論文出版:循環器病に関連する健康の社会的決定要因 (SDOH) 評価ツールのレビュー

循環器病に関連する健康の社会的決定要因(SDOH:Social Determinant of Health)のスクリーニング/アセスメントツールに関する総説論文を発表しました。
聖路加国際病院循環器内科、聖路加国際大学学術情報部のメンバーとの共同研究の成果です。

本論文では、既報の循環器病に関連する SDOH の評価ツールがどのように展開されているのか、また、SDOH の各項目の循環器病の転帰との関連性を明らかにしています。
本研究成果は、2023 年 12 月 11 日に、一般社団法人日本循環器学会が発行する国際学術誌「Circulation Journal」に掲載されました。
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【書誌情報】
雑誌名:Circulation Journal
タイトル:Scoping Review of Screening and Assessment Tools for Social Determinants of Health in the
Field of Cardiovascular Disease
DOI: 10.1253/circj.CJ-23-0443
URL: https://doi.org/10.1253/circj.CJ-23-0443

論文出版:地域のジェンダー規範が保守的と感じる人は、うつ症状・自殺念慮・自殺未遂歴が約2倍多い(共同研究者 金森)

京都大学人と社会の未来研究院 金森万里子と当研究室近藤尚己教授らの研究グループは、「男/女のくせに、●●してはいけない/しなさい」といった、地域のジェンダー規範の認知が高齢者のメンタルヘルスにどのような影響を及ぼすか明らかにしました。

住んでいる地域のジェンダー規範が保守的だと感じている男性では、1.9倍うつ症状を抱く人が多く、2.0倍自殺念慮(死にたい気持ち)を抱いており、2.2倍自殺未遂歴がありました。女性でも同様に、うつ症状が1.8倍、自殺念慮が2.1倍、自殺未遂歴が2.6倍多い結果でした。

地域社会において、男らしさや女らしさの多様性を認めない雰囲気を感じている人は、困ったときに助けを求めたくても求められず、その結果メンタルヘルスに悪影響を及ぼしている可能性が示唆されました。

本研究成果は、老年学および心理学分野のトップジャーナルである国際学術誌「International Psychogeriatrics」にて、2023年11月6日にオンライン早期公開されました。

 

論文:Mariko Kanamori, Andrew Stickley, Kosuke Takemura, Yumiko Kobayashi, Mayumi Oka, Toshiyuki Ojima, Katsunori Kondo, Naoki Kondo. Community gender norms, mental health and suicide ideation and attempts among older Japanese adults: a cross-sectional study. International Psychogeriatrics, 1-11.

 

DOI: https://doi.org/10.1017/S104161022300087X

 

プレスリリースは以下のリンクからご覧ください。

https://www.jages.net/library/pressrelease/?action=cabinet_action_main_download&block_id=5028&room_id=549&cabinet_id=304&file_id=14087&upload_id=18589

 

論文出版:妊娠中・産後にオンライン健康医療相談が利用できることで産後うつリスクが3分の2に低下(博士課程 荒川)

荒川裕貴 東京大学博士課程学生(京都大学特別研究学生)と近藤尚己教授らの研究チームが、オンライン健康医療相談サービスによる産後うつ予防の研究論文を発表しました。

本研究は横浜市在住の妊婦を対象に実施され、スマートフォンを用いて子育て中の不安や疑問を産婦人科医・小児科医・助産師に相談できる、オンライン健康医療相談サービスを無料で利用できる環境にあった女性は、そうでない女性に比べて産後うつのリスクが約3分の2程度に抑えられたことが明らかになりました。この結果は、ヘルスケアへの物理的・心理的なアクセス障壁を取り除くことが、産前産後の女性のメンタルヘルスの向上に重要である可能性を示しています。

本研究成果は、BMCシリーズのフラグシップジャーナルである「BMC Medicine」に掲載されました。

プレスリリース:妊娠中・産後にオンライン健康医療相談が利用できることで産後うつリスクが3分の2に低下 | 京都大学 (kyoto-u.ac.jp)

書誌情報:Arakawa, Y, Haseda M, Inoue, K, et al. Effectiveness of mHealth consultation services for preventing postpartum depressive symptoms: a randomized clinical trial. BMC Medicine 21, 221(2023).

