論文出版: 中高生の価値観と幸福感との関連:国際比較(韓国・日本・中国)研究

価値観は幸福感と考関係すると考えられますが、価値観は政治的な思惑等々により、国によって異なります。

今回、韓国の研究チームと共同で、その国際比較を行いました。韓国、日本、中国の中高生それぞれ約2000人を対象とした国際的研究である、思春期価値観調査(2008年)のデータを分析しました。

価値観に関する36問の質問を5つの価値観に分類したところ、両親の学歴や世帯構成、信仰などとは独立して、どの国でも、博愛・善行(benevolence)と利他主義(altruism)が幸福度と関連しました。一方、家父長制的な規範(patriarchy)は中国の学生では幸福度が高いことと関連しましたが、日本の学生ではその逆の結果でした。韓国では成功を追い求めること(success pursuit)と幸福度が低いことが関連していました。

いずれの国においても、博愛や利他性が幸福度と関連したことは特筆すべき結果です。

研究はソウル大学校のチュワン・オー教授のチームとの共同執筆論文です。国際学術誌 Journal of Youth Studiesに掲載されました。

書誌情報: Heo, J., Lin, S. F., Kondo, N., Hwang, J., Lee, J. K., & Oh, J. (2018). Values and happiness among Asian adolescents: a cross-national study. Journal of Youth Studies, 1-16.
https://doi.org/10.1080/13676261.2018.1513640

お知らせ:厚生労働省の資料に掲載されました

厚生労働省老健局・保険局の資料に日本老年学的評価研究(JAGES)の研究結果が掲載されました。

平成30年7月19日
第113回社会保障審議会医療保険部会 資 料 2
高齢者の保健事業と介護予防の 一体的実施について
厚生労働省老健局・保険局
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000334808.pdf

平成30年7月26日
社会保障審議会 介護保険部会(第74回) 資料2
厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000338522.pdf

メディア掲載:JAGESが市民活動と抑うつの関連を調査研究

特任研究員の長谷田真帆を筆頭とした論文に関する記事が週刊保健衛生ニュースに掲載されました。

「JAGESが市民活動と抑うつの関連を調査研究」
JAGES調査 市民活動の盛んな地域 抑うつで所得格差顕著
週刊保健衛生ニュース(平成30年8月27日発行)

論文のプレスリリースはこちらです

スポーツ庁「スポーツ実施率向上のための行動計画」に掲載

本日スポーツ庁から公開されました「スポーツ実施率向上のための行動計画」において、所属する日本老年学的評価研究(JAGES)プログラムの成果が紹介されています。

オリンピック・パラリンピック、およびそのレガシーの成果・効果について、経済効果のみならず、健康づくりや街づくりの面の効果も科学的に評価していくべきであると思います。

本文26ページ(以下)および資料集で掲載されています。

<スポーツをするために必要な施策>
〔「地方スポーツ推進計画」の策定の促進〕
④「地方スポーツ推進計画」の策定を促進する
・地方自治体はそれぞれの団体で固有の事情を抱えているため、まずは、
地域の課題を分析し、その課題に応じた策を講じていく必要がある。その
ための「地方スポーツ推進計画」の策定及び必要に応じた改定を促進する
とともに、着実に実施されるように国も連携を図りつつ、その取組を推進し
ていく。
・課題の抽出、分析に加え、PDCA サイクルを回していくためには、JAGES
プロジェクト等をはじめとした地域の客観的データと照会可能な形での連
携を図ることを促進する。
・地方自治体において、スポーツ実施率等の調査を行い、達成目標や実績
を公表することを促す。

「健康格差対策の考え方:次世代の幸福のために」学生のための政策立案コンテスト基調講演

8月25日、東京代々木のオリンピック記念青少年センターで開催された「学生のための政策立案コンテスト」で、基調講演を「健康格差対策の考え方:次世代の幸福のために」と題して行いました。

