【メディア掲載】中日新聞:こもりがちなシニア男性の外出促進について

愛知県豊田市におけるシニア男性の外出促進の取り組みが、中日新聞(10月31日(金) 名古屋朝刊)にて掲載されました。
この記事では、こもりがちなシニア男性の外出を促進することの科学的根拠として、「自立した高齢者のうち、閉じこもりの男性は、そうでない男性と比較して2.14倍要介護度が進みやすい」という研究結果に言及しています。
これは齋藤順子先生(帝京大学大学院 公衆衛生学研究科 講師)が、2018年に当研究室教授近藤の研究室に在籍時に、近藤教授らとともにJAGESのデータの分析から発表した論文となります。

以下に新聞記事と当該論文へのリンクを貼りますので、ぜひご覧ください。
(※中日新聞の記事全文のWEB閲覧については、「中日新聞Web」への会員登録が必要となります。本件は有料となりますので、ご注意ください。)

○中日新聞Web:「ケアスナック」で乾杯! こもりがちシニア男性の外出促進に
https://www.chunichi.co.jp/article/1159572

○斎藤先生論文”Exploring 2.5-Year Trajectories of Functional Decline in Older Adults by Applying a Growth Mixture Model and Frequency of Outings as a Predictor: A 2010–2013 JAGES Longitudinal Study” , Journal of Epidemiology 29 巻 (2019) 2 号
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jea/29/2/29_JE20170230/_article/-char/ja/

【ニュース】 日吉綾子先生とJess Boneさんが当研究室に来訪されました

2025年9月下旬から、海外の大学でご活躍される日吉先生(スウェーデン:オレブロ大学 准教授)とJessさん(イギリス:UCL Senior Research Fellow)が当研究室に滞在されました。日吉先生は共同研究のため、Jessさんはポスドクとしての短期受け入れによる来訪となります。お二人には当研究室が毎週開催しているラボセミナーにもご参加いただき、学生の研究進捗発表に対して的確なアドバイスをいただきました。
また、ラボセミナーの中で、お二人のご自身の研究について特別にご講演いただきました。海外で実施される社会疫学においての最新の研究であり、当研究室にとって非常に良い視座を得ることができました。

9月29日 日吉先生
『 Health Consequences of Life Events – On Family Members and Patients’ Subsequent Life』

10月20日 Jessさん
『Social, cultural, and community participation and health』

10月24日にはお二人の歓迎かつ送別パーティーも開催しました。

これからも当研究室は、お二人と良い関係を築きながら、研究活動に邁進していきます。

お二人のプロフィール等は下記をご参照ください。
日吉綾子先生  
https://www.oru.se/english/employee/ayako_hiyoshi
Jess Bone さん 
https://profiles.ucl.ac.uk/59330-jess-bone

※日吉先生は10月7日に京大SPHにおける国際レクチャーでもご講演されております。そちらについては、下記をご参照ください。
https://sph.med.kyoto-u.ac.jp/news/8988/

【ニュース】池田市「木工ハンドメイド教室」に参加しました(マイコース 唐木さん)

2025年9月10日、池田市の介護予防事業の一つである「木工ハンドメイド教室」に、マイコースプログラムの学生1名(唐木 優さん)が参加しました。
当日の学びや感想を報告します。

【体験記】「木工ハンドメイド教室」に見る社会的インパクトと運営の工夫

1. 現場体験から得た気づき:社会参加を促す精緻な工夫
私は今回、京都大学大学院医学研究科 社会的インパクト評価学講座での体験として、池田市の介護予防事業「いつもyobouいけだ」の「木工ハンドメイド教室」に参加させていただきました。単なる趣味の教室ではなく、社会的なつながりと卒業後の継続まで見据えた精緻な運営の工夫がされているのを肌で感じました。

(1) 「介護」を言わない、健康無関心層を取り込む設計
この教室が最も巧みだと感じたのは、「木工」を前面に出し、「介護予防」という言葉を極力使わない点です。これにより、「介護」や「健康」に関心がない層でも、「何かを作ってみたい」「新しい趣味を見つけたい」という純粋な動機で参加しやすくなっていました。「楽しさ」を入口にすることで、予防活動への抵抗感をなくし、幅広い高齢者を取り込む工夫だと感銘を受けました。

(2) 計算されたグループ編成と会話のデザイン
会場では、参加者が小グループに分かれていました。このグループ分けが絶妙で、前年度の修了者や、話すのが得意な方と苦手な方が均等に割り振られていました。さらに、いきなり作業を始めるのではなく、最初の15分で「前回作ったものをどう使っているか」といった共通のテーマが与えられ、会話が自然に生まれるよう促されていました。この「話したくなる」設計こそが、高齢者の孤立を防ぎ、居場所をつくる第一歩だと感じました。

