日本でも健康格差が社会問題となっています。健康格差を減少させるためには、個人レベルから社会レベルの介入への転換が必要です。2021年より全国の福祉事務所で生活保護利用者への健康管理支援事業が必須事業となりました。上野恵子助教らは、生活保護利用者の中でも特に健康・生活上の支援を必要としている高齢者に焦点を当て、生活保護を利用する高齢者のサブグループの日常生活上のニーズを明らかにしました。
2021年に2自治体の福祉事務所のケースワーカー4人にインタビュー調査を実施しました。以前実施した量的研究で得られた生活保護を利用する高齢者の男女別の5つのサブグループの結果をケースワーカーに提示して、それぞれのサブグループが抱える日常生活上のニーズを聞き取りました。インタビューの結果、生活保護を利用する高齢者のサブグループには、次の5つの日常生活上のニーズがあることが明らかとなりました:①住居のニーズ、②金銭的ニーズ、③福祉サービス利用のニーズ、④医療ニーズ、⑤日常生活上のニーズなし。この結果から、生活保護を利用する高齢者のサブグループごとに適切な支援の介入が必要であることが分かりました。今後、他分野の専門職(保健師、社会福祉士など)にもインタビュー調査を行い、生活保護を利用する高齢者のサブグループの日常生活上のニーズをさらに理解することが望まれます。