所得格差は循環器疾患の死亡リスクを特に上げる可能性:論文出版

所得格差が拡大すると、自身の所得水準は変わらなくても、より高所得な人との所得の差が拡大します。それに応じて、みじめさやねたみ、あきらめといった負の感情を持つ機会も増えます。

高齢者3.3万人を長期間追跡している愛知老年学的評価研究(AGES、JAGES研究の一部)のデータを分析したところ、グループ内のうち、自分よりお金持ちの人と自分の所得との差の平均値が大きい(グループ内の相対的はく奪度)人ほど、自分の所得水準にかかわらず、その後循環器疾患(心臓病や脳卒中)で死亡するリスクが高まることがわかりました。

一方、がんや呼吸器疾患など、その他の原因による死亡とは統計的に有意な関連がみられませんでした。さらに、このような関係は男性でのみ観察されました。

以前より、所得格差が大きな社会では誰もが(富裕層ですら)不健康になる可能性が知られていますが、本研究結果は、その理由として、格差が大きな社会では周囲との生活水準の違いが強いストレスとなって、ストレスによって影響を受けやすい心臓や脳血管の病気による死亡のリスクを上げる、というメカニズムが関連している可能性を示唆するものです。

この結果は、英国の専門誌Journal of Epidemiology and Community Healthから出版されました:

Naoki Kondo, Masashige Saito, Hiroyuki Hikichi, Jun Aida, Toshiyuki Ojima, Katsunori Kondo, Ichiro Kawachi. Relative deprivation in income and mortality by leading causes AMONG older Japanese men and women: AGES cohort study. Journal of Epidemiology and Community Health. doi:10.1136/jech-2014-205103   Open Access.

論文はここから無料でダウンロードできます。
http://jech.bmj.com/content/early/2015/02/19/jech-2014-205103.full