近藤尚己が参考人として第3回グローバルヘルス戦略有識者タスクフォースにて報告した内容等を踏まえた「グローバルヘルス戦略」がまとまり、健康・医療推進本部よりリリースされました。参考人報告と関連する複数の記述が含まれています(下記)。
*コミュニティの機能強化について
「特にコミュニティを保健システムの重要な基盤と位置付け、コミュニティの社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)の豊かさが保たれるように配慮し、コミュニティの能力強化や、プライマリー・ヘルスケア(PHC)を推進し、ヘルスプロモーション 活動を実施していく視点が求められる。そのために、コミュニティや地方行政組織における政策人材の能力及び保健医療サービス提供能力の強化に注力するとともに、健康教育を通じて知識、価値観、スキルなどの能力を人々自身が身につけることが重要である。そのような取組には、供給側のみならず需要側の課題への介入といった視点が必要であり、健康教育を通じた適切な需要喚起や、行動変容を促すための社会環境の改善や規制の整備への取組なども必要である。」
「このように、市民社会がUHCの実現と公衆衛生危機への対応能力を強化するために担う役割は大きい。UHCの観点からは、保健医療サービス提供の担い手としての役割をもつだけでなく、途上国の保健システムの強靭化に欠かせない草の根レベルでの人材育成を含む社会的資本(ソーシャル・キャピタル)の増強や、個人やコミュニティの有する脆弱性の低減に市民社会が貢献することが可能である。これらは新たな時代の人間の安全保障の実現に寄与するものでもある。また、政府の実施する政策について裨益者の視点からレビューし、提言を行うことができる。公衆衛生危機の観点では、コミュニティが強靱であれば危機を素早く察知し、適切に対処ができること、またメディアとの連携によりリスクコミュニケーションを適切に行うこと、などの貢献が考えられる。市民社会とODAの連携によってこれらの貢献を拡充するには、それぞれのODA援助形態の特性に応じて、コミュニティレベルの保健インフラに加え、ソフト面での連携を強化することが必要である。」
*公平性の確保について
「その際、保健医療サービスへの公平なアクセスを保障するだけではなく、結果として得られる個々の健康状態における格差の是正に注目する。女性、若者や脆弱層(貧困層、子ども、高齢者、障がい者、少数民族、先住民、性的少数者、移民や難民など)の公正な保健医療サービスへのアクセスの実現には、保健システムの強化のみならず、社会福祉や年金などの社会保障制度、健康の社会的決定要因への介入、さらには、医療社会保障制度を超えた健康に関するあらゆるセクターが連携した取組が重要である。これらは、供給側のみならず保健医療サービスの需要側への課題に対応することにもつながる。 脆弱層に対しては一層の配慮を行うと同時に、公衆衛生危機に際しては、危機によって更なる健康格差を助長することのないように、これら脆弱層への保護と能力強化、そして連帯が発揮される環境を整備することが重要である。また、プライマリー・ヘルスケアの視点から、これら脆弱層が主体性をもって保健の課題に取り組むことを支援する必要がある。」
*公平なデジタルインフラ整備の重要性について
「また、デジタル技術へのアクセスの格差がUHCに与える影響にも留意しつつ、デジタルヘルス活用に関するリテラシー向上について、各国の主体的取組支援をWHO等と連携して取り組むとともに、途上国の現場への革新的技術の導入に取り組む国際的な NGO や現地の民間企業との連携も強化していくことが重要である。」
参考人報告では「日本の貢献が期待されるポストコロナのグローバルヘルステーマ:健康格差を見据えた科学的な地域づくり型UHC Healthy Ageingの推進を例に」と題して、健康の社会的決定要因、健康格差対策の重要性、世界で最も高齢化している日本が構築してきた地域包括ケアシステム等の高齢者保健施策モデルの普及、その科学的な推進法、インターネットインフラ整備の重要性、国内の保健医療の研究とグローバルヘルスの研究との連携や人材交流の推進の重要性等について報告しました。
令和3年10月13日に行われた近藤の参考人報告資料は下記からダウンロードできます。
第3回 グローバルヘルス戦略有識者タスクフォース