医研シンポジウム2017:健康な社会づくりをめざして-健康自己責任論を超えて何をなすべきか-

9月15日に開催されたシンポジウム「健康な社会づくりをめざして-健康自己責任論を超えて何をなすべきか-」の報告ウェブサイトがまとまりました。こちらです。

「多部門連携による健康な社会環境づくり─健康に無関心な人々への対応─」という題名で報告いたしました。発表資料のダウンロードもできます。

以下、ウェブサイトより抜粋

「健康な街づくりをめざす健康都市構想や、テレビをはじめとするマスコミによる「健康格差」の報道が目立つようになりました。一方では、健康を自己責任とだけ捉える意見を巡ってネット上で論争が行われるなど、健康な社会づくりをめぐる関心や動きは日に日に高まっています。

そこで、2017年の医研シンポジウムでは、そこにどのような課題があるのか、様々な要因を浮き彫りにし、それらに対してどのような取り組みを講じることができるのか、4名の専門家より発表をいただきました。会場には、産官学の各方面から、また今回は報道機関からの参加者も多く、良好な社会環境の構築に資する情報共有が幅広くなされたものと確信しています。」

NHK持論公論で研究成果が紹介されました

9月18日に放送されたNHK持論公論「”人生100年時代”の健康格差」で、所属する日本老年学的評価研究(JAGES)の成果が紹介されました。

 

解説記事はこちらでご覧になれます。以下抜粋です。

「健康には食事や運動などの生活習慣が影響します。さらに、この生活習慣には所得や教育、働き方、それに地域のつながりがあるかどうかなども影響します。健康格差はこうした経済的な状況や社会的な環境によって健康に差が出ることと定義されています。ひとりひとりが健康でいられるかどうかはその人の心がけ次第と考えられがちですが、個人の努力だけで解消するのは難しい面もあるのです。このうち、所得と健康の関係について研究グループが1万4000人余りの高齢者を4年間追跡調査した結果です。所得が400万円以上を1とした場合、所得が低くなるほど死亡率が高くなっていました。同じように所得が低くなるほど介護のリスクも高くなっていました。このデータをみると、所得の高い高齢者の多くは働くことができるほど元気なのだから所得の低い人と健康格差があるのは当然だと思われるかもしれません。しかし、専門家が指摘するのは、こうした高齢期にあらわれる健康格差はそこに至るまでの生まれたときや幼い頃からの生活習慣の積み重ねや環境が影響するということです。」

レジデントノート「ドクターS]連載中!

羊土社から発行されている臨床医向けの雑誌「レジデントノート」で、「ドクターSの診療ファイル、SDHから探る、患者に隠れた健康問題とは?」が連載中です。 近藤尚己と藤原武男教授(東京医科歯科大学)が監修しています。

健康の社会的決定要因(SDH)の概念を駆使し,シャーロック・ホームズさながらの推理で診療を行うイケメン指導医『ドクターS』.今日も研修医とともに患者さんの健康問題を掘り下げて支援します!

これまでの内容

Vol.19 No.10(2017年10月号)・・・1842ページ
第3回 母子手帳の謎を解け
柴田綾子,近藤尚己

Vol.19 No.9(2017年9月号)・・・1664ページ
第2回 頻発する喘息発作の謎
舟越 優,藤原武男

Vol.19 No.7(2017年8月号)・・・1248ページ
第1回 治らない糖尿病の謎
柴田綾子,近藤尚己

「人より所得が低い」感覚がうつ病を引き起こす

JAGES研究の追跡データを用いた分析から、周りの人と比べて自分の所得の順序が低い人は、そうでない人に比べてうつになりやすいことが明らかになりました。この関係は、本人の実際の所得とは無関係でした。つまり、経済的にゆとりがあっても、他人の所得との比較でうつになる可能性があります。

論文はこちら


Krisztina Gero, Katsunori Kondo, Naoki Kondo, Kokoro Shirai, Ichiro Kawachi
Associations of relative deprivation and income rank with depressive symptoms among older adults in Japan
Social Science and Medicine https://doi.org/10.1016/j.socscimed.2017.07.028

世界保健機関との共同研究をはじめます

世界保健機関との共同研究が始まります。

地域の社会環境を整備することで介護予防活動を進めてきた、をはじめとする日本の先進事例・研究事例の要因分析を行い、高齢化が喫緊の課題となっている世界各国へのメッセージは何かを探ります。

近藤尚己も参画する日本老年学的評価研究(JAGES)の取り組みを分析します。

「WHO神戸センターと国立長寿医療研究センターは、1年間の共同研究「日本におけるユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC)と健康な高齢化を推進するための評価、研究、知見の活用に関する研究」を開始する運びとなりました。今回の共同研究では、それぞれの自治体の調査で得られた科学的知見を実際の政策へと結びつける先進的な取り組みとしてJAGES(Japan Gerontological Evaluation Study,日本老年学的評価研究)プロジェクトに着目し、どのような調査研究が求められ、どのように政策につなげていくことが有効かを詳細に検討していきます。」

詳しくはこちら

「団地を元気にするガイドブック」完成

厚生労働省の委託を受け三菱総合研究所が作成した「先進事例に学ぶ団地を元気にするガイドブック」が完成・公表されました。

日本にはURなどが手掛けてきた大規模団地が数多く存在します。行動成長を支えた人材を供給する貴重な住宅資源ですが、近年高齢化が進んでおり、新しい住民同士の「つながり」のかたち作りが求められています。本ガイドブックでは、その先進事例を探り、そこから導き出される「無理なくできる方法」を検討し、事例ととともに紹介しています。

本ガイドブック作成においては、検討委員会の委員長を務めました。

 

 

 

 

健康の地域格差は拡大か:ランセットより出版

英国の総合医学誌「ランセット」より、以下の論文を出版しました。

東京大学の渋谷健司教授を責任著者として、多くの国内外の研究者とともにまとめたものです。都道府県別の疾病の分布の状況が一目でわかります。

Population health and regional variations of disease burden in Japan, 1990–2015: a systematic subnational analysis for the Global Burden of Disease Study 2015

神戸市北区「地域の集い場立ち上げ支援ガイドブック」が完成

神戸市北区が作成した「地域の集い場立ち上げ支援ガイドブック」が完成しました。

 

近藤尚己が参画するJAGES研究班が長年関わらせていただいている神戸市では、現在「介護予防サロン推進事業」がすすめられています。そこで、神戸市の北区保健福祉部の一人の保健師の方が中心となって、介護予防サロンなどの地域の集い場の立ち上げを支援していくノウハウとヒントを1冊のガイドブックにまとめてくださいました。

 

地域包括支援センターなどでご活用ください。

 

第6章の集い場が地域にもたらす効果では、JAGES研究成果も紹介されています。

具体的なノウハウや助言が惜しげもなく詰められおり、まさに現場の、現場による、現場のためのガイドブックです。ぜひご活用ください!

ガイドブックはこちらからご覧になれます。