研究員のAndrew Stickleyの論文がSSM Population Healthに掲載されました。
京都大学社会疫学分野(Andrew Stickley研究員、近藤尚己教授、金森万里子研究員、木野志保研究員、荒川裕貴博士課程学生)は、国立国際医療研究センター(井上洋介先生)およびロンドン大学衛生熱帯医学大学院(マーティン・マッキー教授)と共同研究を行い、犯罪に対する不安と孤独感の関連について検討を行いました。
分析の結果、犯罪不安のない人と比較して、犯罪不安の強い人は孤独感が強いことが示されました。またこの関連性には、性別と年齢による違いがあることも分かりました。
この研究により、犯罪に関連する要因と健康やウェルビーイングの間に密接な関係があることが支持され、公衆衛生と司法機関のより密接な連携の重要性が示唆されました。
Andrew Stickley, Naoki Kondo, Yosuke Inoue, Mariko Kanamori, Shiho Kino, Yuki Arakawa, Martin McKee. Worry about crime and loneliness in nine countries of the former Soviet Union.SSM Population Health.2023 Mar; 21: 101316.
https://doi.org/10.1016/j.ssmph.2022.101316
要旨
犯罪不安は精神的健康の悪化など、いくつかの有害な結果と結びついている。しかし、孤独は深刻な公衆衛生問題として認識されつつあるにもかかわらず、犯罪不安と孤独の関連性についての研究はほとんど行われていない。本研究では、旧ソ連邦9カ国(アルメニア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、グルジア、カザフスタン、キルギスタン、モルドバ、ロシア、ウクライナ)の18歳以上の回答者18,000人を対象に、2010/11年の移行期の健康調査(HITT)で得られたデータを用いて犯罪不安と孤独感の関連性を検討した。プールされたロジスティック回帰分析の結果、犯罪に対する心配がないと答えた人と比較して、心配が多い人は孤独である確率が有意に高かった(オッズ比[OR]:1.43、95%信頼区間[CI]:1.17-1.75)。性・年齢層別分析ではさらに、犯罪に対する心配が中程度(OR:1.37、95%CI:1.10-1.71)および高度(OR:1.70、95%CI:1.33-2.17)の女性で関連が観察され、男性にはみられず、また35~59歳(OR: 1.39, 95%CI: 1.02-1.91)と60歳以上(OR: 1.64, 95%CI: 1.12-2.40)では犯罪不安が強いと孤独につながることが明らかとなったが18~34歳では関係がみられなかった。旧ソ連諸国では、犯罪に対する不安の高さが孤独と関連している。犯罪不安を減らすことはこれらの国々において重要な公衆衛生上の利益をもたらすかもしれない。
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