人のつながりと健康

家族・親戚・ご近所・職場・友人・学校の先生・・・ときどき「煩わしいな」と思うこともある「人間関係」。でも、これ無しには私たちヒトは生きることができません。人類は、助け合い、分かち合いながら進化してきた動物です。あなたを取り巻く人間のつながりのことを「社会的ネットワーク」と言います。社会的ネットワークが豊かな人(より多くの人と頻繁に交流する人)ほど、所得や性別、住んでいる地域に関わらず長生きすることが、大規模な追跡疫学調査によりわかっています。

なぜ人とのつながりが体によいのでしょうか?

理由その1つながりから「支援」が得られる

まず、人とつながっていることで、困ったときに支援を得ることができますネットワークを通じた具体的な助け合いを「社会サポート」と呼びます。社会サポートには、以下の様な者があり、いずれのサポートでも、適度なサポートを受けている人のほうがその後病気になりにくく、長生きしていることを証明した研究がたくさん報告されています。

1. 困ったときの手助け:手段的サポート
足を怪我して買い物に行けない、風邪ひどくなって病院に行きたい・・・こんなときは、代わりに買い物に行ってくれたり、病院に連れて行ってくれたりする人が必要ですね。反対にこのようなサポートが得られなければ、怪我がよくなるまでの間あり合わせのかん詰などで食事を済ませてしまったり、受診が遅れてかぜをこじらせてしまったりするかもしれません。

2. つらいとき、悲しいときの寄り添い:情緒サポート
親友とけんかしたり、災害に遭ってうちひしがれてしまったり・・・つらいときに、一人悩み続けるほど苦しいことはありません。寄り添ってくれたり、話を聞いてくれたり、励ましてくれる人が必要です。このように情緒・心の面でのサポートを「情緒サポート」といいます。

3. 役立つ情報のやりとり:情報サポート

からだの調子が悪かったり、健康のことで気になることがあるとき、知り合いに信頼できる、詳しい人がいてくれると助かりますね。有用な情報をくれるからです。健康維持づくりに役立つ情報をくれる人がいる人のほうが、健康な生活習慣を送りやすいでしょう。

理由その2つながりが豊かな地域や社会から得られる恩恵

顔の見えるような付き合いや活動がたくさんあるような地域には、助け合うためのルール(互酬性の規範)や人々同士の信頼関係が豊かに作られていることがあります。そのような地域に住んでいると、個々人の人間関係の豊かさとは無関係に、地域から様々な恩恵を受けることで健康な生活を送ることができます。

たとえば、そのような地域では、未成年が喫煙や飲酒をしようとするのはしっかり注意してくれる大人が多いかもしれません。また、皆で防犯活動を行うことで治安が保たれ、夜もあんぜんのにジョギングや散歩ができ、そのために運動習慣を維持できる人が増える化もしれません。決めごとがスムーズになることで、地域や社会の財源(税金など)を有効に使用することができます。地域の祭りを通じた世代間の交流が増えて、社会サポートを受けられる機会が増える化もしれません。

このような、社会の結束をはぐくむような仕組みや地域の資源のことを「ソーシャル・キャピタル」といいます。ソーシャル・キャピタルが高い地域に住んでいると、その環境から様々な恩恵が得られます。たとえば、あまり社交的でない人でも、治安の良さの恩恵を受けられることで、健康にメリットがあります。