報告:エイジフレンドリーな環境づくりのための会議(WHO WPRO, 近藤)

2021年11月23日~25日に、近藤尚己がWHO西太平洋地域事務局(WPRO)が開催したSharing knowledge to create Age-friendly environments(エイジフレンドリーな環境づくりのための会議)に参加しました。

このウェビナーには、政策立案者、学者、オピニオンリーダー、エイジフレンドリーな環境づくりの分野で活躍する人たちが集まりました。

このウェビナーで発表されたPDFはこちら

 

報告:2021年8月~12月の学会発表(メンバー)

2021年後半も研究室のメンバーが様々な学会で発表しました!
メンバーの紹介ページはこちらです。

8月

長谷田 真帆
ポストカンファレンス企画「多彩なキャリア観を付与する医学教育が、燃え尽きを防ぐ」第53回日本医学教育学会大会、シンポジスト

9月

金森 万里子
One Welfare World Conference: Presenter of One Welfare Science slaM (OWSM) Sessions

10月

佐藤 豪竜
「Working from home associated with mental health and dietary patterns during the COVID-19 pandemic: Studies of health app (CALO mama) users in Japan」、日本栄養改善学会「第12回日韓合同シンポジウム」、シンポジスト

西岡 大輔
「循環器疾患の社会的決定要因~医療・介護従事者にできることは?~」日本心臓リハビリテーション学会九州地方会.講演

11月

西岡 大輔
日本プライマリ・ケア連合学会 第34回近畿地方会シンポジウム「大阪の地から健康格差を考える」、シンポジスト

井上 浩輔
Beneficial Effects of Intensive Blood Pressure Control on Cardiovascular Outcomes Are Seen in Cohabitating Black Individuals but Not in Those Living AloneAHA (American Heart Association) Scientific Sessions 2021

12月

小林 由美子
「COVID-19に対する不安と感染予防対策における在宅勤務者・出社勤務者間の差異」第31回日本産業衛生学会全国協議会

木野 志保
「生活保護制度の利用を開始または終了したことによる社会関係の変化:JAGES縦断研究」第80回日本公衆衛生学会総会

金森 万里子
「ジェンダー規範と精神的健康:日本老年学的評価研究2019年調査データを用いた横断研究」第80回日本公衆衛生学会総会

西尾 麻里沙
シンポジウム「日本および諸外国のヘルスプロモーション施策における社会環境整備の視点」第80回日本公衆衛生学会

西尾 麻里沙
「高齢期の社会参加は、幼少期の逆境体験の影響を緩和させるか」 第80回日本公衆衛生学会

西岡 大輔
「生活保護利用世帯への給付額減少が 世帯医療費に与える影響:準実験研究」第80回日本公衆衛生学会総会

荒川 裕貴
「新型コロナ感染症拡大下における遠隔コミュニケーションの利用と孤独感の関係」第80回日本公衆衛生学会総会

ニュース:日本学術振興会 育志賞を受賞(金森万里子)

特別研究学生の金森万里子が「第12回 日本学術振興会 育志賞」を受賞しました!

受賞対象となった研究テーマ

「農村地域の自殺に関係する社会環境要因の解明と地域活動モデルの構築」

第12回 日本学術振興会 育志賞

今回は全国の大学の長または学術団体の長から推薦された165名の大学院博士課程学生の中から、18名が受賞しました。
受賞者一覧はこちらです。

日本学術振興会育志賞は、将来、我が国の学術研究の発展に寄与することが期待される優秀な大学院博士後期課程学生を顕彰することで、その勉学及び研究意欲を高め、若手研究者の養成を図ることを目的に平成22年度に創設されました。

プレスリリース:新型コロナワクチンへの示唆 高齢者のワクチン接種 カギはかかりつけ医(佐藤)

2021年2月に助教の佐藤 豪竜がプレスリリースを発表しました。
PDFはこちらです。

なお新型コロナウイルスについてはまず厚生労働省や首相官邸のウェブサイトなど公的機関で発表されている最新情報を参照することをおすすめします。

概要

65歳以上の高齢者に対する肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンが定期接種化されましたが、その接種率は必ずしも高くありません。接種率を向上させるヒントを得るため、かかりつけ医の有無や医師・患者間コミュニケーションの質との関連を調べました。

