【ニュース】公衆衛生と「文化」の関係に言及した論文および動画がLancet Regional Health (Western Pacific)に掲載されました

当研究室助教 本多および教授 近藤が率いる研究チームによる論文が、2026年1月15日発行のLancet Regional Health – Western Pacific Series on Social Prescribingに掲載されました。これらの論文は、公衆衛生において「文化」が与える役割の重要性を論じ、社会的処方の実施による精神的および社会的なウェルビーイングを向上させるための新たな視点を提示しています。

本多を筆頭著者とする論文「Traditional arts and events for mental and social well-being」では、無形文化遺産というコンセプトに基づいた42件の研究をスコーピングレビューしています。この研究では、日常の儀式から特別な祭りに至るまで、伝統的慣習がレジリエンスと社会的なつながりを育むことで、精神的および社会的なウェルビーイングに貢献するという文化的な慣習のもつ機能を明らかにしています。[論文全文(英語)はこちらから]

近藤は「Cultural epidemiology: a missing lens in public health research」において、公衆衛生学分野において文化資本を評価し、「文化疫学」という概念を提唱しています。効果的な公衆衛生の介入を行うためには、人々の日常生活、食生活、そして人との繋がりに関わる文化的な背景の理解が必要であることに言及しております。[記事全文(英語)はこちらから]

一連の研究は、西太平洋地域における社会的処方の実施や拡大に向けて実施されております。研究全体のコンセプトと、公衆衛生と文化の関係性の理解を深めるためのメッセージを要約した映像がオンライン上にて公開されています。映像内では、本多、近藤ともにコメントをしておりますので、ぜひご覧ください。

要約映像(英語)
Social Prescribing in the Western Pacific Region

本件の詳細はLancet Regional Health (Western Pacific)の該当ページ(英語)をご確認ください
The Lancet Regional Health – Social Prescribing Series

【告知】まちづくりデザインWEEK主催「健康まちづくり」ウェビナーに登壇します(教授 近藤)

当研究室の教授 近藤が2月19日(木)に開催されるまちづくりデザインWEEK主催「健康まちづくり」ウェビナーに登壇します。詳しくは下記をご覧ください。

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ウェビナー概要
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健康まちづくりの最新動向として、医療の枠を超え、地域活動や人とのつながりを活用する
「社会的処方」が注目されています。本ウェビナーでは、福祉・医療、アート、テクノロジーなどの分野で知見と技術を持つ自治体・企業・アカデミアが連携し、地域社会に実装する共創事例を紹介します。
孤独・孤立の解消を目指す「社会的処方」や、文化活動を通じて人のつながりを育む
「文化的処方」の可能性から、包括的な健康まちづくりのあり方を考えます。

名称:地域文化を生かし多様なコミュニティを育むまちづくりとは?
日時:2026年2月19日(木)13:00~15:00
主催:まちづくりデザインWEEK 
   JTBコミュニケーションデザイン/健康まちづくり実行委員会
まちづくり案内人(ナビゲーター):近藤 尚己 氏 京都大学大学院医学研究科
                社会健康医学系専攻 社会疫学分野 教授
形式:ZOOMによるオンラインLIVE配信
聴講料:無料

>>聴講登録【無料】はこちらから
https://jcd-event.smktg.jp/public/application/add/3901

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登壇情報
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◇13:05~13:25

社会的処方と文化的処方:医師が「まちづくり」に期待する理由

近藤 尚己 氏
京都大学大学院医学研究科
社会健康医学系専攻 社会疫学分野 教授

社会から孤立した生活を送ることは、たばこに匹敵するほど寿命を縮める
ことが知られています。孤立や孤独は命の問題です。しかし今の医療体制では、
孤立を治療することはできません。しかし、医療とまちの元気や活力を
生み出す事業者とが連携すれば、「治療」できるのです。社会的処方・
文化的処方は、そのような「しくみ」として期待され、世界中に広がり、
日本でも活発になってきました。銭湯・鉄道・医療・・・
この一見バラバラな活動同士が手を結んだとき、何が起きるでしょうか?
その驚くべき可能性をお伝えします。

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◇13:25~14:05 (パネルディスカッション)

