プレスリリース:運動は認知症リスクを少なくとも4年間抑える(佐藤)

助教の佐藤豪竜がプレスリリースを発表しました。
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概要

認知症予防のために運動が推奨されていますが、実は運動が認知症リスクを抑えるかどうかは、これまではっきりと分かっていませんでした。

認知症の前段階では身体活動が低下するため、運動と認知症の間の相関と因果の違いを区別することが難しいためです。

この研究では、19の自治体に住む約7万3千人の高齢者を対象とした約6年間の追跡調査のデーを用い、今年度ノーベル経済学賞を受賞したアングリスト氏らが確立した操作変数法という手法を用いて、運動が認知症リスクを少なくとも4年間抑えるという因果関係を明らかにしました。

具体的には、週に1回の運動をする高齢者の認知症リスクは、1年後は0.53、4年後は0.69で、運動をしない場合よりも認知症リスクが下がることが示されました。

論文

Sato K, Kondo N, Hanazato M, Tsuji T, Kondo K. Potential causal effect of physical activity on reducing the risk of dementia: a 6-year cohort study from the Japan Gerontological Evaluation Study. Int J Behav Nutr Phys Act. 2021 Oct 29;18(1):140. doi: 10.1186/s12966-021-01212-w. PMID: 34715877; PMCID: PMC8555243.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34715877/

プレスリリース:地域活動が盛んなまちに住むと野菜・果物の摂取が増加(西尾)

大学院生の西尾麻里沙がプレスリリースを発表しました。
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概要

通いの場や趣味の会など、様々な住民の活動を後押しすることで高齢者の健康を支援する動きが広がっています。活動が豊かなまちに住むと、栄養摂取や身体活動など、健康行動が改善する可能性を示すデータもあります。しかし、そのようなまちに住むと実際に活動への参加が増えることで、健康行動が改善するのかは検証されたことがありませんでした。また、孤立や貧困といった生活上の困難があると、日々の食へ配慮するゆとりがなくなり、栄養摂取のバランスが偏りがちになりますが、そのような人々への効果も知られていません。

本研究では、65歳以上の約25,000名を対象に、3年ごとに3回繰り返して調査した9年間の追跡研究のデータを分析した結果、初回調査時に地域活動が盛んな地域に住んでいた人は、その後3年の間に自分自身も地域活動へ参加するようになる傾向があり、そのような人はさらにその後の3年間で野菜・果物摂取頻度が高くなる、という時間を追った関係性が確認されました。加えて、この効果は一人暮らしの人の方でより強いことがわかりました。特に一人暮らしの男性は、自分自身が地域活動に参加することで、野菜・果物を摂取する人が13.5%増加するという結果が得られました。反対に、活動が盛んな地域にいるのに地域活動に参加しない一人暮らしの男性は、むしろ果物・野菜摂取頻度低くなることも示されました。これらの結果から、地域活動の活発さが栄養摂取行動に与える効果のメカニズムの一つに、実際に地域活動に参加するか否かが関係していることが示唆されました。

一人暮らしの人には、そのような地域づくりが特に効果的である可能性がある一方、独居男性に関しては、自身は参加しない人では望ましくない効果も示唆されることから、地域の活動を促すような支援の際には、恩恵が届きにくい人への配慮が必要と考えられます。

論文

Nishio M, Takagi D, Shinozaki T, Kondo N. Community social networks, individual social participation and dietary behavior among older Japanese adults: Examining mediation using nonlinear structural equation models for three-wave longitudinal data. Prev Med. 2021 Aug;149:106613. doi: 10.1016/j.ypmed.2021.106613. Epub 2021 May 11. Erratum in: Prev Med. 2021 Dec;153:106750. PMID: 33989675.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33989675/

プレスリリース:都市部に比べて農村部では1.2倍うつが多い ただしまちの中心部まで時間のかかるところに 住む人では1割うつが少ない(金森)

特別研究学生の金森万里子がプレスリリースを発表しました。
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概要