全国の大学生100名近くが、1週間かけて政策立案をするコンテスト(GEIL)です。今年のお題は次世代の健康格差の縮小、ということでした。健康格差対策の進め方について概説しました。

GEILウェブサイト:https://www.waavgeil.jp/

フェイスブックサイト:https://www.facebook.com/policymakingcontestgeil/?__xts__[0]=68.ARDKLOdR14awQzsLERfZPG-UrQtMg9fO8YxGdJFngthtH6qXPSCckzRyIY2S-9WT55QbJa23MdACZ0lXgT3FVoPbLA30thJj5jkwgl5AZF_df1PqABoFBaG1eer1ewY6je_IfiKhGIvj565BZPvP-VP4Bp47ALTOiaVBDRzjnGykcPaaC9p4vGA&__tn__=k*F&tn-str=k*F

「思わず栄養が“ええよう”になる行動戦略: 社会疫学からの提案」日本栄養改善学会教育講演

9月5日、新潟で行われた日本栄養改善学会学術総会にて、教育講演「思わず栄養が“ええよう”になる行動戦略: 社会疫学からの提案」を行いました。

健康格差対策の進め方の基礎を概説し、行動科学を応用したその対応法について、事例を交えながら解説しました。

論文出版:スウェーデン、所得による自殺の格差が増加 全国民追跡データの分析

スウェーデンの全国民の追跡データを用いた分析の結果、1990年から2007年までの間に、低所得者ほど自殺が多いという格差が拡大傾向にあり、特に女性においてこの関連がみられることが明らかになりました。1994年に起きたスカンジナビア諸国の経済危機やその後の社会保障施策の見直し等、危機対応政策の関連を示唆する傾向がみられました。
スウェーデンは就労における性差が世界で最も少ない国の一つです。しかし、その多くは公的機関で働いています。私企業と比べ、公的機関では社会保障施策の見直し等による所得や労働条件の変更の影響が直接現れることが知られており、これが今回の研究結果に関係していた可能性があります。

本研究はスウェーデン・オレブロ大学の日吉 綾子氏、ストックホルム大学・健康の公平性研究センター所長のミッケ・ロスティラ氏との共同執筆論文です。英国の国際学術誌 Journal of Epidemiology and Community Healthに掲載されました

なお、所得による自殺率の格差は 格差勾配指数と格差相対指数 という指標を用いました。
参考文献: 近藤尚己. “地域診断のための健康格差指標の検討とその活用.” 医療と社会 24.1 (2014): 47-55.

書誌情報: Hiyoshi A, Kondo N, Rostila M Increasing income-based inequality in suicide mortality among working-age women and men, Sweden, 1990–2007:
is there a point of trend change? J Epidemiol Community Health Published Online First: 18 July 2018. doi: 10.1136/jech-2018-210696f

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論文出版:社会的なサポートがあると高齢者の受診控えが減る傾向に

65歳以上の高齢者、約2万人を対象とした研究で、社会的サポートと受診控えの関連について調べました。

その結果、病気になったときに世話をしてくれる人がいると、病院の受診控えが減る傾向にあることがわかりました。所得の低い人たちにおいては、特に65歳から69歳の女性と、70歳以上の男性においてこの傾向が顕著でした。

高齢者の受診控えを減らすためには、財政的なサポートだけでなく社会的なサポートも必要であることが示唆されました。

本研究は名古屋市立大学の樋口倫代氏らとの共同執筆論文です。国際学術誌 Asia Pacific Journal of Public Healthに掲載されました

分析には日本老年学的評価研究(JAGES)のデータを用いました。
プレスリリースはこちらです

書誌情報:
Michiyo Higuchi, Kayo Suzuki, Toyo Ashida, Naoki Kondo, and Katsunori
Kondo. “Social Support and Access to Health Care Among Older People in
Japan: Japan Gerontological Evaluation Study (JAGES).” Asia Pacific
Journal of Public Health (2018)
https://doi.org/10.1177/1010539518786516