論文出版:閉じこもり男性 要介護重症化リスク 2.1倍

特任研究員の齋藤順子を筆頭とした論文が疫学の国際学会誌 Journal of Epidemiologyに掲載されました

高齢者の閉じこもりは、将来の寝たきりや死亡リスクの増加につながるとされ、現行の介護予防施策でもその重要性が認識されています。

本研究では要介護認定を受けた高齢者のその後の要介護度の変化パターンを抽出し、各パターンと閉じこもりとの関連を調べました。

その結果、男女ともに3つのパターンが抽出されました。要介護度が徐々に悪化するパターンを基準とした場合、閉じこもりがちな生活を送っている男性は、調査開始時の手段的日常生活動作(IADL)や主観的健康観などの影響を調整した後でも、そうでない男性に比べて2.14倍、中等度の要介護状態が続くパターンに所属しやすいことが分かりました。女性においてはそうした関連はみられませんでした。

男性高齢者においては、閉じこもりを予防することが、要介護状態になった後により程度の軽い経過をたどることにつながるかもしれません。

本研究ではJAGES(日本老年学的評価研究)のデータを分析しました。

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論文出版:災害後の仮設住宅住まいの子どもが肥満傾向に

2011年の東日本大震災後の小学生児童の体重の変化データを分析したところ、仮設住宅で生活している子どもたちはそうでないこともたちに比べて体重が増加しやすく、肥満傾向となるリスクが高いことがわかりました。

仮設住宅の周辺に遊び場がない、通学が徒歩でなくバスになった、一緒に遊ぶ仲間がいないなどの環境の変化が影響している可能性が考えられました。

この結果は、小児科医療の国際学術誌Periatrics Internationalに掲載されました

本研究は岩手県立大船渡病院の森山秀徳医師(小児科医)たちとの共同研究です。

論文プレスリリース:理性でなく感性に訴えることで健康格差是正につながる可能性

1月18日に出版された論文のプレスリリースを掲載します。

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理性でなく感性に訴えることで健康格差是正につながる可能性:健康チェックサービス受診割合が15%-36%増

「人より所得が低い」感覚がうつ病を引き起こす

JAGES研究の追跡データを用いた分析から、周りの人と比べて自分の所得の順序が低い人は、そうでない人に比べてうつになりやすいことが明らかになりました。この関係は、本人の実際の所得とは無関係でした。つまり、経済的にゆとりがあっても、他人の所得との比較でうつになる可能性があります。

論文はこちら


Krisztina Gero, Katsunori Kondo, Naoki Kondo, Kokoro Shirai, Ichiro Kawachi
Associations of relative deprivation and income rank with depressive symptoms among older adults in Japan
Social Science and Medicine https://doi.org/10.1016/j.socscimed.2017.07.028

健康の地域格差は拡大か:ランセットより出版

英国の総合医学誌「ランセット」より、以下の論文を出版しました。

東京大学の渋谷健司教授を責任著者として、多くの国内外の研究者とともにまとめたものです。都道府県別の疾病の分布の状況が一目でわかります。

Population health and regional variations of disease burden in Japan, 1990–2015: a systematic subnational analysis for the Global Burden of Disease Study 2015

報道・論文:要介護のリスクを予測するモデルを開発

千葉大学の辻大士さん(特任助教)が中心になりまとめてくれました。各メディアで報道されています。

研究班プレスリリース:「要支援・要介護リスク評価尺度」の開発 10問で要支援・要介護リスクを点数化

NHKより「近い将来、高齢者がどの程度、介護や支援が必要な状態になるリスクがあるかを予測する10項目のチェックリストを国立長寿医療研究センターなどの研究グループが開発しました。
チェックリストを開発したのは国立長寿医療研究センター老年学評価研究部の近藤克則部長などの研究グループです。
研究グループは平成23年に65歳以上の高齢者7万2000人余りを対象に行われた日常生活や身体の状況に関する25項目の調査への回答と、その後の4年間に、どのような人が新たに要介護や要支援の認定を受けたかを分析しました。
その上で要介護や要支援の認定と統計学的に関連がみられたバスや電車で1人で外出しているかや、15分続けて歩いているかなど、10項目を抽出し、4年以内に介護や支援が必要になるリスクが、どの程度あるのかを予測するチェックリストを開発しました。
チェックリストの10項目には、要介護や要支援との関連性の強さに応じて点数がつけられていて、合計の点数によってリスクを予測することができます。
近藤部長は「このチェックリストで、今のままでは危ないと思われた人は生活を見直し、出歩いたり、活発な生活を心がけたりする、きっかけにしてほしい」と話しています。」

毎日新聞:要介護リスク 10の質問で…千葉大など7万人調査で確認

研究成果報道:坂道が多い地域は糖尿病が少ない

東京医科歯科大学の藤原武男教授を筆頭著者とする論文が発表され、各メディアで取り上げられました。

プレスリリース原稿:地域の坂の傾斜が1.5度上がると コントロール不良の糖尿病リスク18%低下

これまでに以下のメディアで報道されました。

糖尿病予防には坂道歩きが効果的? TBS NEWS

news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3048166.html
坂道が多い町に住むことで糖尿病を予防できるかもしれない、そんな研究成果を東京医科歯科大学などの研究チームがまとめました。 東京医科 … 自然と筋力をつけるような都市計画が有効かもしれない」(東京医科歯科大学 藤原武男 教授).