調査は、2016年に要介護認定を受けていない65歳以上の22,253名を対象に行われました。分析の結果、かかりつけ医がいる高齢者は、いない人に比べて肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンの接種率が約2倍高いことが明らかになりました。このほか、医師が患者の話を聞く姿勢や、患者がわからないことを医師に質問できること、治療方針を医師と患者が相談して決めるスタイルも、肺炎球菌ワクチンの接種率の上昇と関連していました。

高齢者のワクチン接種は、かかりつけ医の存在や医師との良質なコミュニケーションが関連しており、今後始まる新型コロナウイルスワクチンの高齢者の優先接種においても、接種率の向上のために今回の知見が役立てられることが期待されます。

論文

Sato K, Kondo N, Murata C, Shobugawa Y, Saito K, Kondo K. Association of pneumococcal and influenza vaccination with patient-physician communication in older adults: A nationwide cross-sectional study from the JAGES 2016. J Epidemiol. 2021 Feb 6. doi: 10.2188/jea.JE20200505. Epub ahead of print. PMID: 33551389.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33551389/

論文の解説:乳児死亡率の職業間格差が拡大傾向(金森)

特別研究学生の金森万里子が出版した論文について、ウェブサイトで紹介しています。
ウェブサイトはこちらです

論文

Mariko Kanamori, Naoki Kondo, Yasuhide Nakamura. Infant mortality rates for farming and unemployed households in the Japanese prefectures: An ecological time trend analysis, 1999-2017. Journal of Epidemiology. February 2020. https://doi.org/10.2188/jea.JE20190090

プレスリリース:運動は認知症リスクを少なくとも4年間抑える(佐藤)

助教の佐藤豪竜がプレスリリースを発表しました。
PDFはこちらです

概要

認知症予防のために運動が推奨されていますが、実は運動が認知症リスクを抑えるかどうかは、これまではっきりと分かっていませんでした。

認知症の前段階では身体活動が低下するため、運動と認知症の間の相関と因果の違いを区別することが難しいためです。

この研究では、19の自治体に住む約7万3千人の高齢者を対象とした約6年間の追跡調査のデーを用い、今年度ノーベル経済学賞を受賞したアングリスト氏らが確立した操作変数法という手法を用いて、運動が認知症リスクを少なくとも4年間抑えるという因果関係を明らかにしました。

具体的には、週に1回の運動をする高齢者の認知症リスクは、1年後は0.53、4年後は0.69で、運動をしない場合よりも認知症リスクが下がることが示されました。

論文

Sato K, Kondo N, Hanazato M, Tsuji T, Kondo K. Potential causal effect of physical activity on reducing the risk of dementia: a 6-year cohort study from the Japan Gerontological Evaluation Study. Int J Behav Nutr Phys Act. 2021 Oct 29;18(1):140. doi: 10.1186/s12966-021-01212-w. PMID: 34715877; PMCID: PMC8555243.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34715877/

プレスリリース:地域活動が盛んなまちに住むと野菜・果物の摂取が増加(西尾)

大学院生の西尾麻里沙がプレスリリースを発表しました。
PDFはこちらです。

概要

通いの場や趣味の会など、様々な住民の活動を後押しすることで高齢者の健康を支援する動きが広がっています。活動が豊かなまちに住むと、栄養摂取や身体活動など、健康行動が改善する可能性を示すデータもあります。しかし、そのようなまちに住むと実際に活動への参加が増えることで、健康行動が改善するのかは検証されたことがありませんでした。また、孤立や貧困といった生活上の困難があると、日々の食へ配慮するゆとりがなくなり、栄養摂取のバランスが偏りがちになりますが、そのような人々への効果も知られていません。

