1月18日に出版された論文のプレスリリースを掲載します。
理性でなく感性に訴えることで健康格差是正につながる可能性:健康チェックサービス受診割合が15%-36%増
本教室の大学院生の雨宮愛理さんが口演報告した「 地域のsocial capitalと要介護度改善の関連はsocial capitalの種類及び個人の社会特性により異なる:
多くの人が地域活動に参加するような元気なまちづくりをすることで、高齢者の健康を維持増進できる可能性があります。しかしその効果は、本人も実際に活動を行っているか、といった本人の状況に影響を受ける可能性があります。
このことを、高齢者約10万人の追跡調査:日本老年学的評価研究(JAGES)のデータを分析して検討しました。一度要介護となった方々を追跡したところ、たとえば地域活動への参加者が多い地域でも、本人はあまり参加していないと答える人は、要介護の重さが改善しにくい、という結果でした。元気な人が多い地域の中で、孤立しているようなばあい、その他の地域よりもリハビリのための資源や機会を利用しにくくなる、といった可能性が考えられます。
**2018年2月7日にアップデートしました。**
2018年1月18日付で英国の学術専門誌「Journal of Epidemiology and Community Health」上に掲載された近藤尚己と石川善樹による論文「Affective stimuli in behavioural interventions soliciting for health check-up services and the service users’ socioeconomic statuses: a study at Japanese pachinko parlours」に対していくつかの批判的な意見をツイッターやフェイスブック上でいただきました。
なお、本論文は英語で記載されているため、言語の違いによる齟齬をできるだけ回避するために、日本語のプレスリリースを掲載いたしました。
いただいたコメントの多くは、主に以下の2つでした。
1.私どもが用いた英語表現が、看護職女性に対して差別的であり、看護師に対するゆがんだステレオタイプを助長する
2.実証に用いた取り組み事例が不適切である
まず、表現について、私ども著者らは意図的に差別的な表現を用いたわけではなく、論文の準備段階で可能な限り誤解を与えないように慎重を期しました。しかし、その手続きが不十分であり、結果として、このことで強く不快に思った方がいるという事実を重く受け止めます。また、看護職のステレオタイプを助長しかねない点についても、配慮が足りず、また著者ら自身に内在したステレオタイプ的イメージが記述内容に反映された可能性を否定しません。不快感を抱いた方々に心よりお詫び申し上げます。
*ステレオタイプとは、多くの人に浸透している思い込みや偏見、高度に単純化されたイメージのことです。日本では、看護職に対して女性・若年・性的・補助役といったものが存在すると考えられます。
2.について、この論文の動機は、理性ではなく、楽しさ・好奇心・お得感・そして性的関心など、人の感性に働きかけることが健康づくりになかなか興味を持てないような人にもそのきっかけを与え、ひいては健康格差対策に資するのではないかというアイデアを提示し、事例を用いて検証することでした。感性に訴える具体的な方法については、事例で取り上げたアプローチを含め、倫理や社会的な受容性の観点から更なる議論が必要である、という結論をしめしています。感性に訴える方法は性的関心に特段限定されるものではなく、様々な方法がありますが、今回はこれまであまり研究されてこなかった性的関心に焦点を当てました。
この詳細は原著論文に記載されていますが、専門的なため、幅広い方々には理解されないものと思います。一方で抄録という限られた分量の記述ではうまく伝えきれず、研究全体の是非として議論が広まったと認識しています。
以下に、もう少し詳しく説明いたします。
人生の終え方にまつわる話題や情報をまとめた雑誌「ソナエ」のインタビューを受け、このほど出版されました。
「伴侶の死」が健康に与える影響についてのインタビューでした。伴侶の死は男女とも自身の生活習慣や寿命と関連することが世界中の追跡研究で分かっています。ただその影響は男性の方が大きいようです。
12月15日の朝日新聞山梨版で記事を掲載しました。
多様なつながりで「健康格差」解消を
研究協力をしている国立産業技術総合研究所の修士課程の井出さんが
人工知能学会全国大会学生奨励賞(JSAI Annual Conference Student Incentive Award)を受賞!
「ミクロアグリゲーションを用いた匿名化による確率的潜在空間意味解析」[1K2-2] 井手 絢絵
JAGESの追跡データをデータマイニングすることで、従来の統計分析ではわからなかった、生活様式と健康状態との関係に関する特性を持った集団の分類が可能となりました。集団の特性に合わせて健康づくりのための支援法を提案できるシステムづくりに向けた基礎的研究です。
個人情報を高度に匿名化して安全に活用できることも確認されました。
私が参画している日本老年学的評価研究:JAGES(代表:千葉大学近藤克則教授)のデータは、医療や介護のレセプトデータだけではわからない、生活や心理、経済状況の変化も捉えられるのが強みです。
井出さん、おめでとうございます🍾
拙著「健康格差対策の進め方 効果をもたらす5つの視点」の増刷が決定しました。地域でのまちづくりや行政の現場で実践的に使える、と、政府関係者、自治体の保健師、医療従事者などから好評をいただいています。一般の方からは「健康に無関心な人への対策」の章が特に面白く日々の仕事にも役立てそう」といったコメントいただいています。ぜひお手に取ってみてください。
健康格差対策の研究でご一緒している足立区が、第6回健康寿命のばそう!アワード」で受賞しました。
「生活習慣病予防の普及啓発や健康寿命の延伸に向けて、優れた取り組みを行っている企業・団体・自治体に送られる賞です。」
厚労省報道資料はこちら。
足立区にいれば自然と野菜を食べる量がふえる、自然と野菜から食べるようになることを目指して、足立区では「ベジタベライフ」活動をしています。区内飲食店と協力して、野菜たっぷりメニューを販売してもらうなどの活動を4年にわたり続けてきました。健康格差の存在を公表し、戦略的に地域環境整備に取り組んできた画期的な事例です。
以下は足立区のプレスリリースからの引用です。
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目的:応募・受賞を通じて、区の糖尿病対策事業「あだちベジタベライフ ~そうだ、野菜を食べよう」を広く区内外に情報発信し、企業や団体との協働・協創や区民への普及啓発をより一層推進する。
応募内容
(1)取組・活動名
「住んでいるだけで自ずと健康に!『あだちベジタベライフ~そうだ、野菜を食べよう~』」
(2)内容
「足立区糖尿病対策アクションプラン」に基づく3施策(①野菜を食べやすい環境づくり、
②子ども・家庭の良い生活習慣の定着、③重症化予防対策)の取組や成果
顧問および運営委員をしている日本HPHネットワークが、冊子を刊行しました。
医療機関には、社会的・経済的に困窮している多くの患者さんが来ます。社会的な課題にうまく対応することで、病気のケアもうまくいくことが多々あります。反対に、社会的課題を無視すると、うまくいかないことも多いです。
カナダ家庭医療協会では、そのような患者さんが受信したときにどう対応するか、そういった課題を社会の中で解決していく活動に医療従事者がどう関与すべきかについて解説した冊子を刊行しました。
このたびその日本語訳を、日本HPHネットワークメンバーが翻訳し、刊行しました。無料でダウンロードできます。
関係者の方、是非手に取ってみてください。
日本HPHネットワークは、病院で健康づくり(ヘルスプロモーション)を進める医療機関の国際ネットワークの日本支部です。HPHネットワークは世界保健機関によりコーディネートされています。