新たな文化創造・発信拠点「ハラカド」の現在地とこれから
~銭湯をつくる新たな創造施設とまちづくり

池田 祐一 氏
東急不動産株式会社
都市事業ユニット 渋谷事業本部 渋谷運営事業部 グループリーダー

平松 佑介 氏
株式会社小杉湯 代表取締役

多様な文化が集まり、最新情報を常に更新するまち、原宿。東急不動産は
2024年に新たな体験型創造施設「ハラカド」を神宮前交差点にオープンしました。
地元民がつながる銭湯を中心としたフロア構成など、ユニークな体験価値を
とりいれた取り組みも注目を集めています。
東急不動産、小杉湯の担当者がそれぞれの立場から新旧カルチャーが交差する
原宿の今と未来について語ります。
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◇14:10~14:30

ロマンスカーミュージアムにおける「文化的処方」のトライアルについて
~ 「ART共創拠点」と連携した、地域のウェルビーイング向上を目指して

吉本 弘樹 氏
小田急電鉄株式会社 小田急総合研究所 主任研究員

小田急電鉄ではサステナビリティ経営を推進するにあたり、「沿線居住者の
ウェルビーイング」をモニタリング指標として設定し、「小田急沿線生活者
1万人調査」で測定しています。”アートコミュニケーション”による
ウェルビーイング向上を目指し、東京藝術大学「共生社会をつくるアート
コミュニケーション共創拠点」の協力を得て実施したプログラムを通して
見えてきた可能性等についてご紹介します。
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◇14:35~14:55
日本初!駅ホームで対面とオンラインで受診できるクリニック ~地域医療課題解決に向けて~

松尾 俊彦 氏
東日本旅客鉄道株式会社
マーケティング本部 まちづくり部門 マネージャー

JR東日本グループでは、都市と地方の医療格差等の社会課題解決に向けて、
「スマート健康ステーション」というヘルスケア事業に取り組んでいる。
くらしのスキマ時間にいつもの診療を合言葉に、駅のホーム等にオンライン
診療も活用したクリニックを開設している。
またハブの位置づけとなる100年先の心豊かなくらしづくりの実験場である
「TAKANAWA GATEWAY CITY」での取り組みについて紹介する。

>>聴講登録【無料】はこちらから
https://jcd-event.smktg.jp/public/application/add/3901

━━━━━<本イベントに関する問い合わせ>━━━━━━━━━━━

件名:まちづくりデザインWEEK~健康まちづくり・地域交通MaaS・GXDX CITY
日程: 2026年7月16日(木)
会場: 秋葉原UDX
Email: wce@jtbcom.co.jp (展示会事務局宛)
公式HP: https://www.citydesignweek.jp/index.html
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【告知】ISPC2026(社会的処方・文化的処方国際会議)を開催します

2026年5月に京都大学にてISPC2026(社会的処方・文化的処方国際会議)の開催が決定しました。大会長は教授 近藤が務めます。

本会議は、個人および社会の健康と幸福の向上に貢献する社会的処方・文化的処方 (Social and Cultural Prescription)に関する研究や活動について理解を深める貴重な機会です。ヨーロッパ、アメリカ、そしてアジアで生まれつつある社会的処方・文化的処方の先進的な事例の紹介をはじめ、その基盤となる理論や、新たな価値の創造に関する講演などを予定しています。

詳細は下記をご参照ください。皆様のご参加を心よりお待ちしております。

日時:2026年5月27日(水)・28日(木)
会場:京都大学 百周年時計台記念館他

〇参加登録及び演題登録につきましては、下記大会Webサイトトップページ「参加登録」「抄録投稿」をご確認ください。

〇2026年2月28日までの参加費支払において早期割引が適用されます。ぜひ、この機会にお申し込みください。

大会Webサイトはこちら https://ispc2026.symposium-hp.jp/jp/

【ニュース】新たな文化創造に向けた交流会「CBX MeetUp in KANSAI」を開催しました!

2026年1月20日、大阪市中央公会堂にて、関西で活動するクリエイター・企業・研究者・行政関係者が集う交流会「CBX MeetUp in KANSAI」が開催されました。


▼ 大阪市中央公会堂

本イベントは、文化を起点とした新しい価値創出や、文化と経済がともに発展する未来のビジネスモデルの探究を目的として企画されたものです。
そして今年度はそこに「well being」を含めた、「CB“W”X(Cultural Business “Well-being” Transformation)」として挑戦しました。

本イベントでは、文化を基盤に事業を展開する「カルチャープレナー(文化事業家)」に焦点を当て、各登壇者が活動の背景や理念を紹介しました。あわせて、参加者同士の対話やネットワーキングを通じて、新たな協働や連携の可能性を探る機会となりました。

▼交流会の様子

第2部「CB“W”X(Cultural Business “Well-being” Transformation)への挑戦」では、近藤尚己教授および高木大資特定准教授が登壇し、文化とウェルビーイングをめぐる研究視点を共有した後、パネルディスカッションを行いました。