本研究では、65歳以上の約25,000名を対象に、3年ごとに3回繰り返して調査した9年間の追跡研究のデータを分析した結果、初回調査時に地域活動が盛んな地域に住んでいた人は、その後3年の間に自分自身も地域活動へ参加するようになる傾向があり、そのような人はさらにその後の3年間で野菜・果物摂取頻度が高くなる、という時間を追った関係性が確認されました。加えて、この効果は一人暮らしの人の方でより強いことがわかりました。特に一人暮らしの男性は、自分自身が地域活動に参加することで、野菜・果物を摂取する人が13.5%増加するという結果が得られました。反対に、活動が盛んな地域にいるのに地域活動に参加しない一人暮らしの男性は、むしろ果物・野菜摂取頻度低くなることも示されました。これらの結果から、地域活動の活発さが栄養摂取行動に与える効果のメカニズムの一つに、実際に地域活動に参加するか否かが関係していることが示唆されました。

一人暮らしの人には、そのような地域づくりが特に効果的である可能性がある一方、独居男性に関しては、自身は参加しない人では望ましくない効果も示唆されることから、地域の活動を促すような支援の際には、恩恵が届きにくい人への配慮が必要と考えられます。

論文

Nishio M, Takagi D, Shinozaki T, Kondo N. Community social networks, individual social participation and dietary behavior among older Japanese adults: Examining mediation using nonlinear structural equation models for three-wave longitudinal data. Prev Med. 2021 Aug;149:106613. doi: 10.1016/j.ypmed.2021.106613. Epub 2021 May 11. Erratum in: Prev Med. 2021 Dec;153:106750. PMID: 33989675.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33989675/

プレスリリース:都市部に比べて農村部では1.2倍うつが多い ただしまちの中心部まで時間のかかるところに 住む人では1割うつが少ない(金森)

特別研究学生の金森万里子がプレスリリースを発表しました。
PDFはこちらです
金森万里子のウェブサイトはこちらです

概要

都市と農村のどちらでうつが多いのか?」世界的にも研究結果は異なっており、一貫していません。私たちは農村度を評価する地域単位に着目して、高齢者のうつと農村度の関連をみました。

その結果、農村部と都市部の市町村を比較した場合、農村部の市町村にお住まいの方では、男女ともにうつが1.2倍多いことがわかりました。農村部では趣味やスポーツ、ボランティアなどに参加していないことがうつの多いことと関係していました。一方、市町村でなく校区でみた時には、まちの中心部と比べると、中心部まで時間のかかる校区にお住まいの男性では1割うつが少ない傾向にありました。

非市街地や中山間地域では、人々に対する信頼感や愛着、困ったときの助け合いがうつ予防に役立っている可能性が示唆されました。うつの多さは農村度を評価する地域単位によって異なっており、農村部の市町村では市民参加しやすい環境づくりが大切であることが示唆されました。

論文

Kanamori M, Hanazato M, Takagi D, Kondo K, Ojima T, Amemiya A, Kondo N. Differences in depressive symptoms by rurality in Japan: a cross-sectional multilevel study using different aggregation units of municipalities and neighborhoods (JAGES). Int J Health Geogr. 2021 Sep 26;20(1):42. doi: 10.1186/s12942-021-00296-8. PMID: 34565381; PMCID: PMC8474726.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34565381/

論文出版:日本の在住外国人における医療アクセスが困難な人の特徴とアクセス抑制因子および効果的な支援策に関する混合研究(森田)

共同研究者の森田直美さん(東京大学博士課程)が国際保健医療から論文を出版しました。

森田直美, 金森万里子, 能智正博, & 近藤尚己. (2021). 日本の在住外国人における医療アクセスが困難な人の特徴とアクセス抑制因子および効果的な支援策に関する混合研究. 国際保健医療, 36(3), 107-121.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaih/36/3/36_107/_article/-char/ja/

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論文出版:生活保護受給者への健康管理支援事業に対する福祉事務所の期待と課題認識: 福祉事務所への質問紙およびヒアリング調査結果より(上野)

特別研究学生の上野恵子が日本公衆衛生雑誌から論文を出版しました。

上野恵子, 西岡大輔, & 近藤尚己. (2021). 生活保護受給者への健康管理支援事業に対する福祉事務所の期待と課題認識: 福祉事務所への質問紙およびヒアリング調査結果より. 日本公衆衛生雑誌, 21-070.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jph/advpub/0/advpub_21-070/_article/-char/ja/

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