都市と農村のどちらでうつが多いのか?」世界的にも研究結果は異なっており、一貫していません。私たちは農村度を評価する地域単位に着目して、高齢者のうつと農村度の関連をみました。

その結果、農村部と都市部の市町村を比較した場合、農村部の市町村にお住まいの方では、男女ともにうつが1.2倍多いことがわかりました。農村部では趣味やスポーツ、ボランティアなどに参加していないことがうつの多いことと関係していました。一方、市町村でなく校区でみた時には、まちの中心部と比べると、中心部まで時間のかかる校区にお住まいの男性では1割うつが少ない傾向にありました。

非市街地や中山間地域では、人々に対する信頼感や愛着、困ったときの助け合いがうつ予防に役立っている可能性が示唆されました。うつの多さは農村度を評価する地域単位によって異なっており、農村部の市町村では市民参加しやすい環境づくりが大切であることが示唆されました。

論文

Kanamori M, Hanazato M, Takagi D, Kondo K, Ojima T, Amemiya A, Kondo N. Differences in depressive symptoms by rurality in Japan: a cross-sectional multilevel study using different aggregation units of municipalities and neighborhoods (JAGES). Int J Health Geogr. 2021 Sep 26;20(1):42. doi: 10.1186/s12942-021-00296-8. PMID: 34565381; PMCID: PMC8474726.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34565381/

出版:「ポストコロナ時代の『通いの場』」(教授 近藤、助教 長谷田)

近藤尚己と長谷田真帆が一部執筆を担当した「ポストコロナ時代の『通いの場』」が日本看護協会出版会より出版されました。

近藤と長谷田が担当したのは 第1章『「通いの場」の現状 』③多部署連携で数値目標を超過達成(熊本県御船町)です。

日本老年学的評価研究機構(JAGES) の「通いの場」ワーキンググループに参加する研究者、現場の専門職が研究会で発表した内容や成果をまとめた一冊となっております。

株式会社日本看護協会出版会「ポストコロナ時代の『通いの場』」

B5版、160ページ、定価2,640円(税込み)

 

論文出版:日本の在住外国人における医療アクセスが困難な人の特徴とアクセス抑制因子および効果的な支援策に関する混合研究(森田)

共同研究者の森田直美さん(東京大学博士課程)が国際保健医療から論文を出版しました。

森田直美, 金森万里子, 能智正博, & 近藤尚己. (2021). 日本の在住外国人における医療アクセスが困難な人の特徴とアクセス抑制因子および効果的な支援策に関する混合研究. 国際保健医療, 36(3), 107-121.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaih/36/3/36_107/_article/-char/ja/

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論文出版:生活保護受給者への健康管理支援事業に対する福祉事務所の期待と課題認識: 福祉事務所への質問紙およびヒアリング調査結果より(上野)

特別研究学生の上野恵子が日本公衆衛生雑誌から論文を出版しました。

上野恵子, 西岡大輔, & 近藤尚己. (2021). 生活保護受給者への健康管理支援事業に対する福祉事務所の期待と課題認識: 福祉事務所への質問紙およびヒアリング調査結果より. 日本公衆衛生雑誌, 21-070.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jph/advpub/0/advpub_21-070/_article/-char/ja/

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論文出版:コロナ第1波における“うつ”リスクを高める勤務・生活状況が判明

株式会社リンクアンドコミュニケーションと共同研究を行った、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う生活様式の変化と健康についての研究が出版されました。AI健康アプリ「カロママ」の利用者を対象としてデータを分析しました。

Sato K, Sakata R, Murayama C, Yamaguchi M, Matsuoka Y, Kondo N. Changes in work and life patterns associated with depressive symptoms during the COVID-19 pandemic: an observational study of health app (CALO mama) users. Occup Environ Med. 2021 Feb 22:oemed-2020-106945. doi: 10.1136/oemed-2020-106945. Epub ahead of print. PMID: 33619124.

