2018年6月16日、三重県津市で開催されました日本プライマリ・ケア連合学会学術総会にて、
シンポジウム:三重宣言2018「健康格差に対する見解と行動指針」声明文の作成手順・構成と健康格差の現状
を報告しました。
同学会の健康の社会的決定要因検討委員会の副委員長として同指針の策定にかかわりました。
指針の全文はこちらから読めます。
地域包括ケアシステムづくりには、多様な職種や組織都の連携が不可欠です。それをコーディネートする保健師等の専門職の皆様からは、連携のための会議運営や別組織とのやり取りに関する苦労の声が絶えません。
このたび近藤尚己が研究代表を務める日本医療研究開発機構(AMED)研究課題「地域包括ケア推進に向けた地域診断ツールの活用による地域マネジメント支援に関する研究」の一環として、そのような場面で役立つコミュニケーションのノウハウが詰まった資料を発行しました。分担研究者である静岡文化芸術大学の河村洋子准教授による出版物です。
地域包括ケアシステムの構築に役立つコミュニケーション促進のための「道具箱」
以下説明文を転記します。
長寿は喜ぶべきものですが、社会全体ではそのことで生じる負荷によりジレンマに直面していると言えるのかもしれません。私たちは、国の大きな仕組みが変わらなければ、自分たちで何もできないのか。「そうではない」というのが「地域包括ケアシステム」なのだと思います。自分たちでみんなでできるところで力を合わせてできることがあるはず。力を合わせる「みんな」には、「良い関係性」が必要です。さらに、「良い」関係性とは「お互いさま」の関係性だと言えます。そのためには日々のコミュニケーションが重要です。
とても小さい規模感と感じられるかもしれませんが、「お互いさま」の関係性をつくるために、質の良い、心が行き交うコミュニケーションをかたちにするお手伝いをすることが、この「道具箱」の目的です。
また、「介護予防のための地域診断データも活用と組織連携ガイド」は、地域包括ケアシステム構築プロセスの全体をガイドしてくれるとてもいいガイドがすでにある中で、この「道具箱」が何をしようとしているのか?コミュニケーション活動を工夫することで、ガイドのタイトルにある「連携」しやすくすることができる。この工夫のアイデアをこの「道具箱」は提案します。
日本の保健システムの最新の動向と今後の計画をまとめた英文書籍Japan health system reviewがAsia Pacific Observatory on Health Systems and Policiesから出版されました。
世界保健機関等が監修するHealth in Transitionレポート日本版の最新稿です。
本文はすべてここからダウンロードできます。
日本語のサマリーもここに掲載されています。
著者:
Haruka Sakamoto, The University of Tokyo
Mizanur Rahman, The University of Tokyo
Shuhei Nomura, The University of Tokyo
Etsuji Okamoto, University of Fukuchiyama
Soichi Koike, Jichi Medical University
Hideo Yasunaga, The University of Tokyo
Norito Kawakami, The University of Tokyo
Hideki Hashimoto, The University of Tokyo
Naoki Kondo, The University of Tokyo
Sarah Krull Abe, The University of Tokyo
Matthew Palmer, The University of Tokyo
Cyrus Ghaznavi, The University of Tokyo
Edited by:
Kenji Shibuya, The University of Tokyo
Stuart Gilmour, The University of Tokyo
Kozo Tatara, Japan Public Health Association
2011年の東日本大震災後の小学生児童の体重の変化データを分析したところ、仮設住宅で生活している子どもたちはそうでないこともたちに比べて体重が増加しやすく、肥満傾向となるリスクが高いことがわかりました。
仮設住宅の周辺に遊び場がない、通学が徒歩でなくバスになった、一緒に遊ぶ仲間がいないなどの環境の変化が影響している可能性が考えられました。
この結果は、小児科医療の国際学術誌Periatrics Internationalに掲載されました。
本研究は岩手県立大船渡病院の森山秀徳医師(小児科医)たちとの共同研究です。
本教室の大学院生の雨宮愛理さんが口演報告した「 地域のsocial capitalと要介護度改善の関連はsocial capitalの種類及び個人の社会特性により異なる:
多くの人が地域活動に参加するような元気なまちづくりをすることで、高齢者の健康を維持増進できる可能性があります。しかしその効果は、本人も実際に活動を行っているか、といった本人の状況に影響を受ける可能性があります。
このことを、高齢者約10万人の追跡調査:日本老年学的評価研究(JAGES)のデータを分析して検討しました。一度要介護となった方々を追跡したところ、たとえば地域活動への参加者が多い地域でも、本人はあまり参加していないと答える人は、要介護の重さが改善しにくい、という結果でした。元気な人が多い地域の中で、孤立しているようなばあい、その他の地域よりもリハビリのための資源や機会を利用しにくくなる、といった可能性が考えられます。
**2018年2月7日にアップデートしました。**
2018年1月18日付で英国の学術専門誌「Journal of Epidemiology and Community Health」上に掲載された近藤尚己と石川善樹による論文「Affective stimuli in behavioural interventions soliciting for health check-up services and the service users’ socioeconomic statuses: a study at Japanese pachinko parlours」に対していくつかの批判的な意見をツイッターやフェイスブック上でいただきました。
なお、本論文は英語で記載されているため、言語の違いによる齟齬をできるだけ回避するために、日本語のプレスリリースを掲載いたしました。
いただいたコメントの多くは、主に以下の2つでした。
1.私どもが用いた英語表現が、看護職女性に対して差別的であり、看護師に対するゆがんだステレオタイプを助長する
2.実証に用いた取り組み事例が不適切である
まず、表現について、私ども著者らは意図的に差別的な表現を用いたわけではなく、論文の準備段階で可能な限り誤解を与えないように慎重を期しました。しかし、その手続きが不十分であり、結果として、このことで強く不快に思った方がいるという事実を重く受け止めます。また、看護職のステレオタイプを助長しかねない点についても、配慮が足りず、また著者ら自身に内在したステレオタイプ的イメージが記述内容に反映された可能性を否定しません。不快感を抱いた方々に心よりお詫び申し上げます。
*ステレオタイプとは、多くの人に浸透している思い込みや偏見、高度に単純化されたイメージのことです。日本では、看護職に対して女性・若年・性的・補助役といったものが存在すると考えられます。
2.について、この論文の動機は、理性ではなく、楽しさ・好奇心・お得感・そして性的関心など、人の感性に働きかけることが健康づくりになかなか興味を持てないような人にもそのきっかけを与え、ひいては健康格差対策に資するのではないかというアイデアを提示し、事例を用いて検証することでした。感性に訴える具体的な方法については、事例で取り上げたアプローチを含め、倫理や社会的な受容性の観点から更なる議論が必要である、という結論をしめしています。感性に訴える方法は性的関心に特段限定されるものではなく、様々な方法がありますが、今回はこれまであまり研究されてこなかった性的関心に焦点を当てました。
この詳細は原著論文に記載されていますが、専門的なため、幅広い方々には理解されないものと思います。一方で抄録という限られた分量の記述ではうまく伝えきれず、研究全体の是非として議論が広まったと認識しています。
以下に、もう少し詳しく説明いたします。
人生の終え方にまつわる話題や情報をまとめた雑誌「ソナエ」のインタビューを受け、このほど出版されました。
「伴侶の死」が健康に与える影響についてのインタビューでした。伴侶の死は男女とも自身の生活習慣や寿命と関連することが世界中の追跡研究で分かっています。ただその影響は男性の方が大きいようです。
12月15日の朝日新聞山梨版で記事を掲載しました。
多様なつながりで「健康格差」解消を