活や身体の状況に関する25項目の調査への回答と、その後の4年間に、どのような人が新たに要介護や要支援の認定を受けたかを分析しました。
その上で要介護や要支援の認定と統計学的に関連がみられたバスや電車で1人で外出しているかや、15分続けて歩いているかなど、10項目を抽出し、4年以内に介護や支援が必要になるリスクが、どの程度あるのかを予測するチェックリストを開発しました。
チェックリストの10項目には、要介護や要支援との関連性の強さに応じて点数がつけられていて、合計の点数によってリスクを予測することができます。
近藤部長は「このチェックリストで、今のままでは危ないと思われた人は生活を見直し、出歩いたり、活発な生活を心がけたりする、きっかけにしてほしい」と話しています。」
東京医科歯科大学の藤原武男教授を筆頭著者とする論文が発表され、各メディアで取り上げられました。
プレスリリース原稿:地域の坂の傾斜が1.5度上がると コントロール不良の糖尿病リスク18%低下
これまでに以下のメディアで報道されました。
news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3048166.html
坂道が多い町に住むことで糖尿病を予防できるかもしれない、そんな研究成果を東京医科歯科大学などの研究チームがまとめました。 東京医科 … 自然と筋力をつけるような都市計画が有効かもしれない」(東京医科歯科大学 藤原武男 教授).
www.news24.jp/articles/2017/05/08/07360897.html
東京医科歯科大学の藤原武男教授らのグループは、愛知県の高齢者約8900人のデータをもとに、地域の坂道と住人の糖尿病リスクの関連を調査。その結果、坂道の平均傾斜が1.48度上がると症状が比較的重い糖尿病になるリスク …
medical.jiji.com/news/6353
地域の坂の傾きが約1.5度上がると、住民が中等度の糖尿病になるリスクが18%低下するとの調査結果を、東京医科歯科大などの研究チームが8日、発表した。同大の藤原武男教授(公衆衛生学)は「日常的に坂を歩くことで、運動と同じ …
https://news.biglobe.ne.jp/domestic/0509/mai_170509_0672847377.html
緩やかな坂がある地域の高齢者は平らな地域に比べ、重い糖尿病になるリスクが減るという研究結果を東京医科歯科大学などのグループがまとめた。国際的な学術 … ただ、急な坂だと逆に外出を控えたりするため、傾斜が高いほど効果があるかは分かっていない。藤原教授は「高齢者が気づかぬうちに糖尿病のリスクが減るよう、坂道を配置した町づくりができたら」と話している。【小島正美】 …. TBS 5月8日(月)20時33分. 坂道が多い …
地域のソーシャルキャピタルを測定する指標を開発し、リリースしました。
学術誌 Journal of Epidemiology誌より出版されました。公衆衛生等の研究者の方に使っていただければと思います。
Journal of Epidemiology
May 2017, Vol.27(5):221–227, doi:10.1016/j.je.2016.06.005
Original Article
Development of an instrument for community-level health related social capital among Japanese older people: The JAGES Project
Masashige Saito, Naoki Kondo, Jun Aida, Ichiro Kawachi, Shihoko Koyama, Toshiyuki Ojima, Katsunori Kondo
特任研究員の谷さんらとまとめた論文が出版されました。
幼少期に経済的に不利なことと老後の死亡リスクが低いことが関連:JAGES追跡調査
Childhood socioeconomic disadvantage is associated with lower mortality in older Japanese men: the JAGES cohort study
全文アクセス(英語)
http://m.ije.oxfordjournals.org/content/early/2016/07/06/ije.dyw146.long?view=long&pmid=27401729
国際科学誌PLoS Oneより論文が出版されました。山梨大学の山北満哉さんと書いた論文です。
オリンピックに向け、スポーツの振興が各方面で進められています。これまでにスポーツグループに参加することが要介護のリスクを低下させることは示されていますが、スポーツグループへの参加を促進するための要因はわかっていません。そこで本研究は、65 歳以上の高齢者78,002名を対象として、スポーツグループの参加にどのような要因が関連するかを検討しました。その結果、男性、低学歴者、低所得者、就業者、農林・漁業職者等でスポーツグループへの参加が少なく、周囲の精神的サポートがある人、近所付き合いが豊かな人、趣味の会や老人クラブに参加している人で多いということがわかりました。
スポーツの会への参加を進めている自治体や各種団体の役に立てばと思います。
プレスリリースページ:http://www.jages.net/#!/cl20 (番号 065-15-10)
学術誌International Journal of Obesity (Nature Publishing)から、論文を出版しました。無料で閲覧可能です。
経済危機が訪れると、貧困層や特定の職業につく世帯など、特定の人々の健康状態が悪化し、健康格差が拡大することが知られています。近年懸念されている「子どもの肥満」に注目して、2008年後半に深刻となった「リーマンショック」が子どもの発育に与えた影響を検討してみました。
その結果、リーマンショック以前より、所得が一般よりも低い貧困世帯の子どもたちが、リーマンショック後に有意に太り、過体重となるリスクが上がったことがわかりました。リーマン前の平均の世帯所得別に4段階に分けると、最も所得が高い群に比べて、最も低い群の男児では、過体重となるリスクが1.12倍、女児では1.35倍高いという結果でした。さらに、リーマン前の所得水準にかかわらず、リーマン後に所得が減少した世帯(30%減少、20%減少、10%減少など、複数で評価)でも、同様に体重が過剰となる子どもが多いことがわかりました。