またプレス・リリースが発表されました。

京都大学大学院 近藤研究室(社会疫学分野)との共同研究を論文発表
コロナ第1波における“うつ”リスクを高める勤務・生活状況が判明
PR TIMES、2021年2月24日

【京都大学大学院 教授 近藤 尚己先生】 エッセンシャルワーカーには通勤や勤務量の過多で強いストレスか

緊急事態宣言中に仕事時間が増えた方の抑うつリスクが高く、テレワークに移行できた方は抑うつになりにくい、という結果は大変興味深いです。テレワークできない、いわゆるエッセンシャルワーカーと呼ばれる方々などが、通勤が大変だったり勤務量が多いといった理由でストレスフルな状況となっていたのかもしれません。
新型コロナウイルスの蔓延を機会に、働く場を選ばない新しい仕事のスタイルが普及することを期待します。

今回のデータはAI健康アドバイスアプリ「カロママ」利用者のものであり、健康づくりに比較的関心があり、スマホ等を高度に使いこなせる人が多いなどの特徴を持っている可能性があることに留意して解釈すべきでしょう。

論文出版:フレイル予防のためのプライマリ・ケアでのアプローチ

近藤尚己が共同研究をすすめている、WHO神戸センターのローゼンバーグ恵美さんを筆頭著者とする論文が、国際誌「Integrated Healthcare Journal」に掲載されました。

高齢化社会に対応する日本の新しい試みとして、フレイル予防のためのプライマリ・ケアでのアプローチを紹介しました。

Rosenberg, M., Kondo, K., Kondo, N., Shimada, H., & Arai, H. (2020).
Primary care approach to frailty: Japan’s latest trial in responding to the emerging needs of an ageing population.
Integrated Healthcare Journal, 2(1), e000049.
http://dx.doi.org/10.1136/ihj-2020-000049

研究発表:コロナ禍に男性「仕事時間の増加」うつリスク約3.3倍

研究員の佐藤豪竜らとまとめた研究が記事に掲載されました。記事のもととなっている原著論文はプレプリント(査読前の論文)として、下記に掲載されています。

Koryu Sato, Ryohei Sakata, Chiaki Murayama, Mai Yamaguchi, Yoko Matsuoka, Naoki Kondo. Working From Home and Lifestyle Changes Associated With Risk of Depression During the COVID-19 Pandemic: An Observational Study of Health App (CALO Mama) Users. SSRN. Posted: 4 Aug 2020

コロナ禍に男性「仕事時間の増加」うつリスク約3.3倍 東大がAIアプリなど活用で分析(Ledge.ai、2020/8/14)

東京大学大学院 近藤研究室(健康教育・社会学分野)との共同研究を論文発表 コロナ流行下でうつ傾向を高める生活様式が明らかに!(PR TIMES、2020/8/13)

「コロナうつ」になりやすい生活習慣の特徴(Yahoo news, DIME、2020/8/31)

男性は仕事時間、女性は子育て時間増加でうつリスク増加(ReseMom, 2020/8/21)

コロナ禍のテレワークで男性は「働きすぎ」、うつ傾向のリスクが約3.3倍に(エキサイトニュース、2020/9/17)

論文出版:「出身国別の、都市・農村の自殺率格差」

本研究室の金森万里子さんの研究論文がSocial Science & Medicineに掲載されました。スウェーデン・ストックホルム大学の研究者の皆さんとの共同研究です。

論文はオープンアクセスなのでどなたでも読むことができますが、日本語で概要を説明しております。

▼金森万里子ホームページ 【論文出版】出身国別の、都市・農村の自殺率格差
http://mariko-kanamori.moo.jp/2020/04/11/%e3%80%90%e8%ab%96%e6%96%87%e5%87%ba%e7%89%88%e3%80%91%e5%87%ba%e8%ba%ab%e5%9b%bd%e5%88%a5%e3%81%ae%e3%80%81%e9%83%bd%e5%b8%82%e3%83%bb%e8%be%b2%e6%9d%91%e3%81%ae%e8%87%aa%e6%ae%ba%e7%8e%87%e6%a0%bc/?fbclid=IwAR0E2kvHw-kXqpCJJM-D7rKiN2KH5_f3LepjPwNqGUhGd4UNquu1_PJdH8k