NHKニュース「ふだん笑わない高齢者ほど「健康状態悪い」」

東京大学医学部生林さんと書いた論文がNHKで紹介されました。

笑わない人では健康感が悪い人が1.5倍以上多い

笑いが健康に良いことは、がん、うつ病、心臓病、糖尿病、骨粗鬆症などで報告されています。しかし、社会参加状況や社会経済状況によって笑いの頻度や質がどう違うのか、また死亡率とも関連する健康感との関連の研究はされてきませんでした。

今回、65歳以上の高齢者20,400人を対象に、社会参加状況や社会経済状況などの影響を考慮して、笑いの頻度・場面と自己評価した健康感との関係を分析しました。

その結果、社会参加が少なく、社会経済状況が悪い人ほど笑いの頻度や質が低く、その影響を考慮しても、笑う頻度が最も少ない群では、自己評価した健康感が低いグループに当てはまる割合が、ほぼ毎日笑う群に比べて女性で約1.78倍、男性で1.54倍高いことが分かりました。この結果は、社会参加状況や社会経済状況に関わらず、笑いが高齢者において全般的・精神的な健康を向上させるのに有用である可能性を示唆するものです。

全文は次のリンクへ:
https://www.dropbox.com/s/c1lq3jqz7ene735/060-15-05_%E7%AC%91%E3%82%8F%E3%81%AA%E3%81%84%E4%BA%BA%E3%81%A7%E3%81%AF%E5%81%A5%E5%BA%B7%E6%84%9F%E3%81%8C%E6%82%AA%E3%81%84%E4%BA%BA%E3%81%8C1.5%E5%80%8D%E4%BB%A5%E4%B8%8A%E5%A4%9A%E3%81%84.pdf?dl=0

インタビュー記事掲載「環境づくりで人々を健康にする」CoFFee Doctors

僭越ながら、医療者むけの情報サイトで、インタビューしていただきました。

http://coffeedoctors.jp/doctors/2510/

「健康づくり」を個人の責任のみに求める時代は終わりました。健康の啓発活動ばかりをやっていては、健康になれる人だけがどんどん健康になり、健康格差を広げる結果となります。これからの健康づくりをどうすべきか、といった内容です。

最近一緒に仕事をさせていただいている岩手県陸前高田市、熊本県御船町、東京都足立区などでの経験を交えつつ。

医療機関やプライマリケアの施設が中心となった公衆衛生活動への期待についても一言添えさせていただきました。

データを示して人々の「健康」を後押しする
人々のつながりづくりと環境づくりで健康格差を解消
公衆衛生と臨床現場の知恵とスキルを合わせる

よかったらご笑覧ください!ご批判など歓迎です。

アプリ:ヘルスナッジ 【好評です!】健康記事を専門家が解説(無料)

監修しているアプリ「ヘルスナッジ」が好評です。健康情報を専門家のコメント付きで読めるキュレーションサイトです。巷にあふれている有用な情報・怪しげな情報を、医療・医学分野のデータを「見る目」が確かな専門家がチョイスして、コメント付きで紹介します。

無料のメンバー登録すると、お気に入りの「専門家」をフォローしたり、「いいね!」できたり、コメントできたりします。

<ウェブサイト>「HEALTH NUDGE」 http://healthnudge.jp/

<アプリのダウンロード>
App Store  https://itunes.apple.com/jp/app/health-nudge-jian-kang-ji/id965600619?l=ja

Google Play  https://play.google.com/store/apps/details?id=vn.bsv.app.android.hlc

フェイスブックページもどうぞ:https://www.facebook.com/pages/%E5%81%A5%E5%BA%B7%E8%A8%98%E4%BA%8B%E3%82%92%E5%B0%82%E9%96%80%E5%AE%B6%E3%81%8C%E8%A7%A3%E8%AA%AC-HEALTH-NUDGE%E3%83%98%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%83%8A%E3%83%83%E3%82%B8/691021404357849