一見、貧困なら、食べるものが足りなくて痩せるのでは?と思うかもしれませんが、現代の日本において、「食べ物が足りない」という状況はあまりおこりません。むしろ、望ましい食生活や運動習慣を維持できなくなること、ストレスなどで、生活習慣が乱れることなどが問題となります。もともと貧困だった世帯の子どもや、貧困でなくとも、所得が大きく減少して、社会的なストレスを抱えた世帯の子どもの生活習慣が乱れ、体重が増えてしまった、ということが考えられます。
論文はこちら: URL: http://www.nature.com/ijo/journal/vaop/ncurrent/full/ijo201590a.html
The global economic crisis, household income and pre-adolescent overweight and underweight: a nationwide birth cohort study in Japan
Ueda P, Kondo N, Fujiwara T.
Background:
We hypothesized that children from lower income households and in households experiencing a negative income change in connection to the global economic crisis in 2008 would be at increased risk of adverse weight status during the subsequent years of economic downturn.
Methods:
Data were obtained from a nationwide longitudinal survey comprising all children born during 2 weeks of 2001. For 16,403 boys and 15,206 girls, information about anthropometric measurements and household characteristics was collected from 2001 to 2011 on multiple occasions. Interactions between the crisis onset (September 2008) and household income group, as well as the crisis onset and a >30% negative income change in connection to the crisis, were assessed with respect to risk of childhood over- and underweight.
Results:
Adjusted for household and parental characteristics, boys and girls in the lower household income quartiles had a larger increase in risk of overweight after the crisis onset relative to their peers in the highest income group. (Odds ratio (95% confidence interval) for interaction term in boys=1.12 (1.02–1.24); girls=1.35 (1.23–1.49) comparing the lowest with the highest income group.) Among girls, an interaction between the crisis onset and a >30% negative change in household income with respect to risk of overweight was observed (odds ratio for interaction term=1.23 (1.09–1.38)). Girls from the highest income group had an increased risk of underweight after the crisis onset compared with girls from the lowest income group.
Conclusions:
Boys and girls from lower household income groups and girls from households experiencing a negative income change in connection to the global economic crisis in 2008, may be at increased risk of overweight. Vulnerability to economic uncertainty could increase risk of overweight in preadolescence.
英文医学誌Appetiteに、研究員の谷さんらとまとめた論文が掲載されました。
記事は無料で読めます。
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0195666315002925
高齢者約8万人のデータを分析し、独居か否か、誰と普段食事をしているかに加え、所得や健康状態、栄養摂取、体格などの関係を分析しました。
その結果、以下のことが主にわかりました。
・普段ほとんど一人で食事をする(孤食)の男女は食事内容がアンバランス
・孤食は肥満および痩せと関連
・男性では、孤食でさらに独居だと、これらの関連が強く
・女性では、誰かと一緒に暮らしているのにかかわらず孤食の状態が多いと、これらの関連が強い
食事は日に三度、生まれてからずーと繰り返す営みです。社会的な交流が健康の維持増進に重要なことが指摘されていますが、人と一緒にご飯を食べることが、健康の面でも重要かもしれません。