メンタル疾患・生活習慣病の発症リスク削減、医療費適正化に向けた機械学習予測モデルの構築と因果推論

本プロジェクトは、全国健康保険協会が事業の改善や事業主・加入者の行動変容を促すための方策の提案及び、国への政策提言を行うことを目的として、大学や研究機関などの外部有識者を活用した委託研究事業の募集を行い、令和3年度「外部有識者を活用した委託研究」に採択されました(研究代表者:井上 浩輔)。
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g7/cat740/sb7210/20220401/

本研究は、昨今のメンタル疾患、生活習慣病の社会的課題としての重要性の高まりを背景とし、メンタル疾患および生活習慣病において、被保険者の健康増進・医療費適正化を実現するための研究を行うことを目的としています。その中でも、本研究が焦点を当てるのは、今後更に重要性が増すと考えられる“予防”の領域です。

メンタル疾患、生活習慣病対策としての予防の重要性が高まる一方で、我が国におけるこうした予防への取り組みは未だ道半ばと言えます。例えば、近年のコンピューター技術の急速な発展により、機械学習を用いた予測モデルなどが構築されていますが、疾患や医療費の「予測」に加え、どの集団にターゲットを絞って予防施策を行うことが健康増進・医療費適正化に効果的であるか、という「因果」に迫った検討はほとんどされていないのが現状です。さらに、既存の研究はメンタル疾患(本研究ではメンタル疾患の中でも頻度の高い、うつ病に着目する)と生活習慣病について別の枠組みで予測モデルの構築などを行っているが、メンタル疾患・生活習慣病は互いに密接に関わりあっている(メンタル疾患が悪化すれば生活習慣病のコントロールは困難になり、また生活習慣病の悪化がメンタル疾患に影響を与えている可能性もある)ため、同じ集団のデータを用いて、両疾患について同時に検討することが実社会への応用という観点からは有効性・新規性が高いと考えられます。

本研究では、メンタル疾患・生活習慣病に対する“予防”の実現に向け、これら最先端の疫学統計手法を用い、リスク評価のための予測モデルの構築と、リスク因子が疾病・医療費に与える影響およびその異質性(個人間のばらつき)を評価することを研究の目的としています。この目的を達成することで、メンタル疾患、生活習慣病双方における、将来的な保健事業の質的向上と効率性向上のための、被保険者の健康増進と医療費適正化に向けたエビデンスを確立することを目指します。

参画・協力機関

京都大学、東京大学、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)、ハーバード大学、ボストン大学 など

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