(3) 「教え・教えられる」関係を育む難易度設定と運営
工作の難易度も巧みでした。高度な技術や力が必要な工程は事前に講師が済ませており、一方で、あえて少し難しくてつまずく箇所を残していました。これにより、参加者同士が自然に教え合ったり、助け合ったりする状況が生まれていました。スタッフは安易に介入せず、参加者同士の解決を見守り、お客さん扱いしないよう片付けも自分たちで行う工夫も見られました。この「役割を持てる」環境が、参加者の自己肯定感を強く高めていると感じました。

2. インパクトを生む「出口」の設計:木工は手段で継続こそが目的
この教室の最も重要な点は、「木工は目的ではなく、あくまで介護予防の手段である」という思想が徹底されていたことです。

全6回の工程が終了しても、参加者が元の孤立した生活に戻らないよう、「継続」を軸とした仕掛けが用意されていました。時間内に形にはなるものの、装飾などの「余白」を残すことで、参加後も自分なりの形にする意欲を保たせていました。さらに、今回参加した人は次回以降は「お手伝い役」として参加できるようにすることで、地域活動への移行を促していました。

3. 体験を終えて
今回の経験は、私たちが理論として学ぶロジックモデルや社会的インパクトが、現場の地道で細やかな運営の工夫によって、いかに大きく左右されるかを教えてくれました。活動単体の効果だけでなく、「いかに継続させるか」までを設計に組み込むことが、真の社会課題解決につながると痛感しました。

京都大学医学部医学科4回生 唐木優

  

【ニュース】堺市「おとなのためのボードゲーム会」に参加しました(マイコース 唐木さん)

2025年9月11日、堺市の介護予防事業の一つである「おとなのためのボードゲーム会」に、マイコースプログラムの学生2名(唐木 優さん、廣田 翼さん)が参加しました。唐木さんより、当日の学びや感想を報告します。

【体験記】 堺サンドイッチキャンパスから学ぶ社会参加のデザイン

1. 現場体験から得た気づき:世代を超えた「遊び」の力
私は今回、京都大学大学院医学研究科 社会的インパクト評価学講座での体験として、「堺サンドイッチキャンパス」で開催された「おとなのためのボードゲーム会」(第6回)に参加させていただきました。この教室は、「介護」という言葉を排し、「ボードゲームの楽しさ」を入口に、高齢者の認知機能維持とコミュニケーション促進を目指す、非常に巧みな取り組みでした。

会場は終始笑い声に包まれ、参加者の皆さんが夢中になってゲームに興じる姿が印象的でした。現場で感じたのは、ボードゲームという「活動」が、認知機能の活性化(思考力、集中力)と交流機会の爆発的な増加というアウトカムを、その場で即効性をもって生み出しているという点です。「楽しい」という感情を起点にしているため、活動への抵抗感がなく、継続的な参加の動機付けを可能にしていました。

2. インパクトを最大化する「運営」と「教材」の工夫
現場で特に感銘を受けたのは、自発的な交流と役割の創出を促す運営設計です。

(1) 経験者による「教え合い」で役割を創出
ルールの説明一つをとっても工夫が見られました。グループのメンバー全員がルールを知らない時は講師が説明していましたが、多くの場合、すでに受講を終えた「修了者」が各グループに配置され、その方が説明役を務めてくださっていました。この「教える人」「教えられる人」の関係が生まれることで、参加者の自己有用感が高まり、教室に積極的に関わる動機付けになっていました。

(2) 交流を誘発する「程よい難易度」のゲーム選定
選ばれているゲームは、難しすぎず、程よく頭を使うものや、勝ち負けが均等に分かれやすいものが中心でした。特に複雑な戦略よりも、「笑い」や「声かけ」が自然発生する協力型やパーティーゲームが多く、参加者がゲームを通じて自然に打ち解けられるように設計されていました。

3. 社会的インパクト評価の視点:地域活動への「出口」設計
私が行った回は最終回でしたが、この教室の真価は、プログラム終了後の継続まで設計されている点にありました。

今回参加した人は全員「修了証を渡して表彰」され、次回以降は「サポート役」として参加できる仕組みになっていました。さらに、次の活動の場として、民間のカフェでの定期的なボードゲーム会が用意されており、教室で得た「つながり」を地域社会にスムーズに移行・定着させることを目的としていました。最終的に、この継続的な活動が健康寿命の延伸やウェルビーイング向上というインパクトに繋がっていくのだと確信しました。

4. 体験を終えて
今回の経験は、私たちが理論として学ぶロジックモデルや社会的インパクトが、現場の地道で細やかな運営の工夫、そして「遊び」という純粋な意欲を最大限に活用する仕組みによって、いかに大きく左右されるかを教えてくれました。