近藤教授からは、社会的処方の意義とともに、そこに「文化」の視点を組み込む必要性、ならびに文化を通じた場づくりの重要性についてご講演いただきました。

▼近藤教授 登壇の様子

高木特定准教授からは、文化体験がもたらすウェルビーイングへの影響を評価する際、数値指標のみでは捉えきれないナラティブな情報、すなわち質的エビデンスの重要性についてご紹介いただきました。

▼高木特定准教授 登壇の様子


▼トークセッションの様子

今回のイベントの内容やプロジェクトの詳細は以下の特設サイトで報告します。
KANSAI MeetUp – 関西から、 文化がつなぐ 新しい可能性を。

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[主 催]KANSAI MeetUp実行委員会
(関西広域連合、(一社)安寧社会共創イニシアチブ、(一社)日本カルチュアプレナー協会、京都大学医学研究科)
[共 催]公益社団法人 関西経済連合会
[協 力]大阪ガス株式会社、三井住友信託銀行株式会社、株式会社わかさ生活

 

 

【ニュース】健康日本21(第三次)アクションプラン研修会の資料・動画の公開について

わが国では、全ての国民が健やかで心豊かに生活できる持続可能な社会の実現に向けて、「健康日本21(21世紀における国民健康づくり運動)」第三次(2024~2035年)の計画が進行しています。その円滑な推進を目的に「健康日本21(第三次)の推進及び進捗評価のための研究」として東北大学 辻一郎先生のもと研究班が構成され、教授 近藤が研究分担者として参加しています。
研究班では健康日本21が目標とする30の項目について、ロジックモデルとアクションプランの作成、優良事例の収集を行っており、これらの成果を全国の健康づくり施策担当者に伝え、国民健康づくり運動の発展に貢献するため、ウェブ研修会を開催しました。
2025年12月19日に開催された第2回アクションプラン研修会において、「社会環境」をテーマとして近藤が講演を行いました。
本研修会の資料および動画について、下記の研究班のWEBページにリンクが掲載されていますので、皆様、ぜひご覧ください。
なお、動画は公開期間が2026年2月13日17時までとなっております。ご注意ください。

〇研究班WEBページ
https://kenkounihon21-3rd.net/action-plan.html

〇健康日本21の詳細については、下記の厚生労働省WEBページを参照
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kenkounippon21_00006.html

 

【メディア掲載】中日新聞:こもりがちなシニア男性の外出促進について

愛知県豊田市におけるシニア男性の外出促進の取り組みが、中日新聞(10月31日(金) 名古屋朝刊)にて掲載されました。
この記事では、こもりがちなシニア男性の外出を促進することの科学的根拠として、「自立した高齢者のうち、閉じこもりの男性は、そうでない男性と比較して2.14倍要介護度が進みやすい」という研究結果に言及しています。
これは齋藤順子先生(帝京大学大学院 公衆衛生学研究科 講師)が、2018年に当研究室教授近藤の研究室に在籍時に、近藤教授らとともにJAGESのデータの分析から発表した論文となります。

以下に新聞記事と当該論文へのリンクを貼りますので、ぜひご覧ください。
(※中日新聞の記事全文のWEB閲覧については、「中日新聞Web」への会員登録が必要となります。本件は有料となりますので、ご注意ください。)

○中日新聞Web:「ケアスナック」で乾杯! こもりがちシニア男性の外出促進に
https://www.chunichi.co.jp/article/1159572

○斎藤先生論文”Exploring 2.5-Year Trajectories of Functional Decline in Older Adults by Applying a Growth Mixture Model and Frequency of Outings as a Predictor: A 2010–2013 JAGES Longitudinal Study” , Journal of Epidemiology 29 巻 (2019) 2 号
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jea/29/2/29_JE20170230/_article/-char/ja/

【ニュース】日吉綾子先生とJess Boneさんが当研究室に来訪されました

2025年9月下旬から、海外の大学でご活躍される日吉先生(スウェーデン:オレブロ大学 准教授)とJessさん(イギリス:UCL Senior Research Fellow)が当研究室に滞在されました。日吉先生は共同研究のため、Jessさんはポスドクとしての短期受け入れによる来訪となります。お二人には当研究室が毎週開催しているラボセミナーにもご参加いただき、学生の研究進捗発表に対して的確なアドバイスをいただきました。
また、ラボセミナーの中で、お二人のご自身の研究について特別にご講演いただきました。海外で実施される社会疫学においての最新の研究であり、当研究室にとって非常に良い視座を得ることができました。