NHK NEWSWEBで報道:育児休暇が取れないと子どものワクチン接種がおろそかに

2014年9月5日金曜日のNHK NEWSWEBで、研究結果が報道されました。

日本では、生後2歳までに政府が接種を強く推奨し、無料で受けられるワクチンが14種類ありますが、すべてを完了できていない子どもがいます。

所属講座の主任である東京大学大学院橋本英樹教授を中心とするメンバーで実施した、東京近郊の子どものいる世帯を対象とした追跡研究のデータを用いて、ワクチンの接種状況、および摂取状況と関連する世帯の状況との関係を統計的に検証しました。

その結果、生後36か月までに終了できていないワクチンがある子どもが、BCGで1.3%、ポリオが5.8%、ジフテリア、百日ぜき、破傷風の混合ワクチンが22.9%。いることがわかりました。

また、両親の就業状況都の関連について検討したところ、専業主婦など母親が働いていない世帯の子どもにくらべて、産後育児休暇をとらずに働きはじめた母親の場合、ワクチン接種を予定通りで来ていない世帯が、世帯の経済状況やお母さんの学歴、子どもの出生順などとは無関係に、2.9倍も多いことがわかりました。父親の就労状況などとの関連はあまり見られませんでした。現状では、子育ての中心がお母さんにあることから、このような関係がみられたのだと思います。

番組では、今後子どもを持つ場合の条件として、働きながら子育てできる職場環境が必要と答えた人が62%もいるという少子化社会対策白書のデータが紹介されました。

番組では、私のコメントとして「育児休暇が取りにくい職場環境が影響している。仕事と家庭のバランスに苦しむ母親への支援や、環境整備が重要」との言葉が紹介されました。

一方で、番組中のツイートの中には「日本には母子家庭しかないわけじゃなかろうに、父親はなにやってんだよ? なんで母親だけの責任になってんの? @yuki_bateauivre」という興味深いものがありました。これは要な指摘だと思います。

今後、ワクチン接種や乳幼児健診などを含め、子育てに責任を持つ父親が増えれば、父親、母親にかかわらず、育児休暇を積極的にとりやすいような職場の雰囲気や環境整備、国の制度のアレンジなどが、子どもが適切な保健サービスを受けるためにも重要になってくると思われます。

関連する論文は、特任研究員の上田路子を筆頭とした学術論文としてPreventive Medicine誌に掲載されています。

http://www3.nhk.or.jp/news/newsweb/

関連するウェブ上の記事:http://e.jcc.jp/news/8713277/

論文が学術誌のジャーナリスト向けニュースレターに掲載されました:ワクチン接種の社会経済格差

先月、予防医学に関する国際学術誌「Preventive Medicine」に掲載された、日本の子どもにおけるワクチン接種の格差についての論文が、同雑誌が発行しているジャーナリスト向けニュースレターに掲載されました。

概要
—-
タイトル「母親の就労状況、社会経済状況、学歴と子どものワクチン接種の関係:日本の世帯調査データより」

出産後、多くの女性が職場復帰することに難しさを感じています。今回「予防医学」誌より報告された新しい研究では、1727名の子どもの親に対してインタビュー調査がされ、母親の産後の就労状況や育児休暇の取得状況と子どものワクチン接種の状況との関係が統計的に検証されました。その結果、生後36か月時点で就労している母親のほうが、子どもへのワクチンを制度によって推奨されているスケジュール通り接種できていないことがわかりました。

特に、育児休暇をとらずに就労しているお母さんは、育児休暇をとったあと就労しているお母さんの場合よりもさらにワクチン接種がされていないという結果でした。これらは、お母さんの年齢や学歴、両親からの支援、子どもの年齢や出生順などの影響を除いても確認された傾向でした。

さらに、母親の学歴(高校卒業未満)、年齢(若い) 、母親の母からの支援が少ない、なども、子どもがスケジュール通りワクチンを打てていないことと統計的に有意に関連していました。
—-

ニュースレターURL: http://kaizo.cmail1.com/t/ViewEmail/r/FED8C3015AF03F3F2540EF23F30FEDED
雑誌URL: http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0091743514001844