京都大学医学部医学科4回生 唐木優

【ニュース】堺市「おとなのためのボードゲーム会」に学生が参加しました(マイコース 廣田さん)

現在、当研究室には、京都大学医学部医学科が実施する「マイコースプログラム」として、医学部医学科4回生の学生6名が2か月の実習に来ています。
「社会で行われている様々な取り組みを知ってもらいたい」と考え、期間中にフィールド実習を行っております。学生の実習の報告を、今後「ニュース」の中で適宜掲載していきます。

※「マイコースプログラム」については、こちらを参照してください

2025年9月11日、堺市の介護予防事業の一つである「おとなのためのボードゲーム会」に、マイコースプログラムの学生2名(廣田 翼さん、唐木 優さん)が参加しました。
会場は堺市内の特別養護老人ホーム「ハーモニー」で、当日は約20名の高齢者の方々が参加されました。会は終始和やかな雰囲気で進み、学生たちも高齢者の方々と一緒に夢中になってゲームを楽しみました。

本事業は、全国でも先駆的な「成果報酬型」による公的組織から民間企業への委託事例として注目されています。今回の参加を通じて、学生たちは事業の現場運営や高齢者の主体的な参加を促す工夫など、多くの学びと気づきを得る機会となりました。
特に、柔軟な発想による企画・運営が印象的であり、地域における新しい介護予防の形を感じる貴重な経験となりました。(報告者:廣田 翼)

参考:堺市 介護予防「あ・し・た」プロジェクト
https://www.city.sakai.lg.jp/kenko/fukushikaigo/koreishafukushi/kaigoyobo/df_filename_ashita.html

【ニュース】西岡大輔先生が日本公衆衛生学会の奨励賞を受賞しました

社会的インパクト評価学講座の西岡大輔先生が第84回日本公衆衛生学会総会にて奨励賞を受賞しました。

日本公衆衛生学会奨励賞は、公衆衛生の分野における研究または実践活動において,価値ある業績を挙げている会員を表彰することにより公衆衛生の向上と奨励をはかることを目的に創設されました。

2025年10月30日(木曜日)午後に表彰式が行われ、西岡先生は受賞講演として、「生活困窮者の健康支援に向けた「知」の形成と社会実装:「社会健康公正学」の基盤構築」のテーマで講演されました。これまでの研究とご自身の研究への姿勢や困難、これからのビジョンとして社会における健康の公平・公正を検証する学術基盤としての「社会健康公正学」の構築について、お話しされました。
今後ますますの研究発展を願います。おめでとうございます!

西岡大輔先生ウェブサイトでのご報告はこちら:
https://daisuke-nishioka.com/2025/11/04/post-4359/

 

【告知】京都市主催の文化事業家応援イベント「FROM KYOTO」に登壇します(教授 近藤) 

京都市は、令和2年度に国のスタートアップ・エコシステム拠点形成計画の「グローバル拠点都市」に選定されております。そのため、世界で活躍するスタートアップの輩出、グローバルなスタートアップ・エコシステムの形成を目指し、スタートアップの創出、成長促進の取組を推進しています。
その一環として、多様な登壇者による先駆的なテーマの議論により、世界にインパクトを与えるスタートアップの創出の「きっかけ」を提供すること、京都のみならず日本のスタートアップ・エコシステムを充実することを、「京都」の地から発信するイベント「FROM KYOTO」が開催されます。その5日目となる『カルチャープレナー(文化事業者)が創造する新たな価値』において、当研究室教授 近藤が登壇します。

皆様、ぜひご参加ください。

●日時:2025年12月22日(月)17時30分~19時40分
    ※「FROM KYOTO」自体は全6日間のイベントであり、その5日目
●会場:CIC Tokyo Venture Café
    東京都港区虎ノ門 1-17-1 虎ノ門ヒルズビジネスタワー 15 階
●申込:事前申込制/先着順 下記の専用サイトからお申込みください
    京都市Kyo-Workingサイト https://kyo-working.city.kyoto.lg.jp/events/2025-10-29/

イベントの詳細は、下記の京都市情報館WEBページをご確認ください。
https://www.city.kyoto.lg.jp/sankan/page/0000346744.html

【ニュース】美山町でフィールドワークを実施しました(マイコース 廣田さん)

2025年9月5日、京都府南丹市美山町でフィールドワーク「京都の中山間地における医療を考える」を実施しました。マイコース学生1名(廣田 翼さん)と早期体験実習の学生2名(医学部医学科2回生 張替 永久さん、堀坂 俊輔さん)が参加し、准教授 西岡の引率のもと現地を訪問しました。片道約2時間の道中では、普段目にしない自然豊かな風景を眺めながら、地域医療や過疎地域の課題についてさまざまな議論を交わしました。

