陸前高田市健康生活調査のまとめをしました。

3月13日金曜日に、陸前高田市役所で開催された「第52回陸前高田市保健医療福祉未来図会議」にて、調査の実施と分析のお手伝いをしていた陸前高田市健康生活調査の分析結果を報告しました。

被災後の居住地区別に、被災前後の病気の状況の変化を観察したところ、被害が特に大きかった高田町で、心疾患、高血圧症、糖尿病、精神疾患のすべてで、被災直後に比べ、1~2年後の有病率が有意に増加していました。興味深いことに、同じ程度の被災の程度であった気仙町では、このような疾病の増加は見られませんでした。地域の結束が強く、仮設住宅にも同じ集落同士で一緒に入居したといった気仙町の特徴が、被害による健康リスクを緩和しているのかもしれない、という意見が出ました。

また、買い物環境(小売店・移動販売の立ち寄り所・買い物バスの停留所)までの道路上の距離が長いほど、高齢者では閉じこもり(ほとんど外出しない状態)が増えることがわかりました。

仮設住宅の住民に対して、農園作業を通じて住民同士のつながりを増やし、健康維持を狙いとした「はまらっせん農園」の参加者とそうでない人とを比べたところ、参加者は参加していない人に比べて半年後の骨密度が相対的に上昇していること、また、生きがい感なども上昇していることがわかりました。

調査票や調査のデザインからかかわらせていただき、昨年秋~冬に実施した第4回健康生活調査では、自身で費用を負担して自宅を再建した人々と小規模な仮設住宅に住んでいる人々に聞き取り調査をしました。集まったデータを分析したところ、自力で再建した方々は小規模な仮設住宅に住んでいる方方よりも、総じて精神的・身体的な健康状態がよいことがわかりました。一方で、自力で自宅を再建した人々のほうが平均すると近所づきあいを多くしている一方で、自宅に閉じこもっている人たちも5%程度と、小規模な仮設住宅居住者よりも多く、自力で自宅を再建した方々の場合、地域との交流状況が二極化している可能性が示されました。

このように、仮設住宅などでの避難生活が長期化している東日本大震災では、避難生活をしている人も、再建して自宅で生活している人にも、社会的な交流やそのための(交通などの)移動手段の整備が重要であることがデータ上も示されました。

発表スライドはこちらからダウンロードできます:
(未来図会議ウェブサイト)http://healthpromotion.a.la9.jp/saigai/rikuzentakata.html

シンポジウム「災害下のソーシャル・キャピタルと健康 -復興に向けて」

2月15日に行われるシンポジウムに登壇します。
参加お申込み・詳細はこちら:http://www.jages.net/

研究者向けシンポジウムのお知らせ

”Social capital and Health in disaster-toward restoration”
災害下のソーシャル・キャピタルと健康ー復興に向けて

開催日時:2015年2月15日(日) 13:00~17:00
場所:東京国際フォーラム ホールD7(7階) アクセス  ※受付は6階です.ご注意ください.

挨 拶  近藤 克則 (千葉大学予防医学センター・教授)
講 演 災害下のソーシャル・キャピタルと健康 Ichiro Kawachi (ハーバード大学公衆衛生大学院・教授)
報 告
1.災害復興に向けたソーシャル・キャピタル醸成のための環境整備 近藤 尚己 (東京大学大学院医学系研究科・准教授)
2.東日本大震災後の健康とソーシャルキャピタル 相田 潤 (東北大学大学院歯学研究科・准教授)
3.東日本大震災被災地における地域の結びつきとPTSD  引地 博之 (千葉大学予防医学センター・特任助教)
4.災害とソーシャルキャピタル:実験経済学・行動経済学の見地から 澤田 康幸 (東京大学大学経済学研究科・教授)

17:30~ 懇親会  ※事前振込制,申込みフォームをご参照ください
参加のお申し込みはこちらからどうぞ。
http://www.jages.net/

東京大学法学政治学研究科の非常勤講師に委嘱されました。

担当している「社会と健康I」「社会と健康II]は公衆衛生の修士課程である公共健康医学専攻や健康科学看護学分野向けの講義でした。

健康づくりには、雇用や教育、地域づくりなど、多様な場面での対策が必要、ということを大きな首長としている講義です。

昨年1年講義を行い、保健関係の院生だけに講義するのはもったいないと思いました。内容の性格上、幅広く社会科学や応用学術分野全般に公開すべきと感じました。

そのようなわけで、このたび東京大学大学院公共政策大学院の課程履修科目に追加していただきました。

来年度は医師や看護師、保健師といった健康のプロだけでなく、政治や経済、社会学のキャリアをめざす大学院生たちを交えて活発な議論を行いたいと思います!

(参考)東京大学公共健康医学専攻(公衆衛生大学院) 25年度のシラバス: http://www.m.u-tokyo.ac.jp/sph/material/SPH2013.pdf

シミュレーション技術で社会と健康の関係を探る(会議参加しました)

米国ミシガン大学や国立衛生研究所(NIH)が主催して行われた研究会議に参加してきました。

社会と健康の関係は複雑です。これをコンピュータを使ったシミュレーションで理解しようとする動きが始まっています。医学が、コンピュータ科学や数学と手を組んで新たなイノベーションを生み出そうとしています。

http://conferences.thehillgroup.com/UMich/complexity-disparities-populationhealth/

増刷決定!「健康の社会的決定要因 疾患・状態別「健康格差」レビュー」

近藤克則先生を編者としてまとめられた健康の社会的決定要因 疾患・状態別「健康格差」レビュー(日本公衆衛生協会)の増刷が決定しました。一部執筆させていただきました。

健康の社会的決定要因 疾患・状態別「健康格差」レビュー

お買い求めはこちら
http://www.molcom.jp/item_detail/79554/

12月8日シンポジウムが開催されました。

健康社会研究センターシンポジウム「日本における健康格差と「健康の社会的決定要因」‐社会疫学研究の到達点と課題‐」で発表しました。演題は「JAGES HEARTによる見える化の到達点」 自治体で健康格差対策を進める際に必要なのが、地域診断と健康格差の「見える化」です。地域の中のどこのどのような人の健康状態が悪いのかをグラフや地図で見やすく示すツール「JAGES HEART]を用いた地域診断の概要と今後の展望について話しました。