AMED「予防・健康づくりサービスの平均効果と異質効果の推計デザインとその実装に関する研究」

本プロジェクトは、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)「予防・健康づくりの社会実装に向けた研究開発基盤整備事業」の一つとして、2022年度に採択されました。

近年、地域や職域での複合的な疾病予防や健康づくりのプログラムが盛んに開発・実装されています。また、健康行動を支援する携帯端末向けのアプリケーション(アプリ)の技術開発が進み、それらのプログラムに組み込まれて普及しています。しかし、これらのプログラムの効果評価手法は統一されておらず、効果が不明確なまま普及している実態があります。

予防・健康づくりのプログラムは①多様な介入要素が複合的に組み込まれている、②幅広い属性を持つユーザーに適用がある、③属性情報に応じてテーラーメード化されている、④ユーザーが日々入力していく情報に基づきプログラムが改定される(アプリのバージョン更新等)といった特徴を持ちます。そのため、医薬品等の効果評価に使われる、厳格なランダム化比較試験(RCT)を軸とした研究デザインが適用しにくいです。したがって、従来の厳格なRCTよりも柔軟な効果評価の研究デザインとその実装プロトコルを考案する必要があります。

予防・健康づくりプログラムは日々の行動変容をねらいとしていますが、人々の行動は、社会状況等、多様な属性の影響を受けるため介入効果も属性により大きく異なります。属性により異なる効果、すなわち「効果の異質性」を正確にとらえることで、特定の集団では効果が少ない、有害事象が起こりやすいといった状況を判断しプログラムを改善していくことが重要です。異質効果を推計することで、公正にサービスが提供されるための実装制度の設計をしたり、属性データに基づき対象者を分類(セグメンテーション)し介入内容をテーラーメード化するようなマーケティングの発想に基づく工夫が可能となります。

研究フィールドの例

1. 健康管理アプリ「カロママプラス」

(株)リンクアンドコミュニケーションが提供する健康管理アプリ「カロママプラス」は、ユーザーが入力した食事や運動などの記録に対して、AIがアドバイスをくれます。ユーザーを対象に行ったRCTから得られた知見を基に、これをリアルワールドデータに適用した際にどの程度のインパクトがあるかなどの評価を行います。
「カロママプラス」の食事入力画面
2. エンターテイメント型健康プログラム「健診戦」

(株)博報堂DYホールディングスが開発したエンターテイメント型健康プログラム「健診戦」の効果評価を行います。「健診戦」は、昨年度の自分の健診結果を
競争相手と見立て自分に打ち勝つことが目標で、ゲーミフィケーションなど行動科学を取り入れて開発されたプログラムです。
「健診戦」のポスター

業績

Nagata, H., Sato, K., Haseda, M., Kobayashi, Y., & Kondo, N. (2022). A novel behavioral science-based health checkup program and subsequent metabolic risk reductions in a workplace: Checkup championship. Preventive Medicine, 164, 107271.

Sasaki, Y., Sato, K., Kobayashi, S., & Asakura, K. (2022). Nutrient and Food Group Prediction as Orchestrated by an Automated Image Recognition System in a Smartphone App (CALO mama): Validation Study. JMIR Formative Research, 6(1), e31875.

Sato, K., Kobayashi, S., Yamaguchi, M., Sakata, R., Sasaki, Y., Murayama, C., & Kondo, N. (2021). Working from home and dietary changes during the COVID-19 pandemic: A longitudinal study of health app (CALO mama) users. Appetite, 165, 105323.

Sato, K., Sakata, R., Murayama, C., Yamaguchi, M., Matsuoka, Y., & Kondo, N. (2021). Changes in work and life patterns associated with depressive symptoms during the COVID-19 pandemic: An observational study of health app (CALO mama) users. Occupational and Environmental Medicine, 78(9), 632–637.

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