9月29日 日吉先生
『 Health Consequences of Life Events – On Family Members and Patients’ Subsequent Life』

10月20日 Jessさん
『Social, cultural, and community participation and health』

10月24日にはお二人の歓迎かつ送別パーティーも開催しました。

これからも当研究室は、お二人と良い関係を築きながら、研究活動に邁進していきます。

お二人のプロフィール等は下記をご参照ください。
日吉綾子先生  
https://www.oru.se/english/employee/ayako_hiyoshi
Jess Bone さん 
https://profiles.ucl.ac.uk/59330-jess-bone

※日吉先生は10月7日に京大SPHにおける国際レクチャーでもご講演されております。そちらについては、下記をご参照ください。
https://sph.med.kyoto-u.ac.jp/news/8988/

【ニュース】池田市「木工ハンドメイド教室」に参加しました(マイコース 唐木さん)

2025年9月10日、池田市の介護予防事業の一つである「木工ハンドメイド教室」に、マイコースプログラムの学生1名(唐木 優さん)が参加しました。
当日の学びや感想を報告します。

【体験記】「木工ハンドメイド教室」に見る社会的インパクトと運営の工夫

1. 現場体験から得た気づき:社会参加を促す精緻な工夫
私は今回、京都大学大学院医学研究科 社会的インパクト評価学講座での体験として、池田市の介護予防事業「いつもyobouいけだ」の「木工ハンドメイド教室」に参加させていただきました。単なる趣味の教室ではなく、社会的なつながりと卒業後の継続まで見据えた精緻な運営の工夫がされているのを肌で感じました。

(1) 「介護」を言わない、健康無関心層を取り込む設計
この教室が最も巧みだと感じたのは、「木工」を前面に出し、「介護予防」という言葉を極力使わない点です。これにより、「介護」や「健康」に関心がない層でも、「何かを作ってみたい」「新しい趣味を見つけたい」という純粋な動機で参加しやすくなっていました。「楽しさ」を入口にすることで、予防活動への抵抗感をなくし、幅広い高齢者を取り込む工夫だと感銘を受けました。

(2) 計算されたグループ編成と会話のデザイン
会場では、参加者が小グループに分かれていました。このグループ分けが絶妙で、前年度の修了者や、話すのが得意な方と苦手な方が均等に割り振られていました。さらに、いきなり作業を始めるのではなく、最初の15分で「前回作ったものをどう使っているか」といった共通のテーマが与えられ、会話が自然に生まれるよう促されていました。この「話したくなる」設計こそが、高齢者の孤立を防ぎ、居場所をつくる第一歩だと感じました。

(3) 「教え・教えられる」関係を育む難易度設定と運営
工作の難易度も巧みでした。高度な技術や力が必要な工程は事前に講師が済ませており、一方で、あえて少し難しくてつまずく箇所を残していました。これにより、参加者同士が自然に教え合ったり、助け合ったりする状況が生まれていました。スタッフは安易に介入せず、参加者同士の解決を見守り、お客さん扱いしないよう片付けも自分たちで行う工夫も見られました。この「役割を持てる」環境が、参加者の自己肯定感を強く高めていると感じました。

2. インパクトを生む「出口」の設計:木工は手段で継続こそが目的
この教室の最も重要な点は、「木工は目的ではなく、あくまで介護予防の手段である」という思想が徹底されていたことです。

全6回の工程が終了しても、参加者が元の孤立した生活に戻らないよう、「継続」を軸とした仕掛けが用意されていました。時間内に形にはなるものの、装飾などの「余白」を残すことで、参加後も自分なりの形にする意欲を保たせていました。さらに、今回参加した人は次回以降は「お手伝い役」として参加できるようにすることで、地域活動への移行を促していました。

3. 体験を終えて
今回の経験は、私たちが理論として学ぶロジックモデルや社会的インパクトが、現場の地道で細やかな運営の工夫によって、いかに大きく左右されるかを教えてくれました。活動単体の効果だけでなく、「いかに継続させるか」までを設計に組み込むことが、真の社会課題解決につながると痛感しました。

京都大学医学部医学科4回生 唐木優

  

【ニュース】堺市「おとなのためのボードゲーム会」に参加しました(マイコース 唐木さん)

2025年9月11日、堺市の介護予防事業の一つである「おとなのためのボードゲーム会」に、マイコースプログラムの学生2名(唐木 優さん、廣田 翼さん)が参加しました。唐木さんより、当日の学びや感想を報告します。