DOI: https://doi.org/10.1186/s12916-023-02918-3

論文出版:高齢生活保護受給者の歯科受診率は受給していない者よりも20%以上低い―歯科受診には経済的要因以外の障壁か―(東京医科歯科大学 講師:木野)

東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 健康推進歯学分野の木野志保講師と相田潤教授の研究グループは、京都大学、大阪医科薬科大学との共同研究で、生活保護受給者は治療および予防のための歯科受診率が受給していない者に比べて低いことを明らかにしました。本研究結果から、生活保護受給者が歯科受診する際には経済的要因以外の障壁が存在する可能性が示唆されました。本研究成果は、国際科学誌Community Dentistry and Oral Epidemiologyにて、2023年8月9日にオンライン版で発表されています。

書誌情報:Kino S, Ueno K, Nishioka D, Kondo N, Aida J. Prevalence of dental visits in older Japanese adults receiving public assistance. Community Dent Oral Epidemiol. 2023 Aug 9.
(東京医科歯科大学プレスリリースリンク)

論文出版:妊娠の意思があった既婚女性の約20%がコロナ禍に妊娠を延期、ウェルビーイングの低下と強い関連(筑波大学准教授:松島)

筑波大学松島みどり准教授と当研究室近藤尚己教授らの研究グループの論文が、BMC Public Healthにアクセプトされました。本論文は、日本におけるCOVID-19パンデミックと妊娠先延ばし、そのような選択をした女性とウェルビーイングの低下との関連を明らかにしました。

その結果、妊娠意向を持っていた18歳から50歳の既婚女性768人の約20%が、コロナ禍により妊娠を延期していました。さらに、妊娠延期の決定と、重度の心理的苦痛やコロナ禍以降に発生した孤独感、自殺念慮が強く関連していることが分かりました。このことは、コロナ禍のような危機時における社会の対応によって女性のウェルビーイングの低下への懸念を示すものであり、社会全体として何らかの精神的ケアの仕組みを整える必要があると考えられます。

論文: Matsushima, M., Yamada, H., Kondo, N. et al. Married women’s decision to delay childbearing, and loneliness, severe psychological distress, and suicidal ideation under crisis: online survey data analysis from 2020 to 2021. BMC Public Health 23, 1642 (2023).

DOI:  10.1186/s12889-023-16476-z

プレスリリース(リンク先は筑波大学HP): p20230920140000.pdf (tsukuba.ac.jp)

論文出版:生活保護受給者へのテーラーメイドな健康づくり支援に向けた新手法を開発(助教 上野)

健康は生活の礎です。そのため、生活保護の受給者など、福祉的支援を受けている方の健康を守ることは特に重要です。日本では、令和3年より生活保護受給者向けの「被保護者健康管理支援事業」の実施が福祉事務所へと義務化されました。そのような健康づくり支援を効率的かつ効果的に行うために、この度、マーケティングの手法を応用した新しいテーラーメイドな支援手法を開発しました。

 マーケティングでは、サービスの対象者をその特性により分類(セグメンテーション)し、優先すべき対象者を特定して、その特徴に合わせたサービスをデザインします。これを応用して、今回、65歳以上の生活保護受給者の属性情報データを用いて、ソフトクラスタリングという機械学習の手法により、5つの特徴的なセグメントを抽出しました。次いで、福祉事務所のケースワーカーへのインタビュー調査により、抽出したセグメントが実在する生活保護受給者とどの程度類似しているかを検討しました。その結果、複数のセグメントが、ケースワーカーが実在すると感じられるものでした。また、ケースワーカーが今まであまり意識しなかった特徴を持つセグメントも抽出できました。

 この結果に基づき、現在各セグメントに適した支援プランの提示を行うテーラーメイド型の健康づくり支援システムの開発を進めています。

本研究成果は、「International Journal for Equity in Health」に掲載されました。

論文: Ueno, K., Nishioka, D., Saito, J. et al. Identifying meaningful subpopulation segments among older public assistance recipients: a mixed methods study to develop tailor-made health and welfare interventions. Int J Equity Health 22, 146 (2023).

https://doi.org/10.1186/s12939-023-01959-7

論文出版:コロナ禍で5歳児に約4か月の発達の遅れ(助教 佐藤)

助教の佐藤は、コロナ禍と乳幼児の発達に関する論文を発表しました。

分析の結果、5歳時点でコロナ禍を経験した群は、そうでない群と比べて平均4.39か月の発達の遅れが確認されました。一方、3歳時点では明確な発達の遅れはみられず、むしろ発達が進んでいる領域もありました。また、コロナ禍で、3歳、5歳ともに発達の個人差・施設差が拡大していることも明らかになりました。

本研究は、米国医学会が刊行する小児科分野のトップジャーナルである「JAMA Pediatrics」に掲載されました。

論文:Sato, K., Fukai, T., Fujisawa, K. K., Nakamuro, M. Association Between the COVID-19 Pandemic and Early Childhood Development. JAMA Pediatrics. 2023 July 10.