特に、オンラインを活用した検診の実施や、重症患者が発生した際の医療アクセスの問題、そして都市部の医師が地域の現状を把握しづらい現実などについて、活発な意見交換が行われました。

また、途中で町の診療所に立ち寄り、所長から地域医療の現状についてお話を伺いました。後継者不足や、亡くなった際の鑑別業務の多さなど、地域医療が抱える切実な課題にも直接触れることができ、自分たちにとって貴重な学びの機会となりました。(報告者:廣田 翼)

参考:美山林健センター診療所
https://www.instagram.com/miyamarinkencenter_cl/

【告知】「市場主義からプラネタリーウェルビーイングへ」vol.2 に登壇します(助教 土生)

当研究室の土生裕特定助教が10月29日(火)に開催される「市場主義からプラネタリーウェルビーイングへ」vol.2~文化を処方する、モノ・コトをデザインでつなぐ~に登壇します。

主催は京都大学Beyond 2050社会的共通資本研究部門で、文化、デザイン、健康の新しい関係を多角的に考えます。

土生助教は、人々の健康における文化資本と文化的ウェルビーイングをテーマに、アートや文化活動が心身の健康や社会的つながりに与える影響、文化的処方(Cultural Prescribing)の可能性などを紹介します。

続いて、京都大学経営管理大学院の小幡真也 特定准教より、「ゆたかさを生み出すキュレーション×デザイン」をテーマに、現代アートやデザインの実践とウェルビーイングの関係についての話題提供があります。

後半では、占部まり氏(宇沢国際学館・京都大学Beyond 2050社会的共通資本研究部門 連携研究員)を進行役に、グループディスカッション、そして講師の二人による対談「自然と健康になれる社会づくりのために」を実施し、参加者とともに、文化やデザインがもたらす健康・ウェルビーイングの形について対話を深めます。

会場は東京駅直結の新丸ビル10階「京都大学 東京オフィス」。定員50名(対面のみ・抽選制)です。
ウェブサイトはこちら。
https://www.beyond2050.iac.kyoto-u.ac.jp/event/1630/

以下、詳細です。
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市場主義からプラネタリーウェルビーイングへVol.2 ~文化を処方する、モノ・コトをデザインでつなぐ~

日時:2025年10月29日(水)15:30-17:30  ※15:00 受付・開場
会場:京都大学東京オフィス会議室A・B(新丸ビル10階)
定員:対面のみ50名 ※定員超の場合は、抽選
進行:占部まり(京都大学 Beyond 2050社会的共通資本研究部門 連携研究員、宇沢国際学館)

◆話題提供1「文化資本と文化的ウェルビーイング」
講師:土生裕(京都大学大学院医学研究科社会疫学分野 特定助教)
アート活動をはじめ、さまざまな文化活動・事象がどのように人々の健康に影響を与えるのかについて研究しています。人々の価値観を規定する文化は尊厳性や人と自然の関係にとって重要な母体となります。文化の視座から健康概念を捉え直した文化的ウェルビーイングや、人々の健康に寄与する資本としての文化資本の研究、そして、アートと医療・福祉・テクノロジーを組み合わせた文化的処方の効果評価などについて紹介します。

◆話題提供2「ゆたかさを生み出すキュレーション×デザイン」
講師:小幡真也(京都大学経営管理大学院 特定准教授)
集めたり、調べたり、人に伝えたり---これがキュレーションと言えると思います。もともとはコレクションの整理・修復・保管を指す言 葉でしたが、いまは、情報メディアから博物館や小売店まで活動領域が拡大しています。現代アートを利用した活動やデザイン活動をレビューし、ウェルビーイングについて連結できればと思います。

◆グループディスカッション
活動意欲がわき、幸福感が増したアート活動の経験はありますか?参加者一人一人の経験談を踏まえて、健康・ウェルビーイング評価指標に反映できる因子は何か、ともに考えてみましょう。

◆対談「自然と健康になれる社会づくりのために」 土生 裕 × 小幡 真也(進行:占部 まり)

主催:京都大学 成長戦略本部・Beyond 2050社会的共通資本研究部門
共催:京都アカデミアフォーラム in 丸の内
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メディア掲載:ポジティヴヘルスに関するエッセイが松本記念財団「絆」に掲載されました(教授 近藤)

一般財団法人松本記念財団の発行する情報誌「絆」Vol.13(2025年10月号)に、当研究室教授 近藤尚己が執筆したポジティヴヘルスに関するエッセイが掲載されました。

下記URLからご覧ください。
https://www.matsumotofoundation.com/publishing