【体験記】 堺サンドイッチキャンパスから学ぶ社会参加のデザイン

1. 現場体験から得た気づき:世代を超えた「遊び」の力
私は今回、京都大学大学院医学研究科 社会的インパクト評価学講座での体験として、「堺サンドイッチキャンパス」で開催された「おとなのためのボードゲーム会」(第6回)に参加させていただきました。この教室は、「介護」という言葉を排し、「ボードゲームの楽しさ」を入口に、高齢者の認知機能維持とコミュニケーション促進を目指す、非常に巧みな取り組みでした。

会場は終始笑い声に包まれ、参加者の皆さんが夢中になってゲームに興じる姿が印象的でした。現場で感じたのは、ボードゲームという「活動」が、認知機能の活性化(思考力、集中力)と交流機会の爆発的な増加というアウトカムを、その場で即効性をもって生み出しているという点です。「楽しい」という感情を起点にしているため、活動への抵抗感がなく、継続的な参加の動機付けを可能にしていました。

2. インパクトを最大化する「運営」と「教材」の工夫
現場で特に感銘を受けたのは、自発的な交流と役割の創出を促す運営設計です。

(1) 経験者による「教え合い」で役割を創出
ルールの説明一つをとっても工夫が見られました。グループのメンバー全員がルールを知らない時は講師が説明していましたが、多くの場合、すでに受講を終えた「修了者」が各グループに配置され、その方が説明役を務めてくださっていました。この「教える人」「教えられる人」の関係が生まれることで、参加者の自己有用感が高まり、教室に積極的に関わる動機付けになっていました。

(2) 交流を誘発する「程よい難易度」のゲーム選定
選ばれているゲームは、難しすぎず、程よく頭を使うものや、勝ち負けが均等に分かれやすいものが中心でした。特に複雑な戦略よりも、「笑い」や「声かけ」が自然発生する協力型やパーティーゲームが多く、参加者がゲームを通じて自然に打ち解けられるように設計されていました。

3. 社会的インパクト評価の視点:地域活動への「出口」設計
私が行った回は最終回でしたが、この教室の真価は、プログラム終了後の継続まで設計されている点にありました。

今回参加した人は全員「修了証を渡して表彰」され、次回以降は「サポート役」として参加できる仕組みになっていました。さらに、次の活動の場として、民間のカフェでの定期的なボードゲーム会が用意されており、教室で得た「つながり」を地域社会にスムーズに移行・定着させることを目的としていました。最終的に、この継続的な活動が健康寿命の延伸やウェルビーイング向上というインパクトに繋がっていくのだと確信しました。

4. 体験を終えて
今回の経験は、私たちが理論として学ぶロジックモデルや社会的インパクトが、現場の地道で細やかな運営の工夫、そして「遊び」という純粋な意欲を最大限に活用する仕組みによって、いかに大きく左右されるかを教えてくれました。

京都大学医学部医学科4回生 唐木優

【ニュース】堺市「おとなのためのボードゲーム会」に学生が参加しました(マイコース 廣田さん)

現在、当研究室には、京都大学医学部医学科が実施する「マイコースプログラム」として、医学部医学科4回生の学生6名が2か月の実習に来ています。
「社会で行われている様々な取り組みを知ってもらいたい」と考え、期間中にフィールド実習を行っております。学生の実習の報告を、今後「ニュース」の中で適宜掲載していきます。

※「マイコースプログラム」については、こちらを参照してください

2025年9月11日、堺市の介護予防事業の一つである「おとなのためのボードゲーム会」に、マイコースプログラムの学生2名(廣田 翼さん、唐木 優さん)が参加しました。
会場は堺市内の特別養護老人ホーム「ハーモニー」で、当日は約20名の高齢者の方々が参加されました。会は終始和やかな雰囲気で進み、学生たちも高齢者の方々と一緒に夢中になってゲームを楽しみました。

本事業は、全国でも先駆的な「成果報酬型」による公的組織から民間企業への委託事例として注目されています。今回の参加を通じて、学生たちは事業の現場運営や高齢者の主体的な参加を促す工夫など、多くの学びと気づきを得る機会となりました。
特に、柔軟な発想による企画・運営が印象的であり、地域における新しい介護予防の形を感じる貴重な経験となりました。(報告者:廣田 翼)

参考:堺市 介護予防「あ・し・た」プロジェクト
https://www.city.sakai.lg.jp/kenko/fukushikaigo/koreishafukushi/kaigoyobo/df_filename_ashita.html