DOI: 10.1001/jamapediatrics.2023.2096.
プレスリリースは、以下のリンクからご覧ください。

また、本研究結果は、様々なメディアに取り上げられました。

ほか多数

受賞:日本内分泌学会若手研究奨励賞(YIA)(特定准教授 井上)

特定准教授の井上が第96回日本内分泌学会学術総会にて若手研究奨励賞(Young Investigator Award)を受賞しました。同会は2023年6月1日から3日に名古屋で開催されました。

受賞演題は井上らが提唱する 「高ベネフィット・アプローチ」の有用性を、高血圧の治療に関して実証したものです。最先端の機械学習モデルを応用することで、次世代の個別化医療戦略を提唱するものです。

疫学分野での本賞受賞は非常に珍しく、本研究成果を基盤とした疫学と臨床医療の領域架橋が一層進展することが期待されます。

論文情報:

Kosuke Inoue, Susan Athey, Yusuke Tsugawa (2023). Machine-learning-based high-benefit approach versus conventional high-risk approach in blood pressure management. International Journal of Epidemiology.

DOI: https://doi.org/10.1093/ije/dyad037

論文出版:引退すると心疾患リスクが2.2%ポイント、身体不活動のリスクが3.0%ポイント減 -35か国約10万人の追跡調査-(助教 佐藤)

助教 佐藤は、因果推論の手法を用いて「健康な人ほど就労継続しやすい」というバイアスを取り除き、引退と心疾患リスクに関する論文を発表しました。

現在、各国で年金の支給開始年齢の引上げや高齢者の就労継続支援が行われていますが、本研究結果は、引退の遅れは必ずしも健康には良くないことを示唆します。
働く高齢者が増える中で、運動などの健康づくりがますます重要になると考えられます。
本研究成果は、疫学分野のトップジャーナルである「International Journal of Epidemiology」に掲載されました。

論文:Sato K, Noguchi H, Inoue K, Kawachi I, Kondo N. Retirement and cardiovascular disease: a longitudinal study in 35 countries. Int J Epidemiol. 2023 May 8:dyad058.

DOI: https://doi.org/10.1093/ije/dyad058

プレスリリースは以下のリンクよりご覧ください。
リンク:社会疫学分野 佐藤豪竜助教らの引退と心疾患リスクに関する論文がInternational Journal of Epidemiology誌に掲載されました | 京都大学 大学院医学研究科 社会健康医学系専攻 (kyoto-u.ac.jp)

また、本研究結果は様々なメディアに取り上げられました。

・読売新聞:ストレスから解放・運動時間増、仕事引退したら心疾患リスク減…現役続けるなら対策必要 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)
・毎日新聞:退職で心疾患リスク減 京大など10万人調査を分析 | 毎日新聞 (mainichi.jp)
・朝日新聞:引退後も「働いた方が健康に良い」定説に疑問の研究者、統計調べ覆す:朝日新聞デジタル (asahi.com)
・共同通信:退職者は心臓病リスク減 35カ国で10万人調査、京大|47NEWS(よんななニュース)
・関西テレビ:引退すると『心疾患リスクが2.2%減少』 京大などのチームが発表「“働き続けること”は必ずしも健康に良くない」こと示唆 35カ国10万人を追跡調査 各国年金支給“開始年齢引き上げ”も調査契機(関西テレビ) – Yahoo!ニュース
・読売テレビ

論文出版:COVID-19発生後、青少年の身体活動の社会経済格差が2.5倍に(助教 喜屋武)

喜屋武特定助教(研究当時、神戸大学大学院人間発達環境学研究科)、琉球大学医学部保健学科疫学・健康教育学分野の高倉実教授は、COVID-19流行前と流行中とで、青少年に推奨される身体活動水準の達成状況に社会経済格差の拡大が、朝食摂取状況に格差の縮小が認められることを世界で初めて明らかにしました。
この研究成果は、Journal of Physical Activity & Healthで公開されています。

詳細は以下のリンクよりご覧ください。

日本の研究.com
https://research-er.jp/articles/view/122000

琉球大学web

青少年における健康行動の社会経済格差はCOVID-19によって変容している

論文
DOI:10.1123/jpah.2022-0489