ゆるやかな坂道歩行で“糖尿病リスク低下”|日テレNEWS24

www.news24.jp/articles/2017/05/08/07360897.html
東京医科歯科大学の藤原武男教授らのグループは、愛知県の高齢者約8900人のデータをもとに、地域の坂道と住人の糖尿病リスクの関連を調査。その結果、坂道の平均傾斜が1.48度上がると症状が比較的重い糖尿病になるリスク …

中度の糖尿病、軽い坂で抑制?=傾斜1.5度で18%減-医科歯科大など …

medical.jiji.com/news/6353
地域の坂の傾きが約1.5度上がると、住民が中等度の糖尿病になるリスクが18%低下するとの調査結果を、東京医科歯科大などの研究チームが8日、発表した。同大の藤原武男教授(公衆衛生学)は「日常的に坂を歩くことで、運動と同じ …

<糖尿病>坂道の街はリスク減、無意識に運動増 研究発表 – BIGLOBE …

https://news.biglobe.ne.jp/domestic/0509/mai_170509_0672847377.html
緩やかな坂がある地域の高齢者は平らな地域に比べ、重い糖尿病になるリスクが減るという研究結果を東京医科歯科大学などのグループがまとめた。国際的な学術 … ただ、急な坂だと逆に外出を控えたりするため、傾斜が高いほど効果があるかは分かっていない。藤原教授は「高齢者が気づかぬうちに糖尿病のリスクが減るよう、坂道を配置した町づくりができたら」と話している。【小島正美】 …. TBS 5月8日(月)20時33分. 坂道が多い …

地域のソーシャルキャピタル指標を開発しました。

地域のソーシャルキャピタルを測定する指標を開発し、リリースしました。

学術誌 Journal of Epidemiology誌より出版されました。公衆衛生等の研究者の方に使っていただければと思います。

Journal of Epidemiology
May 2017, Vol.27(5):221–227, doi:10.1016/j.je.2016.06.005

Original Article
Development of an instrument for community-level health related social capital among Japanese older people: The JAGES Project

Masashige Saito, Naoki Kondo, Jun Aida, Ichiro Kawachi, Shihoko Koyama, Toshiyuki Ojima, Katsunori Kondo

http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0917504016301721?_rdoc=1&_fmt=high&_origin=gateway&_docanchor=&md5=b8429449ccfc9c30159a5f9aeaa92ffb

論文出版:幼少期の暮らしぶりと寿命の関係

特任研究員の谷さんらとまとめた論文が出版されました。

幼少期に経済的に不利なことと老後の死亡リスクが低いことが関連:JAGES追跡調査
Childhood socioeconomic disadvantage is associated with lower mortality in older Japanese men: the JAGES cohort study

  • Childhood socioeconomic disadvantage was ‘paradoxically’ associated with lower mortality in Japanese men, but not in women.
  • The association between childhood socioeconomic disadvantage and lower mortality was stronger among the 75-years-old or older participants compared with those aged 65–74 years, which may be due to selective survival, childhood physical training or postwar calorie restriction in this generation of Japanese males.

全文アクセス(英語)
http://m.ije.oxfordjournals.org/content/early/2016/07/06/ije.dyw146.long?view=long&pmid=27401729

スポーツグループの参加者の特徴は? ~女性で1.4倍、趣味の会参加者で5倍多い~

国際科学誌PLoS Oneより論文が出版されました。山梨大学の山北満哉さんと書いた論文です。

オリンピックに向け、スポーツの振興が各方面で進められています。これまでにスポーツグループに参加することが要介護のリスクを低下させることは示されていますが、スポーツグループへの参加を促進するための要因はわかっていません。そこで本研究は、65 歳以上の高齢者78,002名を対象として、スポーツグループの参加にどのような要因が関連するかを検討しました。その結果、男性、低学歴者、低所得者、就業者、農林・漁業職者等でスポーツグループへの参加が少なく、周囲の精神的サポートがある人、近所付き合いが豊かな人、趣味の会や老人クラブに参加している人で多いということがわかりました。

スポーツの会への参加を進めている自治体や各種団体の役に立てばと思います。

プレスリリースページ:http://www.jages.net/#!/cl20 (番号 065-15-10)