当研究室の土生裕特定研究員と近藤尚己教授による研究「Culture as a Determinant of Health and Well-being: Expanding the Concept of Cultural Capital」が「F1000Research」より6月30日に出版されました。
本研究では、ピエール・ブルデューが提唱した「文化資本」の概念を、公衆衛生および疫学分野に応用する際に生じる理論的課題を明らかにし、それらに対応するための理論的枠組みを提示しました。
研究の方法として、理論適応アプローチを採用し、公衆衛生学、疫学、文化人類学などの知見をもとに、以下の5つの主要な課題を抽出しました:
1. 権力構造に注目するブルデュー理論と、健康促進を重視する公衆衛生との認識論的ギャップ
2. 介入を志向する文化資本概念の必要性
3. 集団レベルでの文化資本の評価の必要性
4. 社会空間を超えた文化資本概念の必要性(ヒューマニティや尊厳、実存的側面について)
5. 研究分野によって異なる「文化」の定義の不明確さと一貫性の欠如
また、文化やその他の資本が持つ両義性(例:特定集団のステレオタイプ化のリスク)についても考察しています。
それらの課題に対して、本研究では、健康の文化的決定要因としての文化資本や、文化的ウェルビーイング、文脈的妥当性などの概念を提示し、文化を定量的に評価する「文化疫学(Cultural Epidemiology)」の理論的基盤を構築することができました。
書籍情報:Habu H and Kondo N. Culture as a Determinant of Health and Well-being: Expanding the Concept of Cultural Capital [version 1; peer review: awaiting peer review]. F1000Research 2025, 14:638 (https://doi.org/10.12688/f1000research.166017.1)
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